Culture / Yonethropology
「女子受けアイドル=小嶋陽菜」登場
そんな2005年。
「ねえ、今度秋元(康)さんがこんな企画やるんだけど、よねのらない?」って電話がかかってきた。電話の相手は、秋元康事務所のプロデューサーだ。
メジャーへのカウンターだったギャル文化がメジャーになってしまった今、そこに対抗する文化はなんだろうって考えていた矢先の誘いだった。
実は僕は秋元さんの初期事務所に席を置いていたメンバーだったりもした。
“あっちゃん”こと前田敦子
時代はアイドル冬の時代。
ヴィジュアルのディレクターになった僕に秋元さんの最初の注文は「女子受けお願いね」だった。ハーフモデルのカウンターという立ち位置であっても売れてないアイドルがいきなり女子受けを狙うことは難しい。ただ、売れてしまえばメジャーであることを好きな同性は多数存在する。売れるまでAKB48の中で誰を女子向けとして強調させるか?
その時の僕のメモには「女子受け=小嶋陽菜」って書いてある。
彼女たちをちょっとだけ前にして、その時代のギャル要素すなわちプライベート感を取り入れることで、女子に嫌われる部分を省くように努力した。
アイドルが女子に受けなくなった理由は、大人によって作られた存在としてしか見えなくなったことが大きいのは明らかだった。それは写真を撮りあってアルバムを持ち歩き、プライベートを見せ合う時代に逆行した。
“たかみな”こと高橋みなみ
その流れを変えるべく僕は、当時メジャーな女子高生の間で大人気だったチェキをAKB48の中にとり入れ、本人たちに写真を撮り合ってもらい、撮影会にもこれまでアイドルの撮影会で主流だったポラロイドではなく、チェキを使った。
Vol.02で終わってしまったが、劇場でしか手に入れることのできなかっ『WELCOME BOOK』というパンフレットのVol.01に、チェキの写真を載せてみた。
「いきなりトイレに連れて行かれてびっくりした」って、一期生には必ず言われる。欲しかったのはその時のトイレのタイル感とファッション感だったけど、いきなりデビュー公演のレッスン中に、「アメリカン アパレル(American Apparel)」のランニング着せられて撮影はかなり印象的だったらしい。
(ちなみに2004年僕は日本に進出したばかりの「アメリカン アパレル」の最初のビジュアルブックを作っている。アメアパの社長が僕のファンだったのだ)
こじはるが劇場にたった2005年という時代の意味
世界中で活躍するクリエイター米原康正の連載「ポップな東京文化人類学」。今回は4月20日にAKB48を卒業した小嶋陽菜をフィーチャー。「こじまつり」に駆けつけた卒業生たちと“こじはる”の記念2ショットとともに、米原康正が読み解く、AKB48という存在。
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IMG_2128のコピー
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Photos & Text:Yasumasa Yonehara
Edit:Masumi Sasaki
Profile
米原康正(Yasumasa Yonehara)編集者、クリエイティブディレクター、フォトグラファー、DJ。世界で唯一チェキをメイン機材とするアーティストとして、雑誌、CD ジャケット、ファッションカタログ等で幅広く活躍。中華圏での人気が高く、中国版 Twitter である「新浪微博(weibo)」でも膨大な数のフォロワーを有し、シューティングと DJ をセットにしたイベントでアジアを賑わせている。世界のストリート・シーンで注目される、ジャパニーズ・カルチャーを作品だけでなく自身の言葉で語れる日本人アーティストの一人。