パン野ゆりのぶらりパン歩き 「パレスホテル東京」おいしいパンの秘密を潜入取材! | Numero TOKYO
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パン野ゆりのぶらりパン歩き 「パレスホテル東京」おいしいパンの秘密を潜入取材!

おいしいパンを求めて世界中どこまでも! パン愛にあふれたモデル山野ゆり改め“パン野ゆり”が、話題の新店から知る人ぞ知る逸品まで、津々浦々めくるめくパンの世界を独自の視点でお届け。パン野が「おいしすぎて丸の内に引っ越したい!」と夢中のパレスホテル東京のベーカリーに突撃!

こんにちは! パン野ゆりです。今回は、都内の有名ホテルの中でもパンがおいしいと評判! パレスホテル東京さんへ潜入取材です。 私も何度か朝食ブッフェで利用したことのあるパレスホテル東京。皇居外苑のお堀に隣接したレストランのテラスでは伸び伸びとした気持ちの良い空間が。そこで食べた朝食ブッフェ(特にパン♡)がものすごくおいしく、朝から贅沢な気分で仕事へ向かったことを覚えています。 そんなパレスホテル東京で30年以上!日々おいしいパンを作り続けているのが、ベーカリー&ペストリー課スーシェフ兼ベーカリーシェフの星敏幸シェフ。

星敏幸シェフ
星敏幸シェフ
1990年にパレスホテルに入社。ハード系ブレッドの本場パリにて基礎を学び、フランス・ヴィエンヌの名店「ラ・ピラミッド」にて研鑽を積まれ、パレスホテル東京のオープン時にベーカリー&ペストリー課スーシェフ兼ベーカリーシェフに就任。以来パレスホテルの伝統を大切にしながらも、意欲的な挑戦を続けていらっしゃいます。

今日はそんな星シェフに会えるということで、朝から緊張しているパン野。早速パレスホテル東京のパンのアジトへ潜入です‼︎

ベーカリーキッチンにて

パンの香りで充満している幸せ空間…パンが次々と焼き上がったり、形成されたり、発酵されていたり、生地になっていく瞬間だったり…!パンが産まれる場所。神聖な場所。

正真正銘パンに囲まれて幸せでいっぱいな気持ちの中、星シェフから直々にパンの説明をしていただきました。

少数精鋭のアジトでは、ペストリーショップの他に、朝食ブッフェ、各レストランで使用されるパンたちを焼き上げています。多い日には1日3000個〜4000個‼︎ 天文学的数字をシェフ10名でこなしているというので驚き。数より質…さすがです‼︎

カレーパン

早速カレーパンの成形を見せていただくことに。星シェフのこだわりの揚げずに焼くカレーパン♫たっぷりとカレーを味わってもらえるように、パン生地と中のカレーの包む分量は同等の45g。星シェフは一つ一つ計らなくても、手に持った重量感でカレーのグラムが分かるそう‼︎

会話をしながらもカレーパンをひょいひょいと作り上げる星シェフ。シェフの柔らかい物腰とユニークな会話ですっかり緊張が解れてしまいました。

「こんなに会話しながら、シェフ、本当に45gなんですか?!(笑) すごすぎます‼︎(笑)」

「もちろん‼︎ …計らないでね‼︎(笑)」

デニッシュ

初めて朝食ブッフェでいただいた時に感動したデニッシュだ‼ こんな風にデニッシュが誕生している裏側︎を見学させていただけるなんて、6年前のあの時は思っていなかったなぁ…と、1人でうれしくなってしまいました。

こちらは焼き上がってきたデニッシュたち。
フィリングによって生地の大きさや層の数、形を変化させているというこだわりぶり。
こちらはミニサイズのデニッシュだそうで、「さまざまな種類を召し上がって欲しいから」という星シェフの思いが込められています。

メロンパン

辺り一面、周囲はメロンのフルーティな香りで充満。はぁ、良き香り♡

パン生地は二層になっていて、メインの生地は直に果肉が目で捉えられるんです。なんでもこれ、メロンのリキュールに漬けたドライメロン! そしてその上に被せる生地には濃縮果汁が一緒に練り込まれていて、二段階メロン使用♡ とことんメロンを堪能できる仕上がりになっております。

メロンパンはパサつきがちですが、豆乳をプラスして生地をしっとりとさせているのもポイント。星シェフのアイディアが光ります♡

バゲット

ふと後方に目をやるとオーブンからも焼き上がりのおいしそうな香りが…‼︎

目の前でオーブンから生まれたてホヤホヤ、出来立てホヤホヤ、ホヤホヤなバゲットをホヤホヤな気持ちで食べさせていただきました♡
焼きたてのバゲットを食べられるなんて2020年、なんて幸運な年。

アチアチなバゲットは湯気が出てるんですが、その湯気までおいしいバゲットは初めて! 湯気から漂う香りは強く、小麦好きな私にとって史上最強においしゅう香り。

クラストのバキッとしたハードさ、クラムのしっとり柔らかいコントラストが温度と共にハッキリと伝わります。
リーンなパンなのに飽きない…これは永遠に食べ続けてしまいそう‼︎

チョココロネ

最後は根強い人気のチョココロネ。実際に生地をクルクルと巻く実演を見せていただいたのですが…この作業が簡単に見えて実は超絶難しいとのこと。新人のスタッフの子がトライするも「1日かけてもできない‼︎」と泣き崩れてしまう子もいたとか。

次々と生まれゆくパンたちを見届けながら、ずっとずっとアジトにいたい…と思い始めたところで、星シェフにゆっくりお話を伺うために別室へ移動。春の新作や試作品を含めた、たくさんのパンの試食を用意してくださいました。

感無量…‼︎

目の前に広がるパンの海原…後ろの高層ビルたちが霞むほどのパンの絶景‼︎

どれもこれもおいしそうで、あれこれと目移りしてしまう星シェフの作品たち。バゲットやカンパーニュなどハード系からヴィエノワズリー、ソフトな食パンまで幅広くラインナップされています。

なかでも一段と目を引いたのが可愛らしいお魚のデニッシュ! お魚のキョトンとした顔が愛しくて、思わず拍手してしまいました。

なんでもこれ、パリの風物詩Poisson d’avril(ポワソンダヴリル)フランス語で「4月の魚」と言う意味なのですが…日本のエイプリルフールは一般的に「嘘をついてもいい日」ですが、フランスではささいなイタズラが許される日だとか♫

そんなポワソンダヴリルの日は魚の形をしたパイやチョコレートを食べる習慣があるそうで、デニッシュでお魚を再現! フランスにいらっしゃった星シェフらしいアイディアですよね。

2種類あるうちの赤いお魚。ラズベリーの方を食べてみると星シェフのマジックが…‼︎

あれ…⁈ 甘酸っぱい‼︎
酸味のあるラズベリーの下には甘いストロベリーソースが敷いてあり、その下にはさらに甘いカスタードクリームというソースのレイヤード♡たっぷりなフィリングと相性が良いのがバリバリとハードなデニッシュ生地。

先ほどアジトで見学させてもらったように、デニッシュはフィリングによってパンの形を変える星シェフ。

「パンが目立たないのはダメ。目立ち過ぎてもダメ。パンが脇役ではなく、料理(フィリング)の最高なパートナーにならなくてはいけないし、とにかくパンがおいしいってならないとダメなんです」

このお魚デニッシュを食べていると星シェフの言葉をすぐに理解出来ます。そう、パンがおいしい。パンが主軸。
そしてそれは一つの作品(パン)のレベルが物凄く高いという事に繋がっているんです。

ハードなお魚デニッシュはこちらを贅沢な気分にさせてくれる…♡ まるでデザートのよう。

あんぱん

星シェフのあんぱん、なんと生地がブリオッシュ。柔らかい空気感を含んだパン生地の中には、あんこと道明寺というスペシャルな組み合わせ。軽めなブリオッシュの中に餡と餅・和オブ和な化学反応ったら‼︎

桜の塩漬けがアクセントになって、なんだか色気まで感じるあんぱん♡

フォカッチャ

個人的に大好きなフォカッチャは背が高めなフワフワ系。星シェフのこだわりは、ローズマリーではなくタイムを使用しているということ! なんでも、ローズマリーだと時折ハーブが強く香ってしまうことがあるからだとか。

実際に食べてみるとビンゴ! 強過ぎることがないけどしっかり存在して、なおかつパンの邪魔をしません。パンが主軸な星シェフならではの逸品。

カンパーニュ

スライスされた佇まいがなんとも美しいカンパーニュ。お持ち帰りさせていただいたほどおいしくて、プライベートでお友達のお家に遊びに行くときに必ず手土産に買って行きたい!と思った星シェフのカンパーニュ。

とにかくクラストの香ばしさがたまらない!! 焦げたお醤油のような、日本人がクセになる好きな香りです。クラムは水分量が多めなモイスチャーな食感。噛めば噛むほど味わいが深く、風味も豊か。

星シェフいわく、次の日はリベイクして食べるのもオススメだそう。カリッと焼き直しても絶対おいしいはず。

あぁ、毎日このパンが食べたい…
丸の内に引っ越したい…‼︎

コーンブレッド

パン屋さんで見かけるとつい買ってしまうコーンブレッド。大好きなパンなのにあまり売ってるところを見かけないのですが、こちら、星シェフのスペシャリテでもあるんです♡

トウモロコシがそのまんまパンに乗り移ってるような真っ黄色。好みの薄さにスライスして食べるのですが、私は2センチほどにスライスしてシャリシャリな独特の食感を堪能するのが大好き。ショートブレッドがサラサラと砂のような感覚なら、コーンブレッドはその砂粒が2倍くらいになっている感じ。

コーンの優しい甘みも手伝って最高なおやつです。

食パン

食パン専門店も増え、2020年も引き続き食パンの勢いは止まらなそう。もはや流行ではなくスタンダードになりつつある食パンなのですが…星シェフの食パンは唯一無二!

昨今の食パンの流行として、そのまま食べても充分な甘みを感じるものがほとんどなのですが、星シェフの食パンは柔らかくて甘いだけじゃなく、しっかりと小麦の味がするように作られています。

さらに、しっかりと噛みごたえがあり、味わいにも奥行きがあるんです。一口食べるだけで流行りの食パンと、その違いがわかるはず。

「次の日には水分が若干抜けるので塩気を感じるよ」と星シェフに言われていたのでこれはナイス!と思い、きんぴらごぼうを挟んで食べたら…おいしい〜‼︎ 和のお惣菜ともマッチ♡

プレーン、の他に私が伺った時には限定のトリュフ(1月まで)、今月からはバレンタインにちなんでチョコレートも!
フランス産のカカオパウダーにベルギー産のチョコチップ…文字にするだけで口の中がチョコレートを欲してくる(笑)。

今回はパン作りの現場にまでお邪魔させていただき、シェフたちの華麗なテクニックにも感動。厳選された素材の掛け合わせと確かな技術、星シェフの独創的なアイディアから生まれるキラキラとしたパンたち。パンが生まれる瞬間も間近で見られて最高に幸せでした♡

次の週末は久しぶりにパレスホテル東京の朝食ブッフェへ出かけよう。
皆様もぜひ♡ オススメです。

パレスホテル東京

ペストリーショップ
スイーツ&デリ

住所/東京都千代田区丸の内1-1-1 パレスホテル東京 B1
TEL/03-3211-5315
営業時間/10:00〜20:00
www.palacehoteltokyo.com/restaurants-bars/sweets_deli/

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Photos: Shuichi Yamakawa Text: Yuri Panno Edit: Yukiko Shinto

Profile

パン野ゆりYuri Panno パンコーディネーター/パンシェルジュ。日本全国、訪れたベーカリーは数えきれないほど。年に数回は海外へも足を運び、パンを独自の視点で分析。最近では、トークショーや「世田谷パン祭り」でワークショップを開催するなど、活躍の場を広げている。モデル山野ゆりとしては、雑誌や広告、CMなど幅広く活躍中。モデルという職業を活かし、太らないパンとの付き合い方も考案中。Instagram: @yuri.yamano

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