usagi bon ごはん recipe.54 春菊と油揚げの含ませ
アーティスト河原シンスケがプロデュースする「usagi」監修の、レストラン「Univers S.」シェフ今平慎太郎の料理をわが家に。旬の食材や一皿にまつわるエッセイとともに送る、五感で楽しむビューティフードの秘伝レシピ連載。第54回は、春菊と油揚げの含ませ。
春菊と油揚げの含ませ
春菊をセリやネギに変えたり、マスタードを練り味噌にしても美味しく頂けます。 【材料】 2人分 春菊 1束 油揚げ 2枚 精進出汁400ml ※作り方はこちら 日本酒 60ml きび砂糖 大さじ1 醤油 大さじ2 精製していない塩 小さじ1 粒マスタード 適量 【作り方】 1. 春菊は熱湯でさっと茹で冷水にとる。かたく絞って水気を切り、食べやすい大きさに切る。 2. 油揚げは半分に切る。1の湯で3分くらい煮て良く水洗いして絞る。 3. 精進出汁に日本酒、きび砂糖、醤油を入れ、2の油揚げを入れてよく味を含ませる。 4. 油揚げに味がなじんだら、1の春菊を入れ温める程度に煮て、マスタードを添える。農耕民族の葛藤
日本は古来よりの農耕をして暮らしてきた民族だ。ただ平安時代まで遡るとその野菜の種類は至って少なく、大根、ごぼう、蕪、蓮根などの根菜が主で、葉物ではネギやニラくらいだったと聞いたことがある。それ以外は、ハコベやタンポポなどの野草。いわゆる「青物」として色んな葉物野菜(春菊や、白菜など)が食べ始められたのは、江戸以降らしい。
そもそも豆腐はなくてはならない大好物。油揚げも同様で、パリの自宅の冷蔵庫や冷凍庫にも常備している。油揚げと言えば狐。狐と言えば油揚げくらい。でも、いくら好物だとしても狐が自分で豆腐を薄く切って油で揚げてわざわざ食べるわけはない。狐は元来肉食に近い雑食なのだ。
農耕民族の日本人が一生懸命作る作物を荒らす困りものがネズミ達だった。(今年の干支ですが。笑) そのネズミを好物とする狐は、次第に人々から崇められるようになり、農業神をお祀りする稲荷神社の白狐が神の使いとして祀られるようになった。ある地方では、本当にネズミを揚げて仕掛けていた時代があったらしく。(干支なのにすみません。)
それが、仏教伝来以降、殺生は良くないという考えからネズミの代わりに油揚げを供えるようになったとのこと。良かったね、ネズミさん! 538年以降は揚げられてないみたいですよ。
Art Work & Text:Shinsuke Kawahara Photo & Food Direction:Shintaro Imahira Edit:Chiho Inoue