usagi bon ごはん vol.108 筍の炒り煮 | Numero TOKYO
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usagi bon ごはん vol.108 筍の炒り煮

アーティスト河原シンスケがプロデュースする「usagi」監修の、レストラン「Univers S.」シェフ今平慎太郎の料理をわが家に。旬の食材や一皿にまつわるエッセイとともに送る、五感で楽しむビューティフードの秘伝レシピ連載。第108回は、筍の炒り煮。

筍の炒り煮

行者ニンニクを削りぶしに変えたり、たっぷり木の芽をのせたり、お好みにアレンジして楽しんでください。

【材料】 4人分
筍 1本
精進出汁200ml ※レシピはこちらを参照。
醤油 30ml
行者ニンニク または、ニラ 適量
白ゴマ 少々
オリーブオイル 少々
お米のとぎ汁 適量
鷹の爪 2本

【作り方】
1. 行者ニンニクは3cmに切り、筍は下部の皮を少しむき、皮付きのまま縦に包丁の切れ目を深く入れる。
2. 鍋に1を入れ、かぶるくらいのお米のとぎ汁と鷹の爪を入れ30分ほど茹で、竹串がスッと入るくらいの柔らかさになったら、茹で汁につけたまま冷やす。
3. 筍の皮をむき、下のかたい部分は小さめに、先の方は大きめにカットする。
4. 鍋に3を入れ、精進出汁と醤油を入れ、中火で煮始め、鍋を回しながら煮汁が半分くらいになったら、行者ニンニクをいれ、無くなるまで炒り煮にする。
5. お皿に4を盛り、行者ニンニクを添え、オリーブオイルをかけ、白ゴマをふる。

春の決戦

春になると、冬の間眠っていた新しい野菜が街に出回り、我々を喜ばせてくれる。そんな新しい春の味にはどこかほろ苦さが漂っていて、それも魅力の一つだと思う。

料理屋で出て来る焼き筍も若竹煮も最高に幸福な気持ちにさせられる品々。ところが、通りかかった八百屋の軒先の魅力的な姿の皮付き筍は、買ってみたい衝動と同時にその外側の皮がまるで鎧姿の決戦を挑んでいる戦士の様に威嚇的だ。

先ずは灰汁を抜かねばならないのだが、外の皮をどこまで剥いたら良いのかさえわからない。皮を剥きすぎると折角の旨味や香りまでも逃してしまうし、皮付きのままじっくり茹でた方が灰汁が抜けやすいらしい。そして中身の柔らかい部分を想像しつつ切り目を入れ、米のとぎ汁や米糠そして赤唐辛子も加えるとか謎だらけのこの戦いは中々困難なのだが、戦い慣れているおばあちゃん達に言わせれば「こんなの何が難しいのよ!」って勇ましい。

灰汁をしっかり抜くには、やっぱり最初強火でも沸騰したら泡の様な灰汁を綺麗に取りながら、後は弱火にしてゆっくり30分。そしてその茹で汁ごと冷ますのもじっくり半日。戦いは長期戦だ。穂先を持って皮を全部引き抜いて出てきた身が美味しい部分。これで炒り煮の下準備が新人戦士にも出来た事になるのだ。

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Art Work & Text:Shinsuke Kawahara Photo & Food Direction:Shintaro Imahira Edit:Chiho Inoue

Profile

河原シンスケShinsuke Kawahara 80年代初頭よりパリを拠点に活動するアーティスト/クリエイティブディレクター。エルメス、ルイ・ヴィトンやバカラをはじめ、数々のブランドや雑誌とのコラボレーションでも知られている。(Photo: Keiichi Nitta)
今平慎太郎Shintaro Imahira 1974年、北海道出身。旭川、札幌のホテルで修行を積み、2014年札幌国際芸術祭のガラディナーで河原シンスケと初コラボレーション。17年の「usagi tokyo」立ち上げのため、上京しシェフに就任。19年2月札幌にレストラン「Univers S.(ユニヴェール エス)」をオープン。 Instagram/@univers.s.2019(Photo: Ayako Masunaga)

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