大田由香梨が提案する「ライフスタイリスト」とは?
衣食住を“スタイリング”する新しい仕事の形
ファッションスタイリストでありながら、カフェ「ORGANICTABLE BY LAPAZ」のプロデュースを手がける大田由香梨は、衣食住のすべてをコーディネイトする女性クリエイター。カテゴリーにとらわれず活動の幅を広げ“ライフスタイリスト”というジャンルを自ら開拓。体と心に栄養を与える「FOOD」、居心地のいい空間「HOUSE」、そして自分らしさに彩りを添える「FASHION」。その3つを1つの「STYLE」でまとめあげる独自の感性を持っている。大田由香梨に聞いた、自分らしいワーキングスタイルの見つけ方。
長く継続して染み付いた文化こそが「スタイル」
──色んなスタイルがありますが“自分らしさ”の表現方法について思うことは?
「この10年くらいで、社会として大きく変わったことが情報の多さだと思うんです。本物の情報を得る方法が以前より少なくなってしまって、興味があるものだけを流し見してしまう。それはスタイリストやデザイナーたちも含めて、いま世界中で起きていること。そういう意味では『スタイル』が生まれにくい時代だとも思うんです。発信しやすい状況はあるから何か一つに火が付くと一気に広がるけど、消費されるサイクルも早い。『スタイル』って、長く継続していくことに対して染み着いている文化のようなものだと思うんですが、今はその時々にパッと生まれるものですら『スタイル』と言われて消費されてしまう現実がある。私自身はこの状況で、改めて時間を積み重ねて作り上げていくことを大事にしたい。『本物のスタイルとはなんだろう?』ということを考えながら、発信できたらいいなと思います」
──「ライフ」という言葉を聞いた時、思い浮かべるものはどんなことでしょうか。
「ライフ…生きること、かな? もっと言うとライフスタイルって、衣食住すべてが詰め込まれた『生き方』のことだと思っています。ライフ=生活と捉える人もいるけど、人生ですよね。自分が今生きていることに対して感謝すること。そうやって考えていくと着ているものだけじゃなくて食べるものが気になって、食材の『ルーツ』を知りたくなる。当たり前のことですが、食べ物って生き物なんですよね。カフェをはじめたときも『あぁ、私は生命に関わる仕事をし始めてしまったんだ』と思いましたが、食べるということは命の循環。そうするとレザーとかファーとかお洋服に使われる『命』についても思いが巡ってくるんですよね」
ひた走って来た人生を振り返るタイミング
──衣・食・住に対して、ご自身の中で切り替えていることはありますか?
「仕事ひとつひとつに対して頭を切り替えて考えるようにしていますが、自分自身の価値観はすべて共通しています。自分はゼロから有を生み出す人ではなく、あくまでスタイリストだと思っているので、何かにフォーカスして深く掘っている方々をリスペクトしたい。服をスタイリングすることも、食材を産地から集めて調理することも、空間に合うインテリアをアレンジすることも、それぞれが持つ魅力をより引き立つアウトプットにしたい。それを考えることが自分には適しているんだと思います」
──今年、挑戦することはありますか?
「まず今年中に刊行予定のセルフブックを作り上げることです。これまで振り返ることなく前に進んできた自分をまとめる作業はすごく葛藤もあり、自分にとってはまた大きなターニングポイントになるのかなと思っています。今って頑張りすぎない、肩肘張らない、力の抜けた感じのトレンドが続いていますが、その中にも強い一本の芯が必要で、それが生きる上での支えだと思うんです。頑張りすぎてる人に見られちゃう時もありますが、そういう生き方があってもいいんじゃないかなと信じています」
ORGANIC TABLE BY LAPAZ
03-6438-9684
www.lapaz-tokyo.com
Photo:Yuji Numba, @otayukari
Interview:Yukiko Shinmura