Chim↑Pomエリイ伊勢志摩へ行く志摩観光ホテルと海女小屋体験 | Numero TOKYO
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Chim↑Pomエリイ伊勢志摩へ行く
志摩観光ホテルと海女小屋体験

現代アーティスト集団「チンポム(Chim↑Pom)」の一員として、展覧会やアートイベントで世界中を飛び回るエリイ。プライベートでもかなりの旅好きというエリイが伊勢志摩の観光の王道名所からマニアックな施設まで訪問。

エリイの伊勢志摩への旅の目的は、伊勢神宮や神道ゆかりの地巡りと、G7伊勢志摩サミットで各国の首脳をもてなしたホテルとして名高い、志摩観光ホテルを訪問すること。前後編で送る、前編は、最初の目的地・志摩からスタート。 東京を出発し、新幹線、近鉄電車を乗り継ぎ、約4時間で終点、賢島に到着。駅の目と鼻の先にある、ここ「志摩観光ホテル」は、志摩半島の突き当たり、賢島に、1951年に開業したリゾートホテル。英虞湾を望む高台からの風光明媚な景観に、昭和天皇をはじめ多くの人々が魅せられてきた。昭和の巨匠・村野藤吾が設計した、クラシック建築好きにはたまらない趣の「ザ クラシック」と「ザ クラブ」。そして、全室スイートというラグジュアリーな「ザ ベイスイート」の、3棟が広大な敷地に佇んでいる。 「母から祖父に連れていってもらったと聞かされていてどんな場所なのか興味がありました。新幹線で一本みたいなサクッと行けるわけではない、わざわざそこに行くありがたみがあるというか、だからこそ、ゆっくり楽しみたい、喧騒から離れて静かに過ごせる場所だと思う。サミットで海外の要人をもてなすなんてよっぽど優れた魅力のある場所に違いない」と、訪れる前から、期待もテンション高めなエリイ。

村野藤吾による昭和の名建築を堪能

ホテルにチェックイン後、さっそく館内を探索。まず、昭和を代表する建築家・村野藤吾がデザインした空間や調度品が当時のままのロイヤルスイートを今回特別に見学させてもらった。ここは、サミットの際に、アメリカ大統領が宿泊されたとか。


「家具やドアフレーム天井など、角が少し丸くなっていて、クラシックな色合いが落ち着いた雰囲気で素敵。洋風の部屋なのにしっかり和が効いている。こんな細部まで行き届いた作業は日本人にしかできない。日本のならではのわびさびの美意識だと思う」(エリイ)

全体的にこじんまりとしているものの、家具、照明など至るところに村野藤吾の意匠が感じられる。

さらに、開業当時の面影を残すロッジ風な建物「ザ クラブ」内の、村野藤吾の美意識が詰まった空間、カフェ&ワインバー「リアン」へ。ロイヤルスイートは普段見られないけれど、ここなら気軽に名建築の雰囲気や世界観を体感できる。窓際やテラス席で、庭を眺めながらのティータイムも気持ちよさそう。

カフェ&ワインバー「リアン」
(「ザ クラブ」2階)
営業時間/カフェ10:30〜17:30、バー17:30〜23:00(L.O.22:30)

また、館内には、志摩観光ホテルの長い歴史を物語るギャラリースペースが。「伊勢志摩サミットギャラリー」では、提供された食事のメニューや実際に使われた、蒔絵、漆など日本の伝統工芸による記念品などを紹介。


また、ワーキング・ランチで使われた「サミットテーブル」も展示されているので、ひとりG7なりきり記念撮影もできる。


作家・山崎豊子氏が使用した机を前に、とりあえず引き出しを物色するエリイ。

志摩観光ホテルを愛した著名人リピーターのひとり、作家・山崎豊子氏が実際に使用していたという机も展示。まさにこの机で執筆するポートレートもディスプレー。ちなみに、彼女の代表作のひとつ『華麗なる一族』の冒頭では、英虞湾の夕景が描写され、同ドラマ(1974年放映)のロケ地としても登場している。

実は、ただいまお茶を習っているというエリイは茶室にも興味津々。開業当時の設えを残す茶室「愚庵」は、「東の魯山人、西の半泥子」と称される、陶芸家であり、実業家、政治家の川喜田半泥子によって命名されたそう。

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全室スイートルームというラグジュアリーな「ザ ベイスイート」へ。屋上庭園は、伊勢志摩サミットの各国首脳たちの集合写真も撮影した、英虞湾バックに絶好のフォトスポット。

ザ クラシックからの夕景
ザ クラシックからの夕景

写真は「ザ クラシック」からの眺めだが、「日本の夕陽百選」にも認定された、こんな絶景の夕陽が見える。

志摩はパールの産地として有名なだけあって、施設内にさりげなくパールのオブジェなどがあしらわれてたりする。「ザ ベイスイート」のエントランスの天井には、パールをふんだんにつかったオブジェが。また、エレベーター内の手すりに、ぎっしり詰まっているのも、すべてパールだというからすごい。

宿泊客なら誰でも利用できるゲストラウンジでは、お菓子やドリンクが用意され、好きに飲んだり食べたりできる。夕方以降はアルコールも。また、「ザ クラシック」のゲストラウンジには、子ども向けの絵本から小説、アートブックまで多数の書籍を取り揃える「リーディングルーム」や、音楽を楽しむためだけの贅沢な「リスニングルーム」も設けられている。

エリイが好きな現代美術家、山口晃さんの作品集を発見。「ぜひChim↑Pomの本も置いてほしい!」と。

エリイ泊った部屋は、「ザ クラシック」のモダンな北欧風ウッディトーンを基調にした、プレミアムスイート。リビングとベッドルームの2部屋に、ゆったり広めのバスルーム。

「すごく広くて、家のような感じでゆったり寛げました。なんといっても窓からの素晴らしい眺め!お風呂からも英虞湾が見渡せて、明け方バスタブに浸かりながら、朝焼けを見られたのは最高。それにふかふかの布団とベッドがすごく快適でぐっすり眠れました」(エリイ)


<左>パールの産地だけあって、「ミキモト コスメティクス」のシャンプー&コンディショナー、ボディソープ、スキンケア一式にさらにフェイスマスクまでセットになったアメニティが備えられている。エリイもかなり気に入った様子。 <右>部屋には、パールネックレスにフォーカスしたアートブックも。

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プロフェッショナルな働く女性たちに共感!

2018年3月からスタートしたホテルアクティビティ「ラウンジクルーズ志摩」では、大小60もの小さな島々が浮かぶ英虞湾を周遊。今回はデイクルーズを体験。クルーザーに乗って現れたのは、なんと女性の船長さん。

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「水上から見る英虞湾は、小さな漁港や、島が点在する様子が、まるで漫画の中で見たような風景が広がっていて、不思議な感じ」

ホテルの下の桟橋からスタートし、賢島周辺を回遊する、たっぷり1時間クルーズを満喫。デイクルーズのほか、16時〜18時には、沈んでいく夕日を眺めながらのサンセットクルーズ、オプションで特別な日のためにパーティプランなども用意されている。

ラウンジクルーズ志摩
運行時間/デイクルーズ9:00〜16:00
定員/最大12名
料金/1艘1時間¥21,600(税込)

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志摩観光ホテルの秘伝レシピを、モダンにアレンジしたという「伊勢海老クリームスープ」実食中。

そして、クルーズの後は、「ザ ベイスイート」内のフレンチレストラン「ラ・メール」にてお待ちかねのディナー。総料理長の女性シェフ、樋口宏江さん自ら腕を振るう。2016年のG7伊勢志摩サミットでは、ワーキング・ディナーも担当。素材にもこだわり、生産者、漁師を料理長自ら探し歩くという。そんな選りすぐりの伊勢海老やアワビなど地元の食材を活かした「海の幸フランス料理」は、女性らしい新たな感性で、繊細な優しい味付けに仕上げたお料理はフルコースでも全然重たくなく、しっかり完食できるほど。



エリイがいただいたのは、「伊勢茶の香りをまとわせた松坂牛フィレ肉 鰹のコンソメとともに」「鮑ステーキ焦がしバター風味の軽いソース」「伊勢海老ソテー人参とセミノールのソース」(写真は調理例)

「伊勢海老のソテーは、1ミリもパサパサせず、しっとりプリッと、柔らかくて新鮮さを感じました。メインのお肉も、量が多くて食べられないと思っていたのに、お出汁のようなスープをかけるお茶漬け風だったので、ぺろっと食べられました。個人的には、パンに付けた、あおさのりを練り込んだオリジナルのバターも美味しくて、販売してたら、お土産に何個も買って帰りたいと思うほど。ぜひ商品化してほしい。さすが女性シェフならではのきめ細かい味付けで、感動。まだまだ男ばかりのタテ社会の料理業界において、G7のシェフに抜擢されただけあります」(エリイ)

総料理長樋口 (1)
総料理長樋口 (1)

志摩観光ホテルの総料理長を務める、凄腕シェフの樋口宏江さん。

フレンチレストラン「ラ・メール」
(ザ ベイスイート5階)
時間/ディナー 17:30〜22:30(L.O.20:30)
メニュー/総料理長 樋口宏江のおまかせコース シュルプリーズ ¥29,800

夕食後、ゲストラウンジでゆっくりしてから、水がテーマの「オー・スパ・バイ クラランス(eau SPA by CLARINS)」のスパトリートメントを体験。スパやマッサージが大好きで、東京でも暇さえあれば行くというエリイ。今回は、宿泊者限定のミニボディ&フェイシェル75分(¥27,000)。カウンセリングの後、パールパウダー入りの紀州の梅酢をまず一杯。伊勢に伝わる火打ち石で邪気を払い、日本の名水百選にも選出されている、志摩の天の岩戸の水(スタッフがわざわざ汲みに行ってるのだとか)で手を清めるなどご当地ならではの儀式⁉からスタート。クラランスのセラピストが誇る、オールハンドによるトリートメントのあまりの心地よさについ爆睡。詳細な記憶はないけれど、アロマの香りと、絶妙な力加減の施術が気持ちよすぎたことは確か。

オー・スパ・バイ クラランス
(ザ ベイスイート2F)
営業時間/14:30〜21:30(L.O.)※要予約
メニュー/ボディトリートメント(60分〜)¥20,000〜
フェイシャルトリートメント(75分〜)¥27,000〜
宿泊者限定ミニボディ&フェイシェル(75分)¥27,000

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エリイお墨付き!行くべき志摩の観光名所

翌日は、あいにくの曇り空。まず向かった先は、ホテルから車で15分、スパでも手を清めるのに使った名水の湧く「天の岩戸」へ。その名の通り、天照大身御神が隠れ住まわれたという伝説に由来する場所。恵利原の水穴からは絶えず名水が湧き、日本の名水百選にも認定されている。天然の水は、遠方からもわざわざ汲みにくる人がいるほど、とろみのある美味しい水。そして、禊(水行)の場でもある。

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天の岩戸
住所/三重県志摩市磯部町恵利原

続いて、エリイがホテル訪問と同じくらい志摩で楽しみにしていたのが、海女小屋体験。「さとうみ庵」では、実際の海女小屋を再現したようなノスタルジックな空間で、現役の海女さんとおしゃべりしながら、伊勢志摩の海で獲れた新鮮な魚介類を堪能できる。しかも、海女さんが目の前の炭火で焼いてもてなしてくれ至れりつくせり。しかも「鳥羽・志摩の海女漁の技術」は、国の重要無形民俗文化財に指定されているほど。


海中に縄張りはあるのか、などなど海女さんを質問攻めにするエリイ。

「海女小屋の雰囲気は、つげ義春の漫画の世界が広がっているよう。普段生活していたら人生できっと会う機会のない、本当の海女さんに会えるだけでも感激なのに、親切に貝や魚を焼いていただき申し訳ないぐらい。こうやって、現役の海女さんと直にお話しできて、どんどん高齢化が進み後継者が減ってきている海女という文化を広げることにも貢献している、この場所は素晴らしい。家族も友人も全員に体験させたいぐらいおすすめ」と大絶賛、大満足。海女さんから海女漁についてさまざまなエピソードや体験談を聞ける貴重な機会となった。


会話上手でチャーミングな三輪子さんは、50歳から真珠加工業から海女さんに転身したのだとか。なので、まだまだ駆け出しの下っ端と終始控えめ。

海女小屋体験施設 さとうみ庵
住所/三重県志摩市越賀2279 ※ホテルから車で約40分
TEL/0599-85-1212
時間/11:00〜14:00、18:00〜20:00
料金/メニューにより異なる
※予約制(ホテルフロント受付の場合、前日17:00まで)

近鉄名古屋〜賢島間を1日往復1本運行する「観光特急しまかぜ」。レアな車両にもかかわらず、ラッキーにも遭遇。カフェ車両のインテリアがレトロ喫茶店風で可愛く、つい長居。コーヒーもお代わりして、結局、終点まで入り浸りました。

大満足の志摩を後に、お次の目的地、伊勢へ行ってきます。伊勢の旅は近日公開!

志摩観光ホテル
住所/三重県志摩市阿児町神明731
TEL/0599-43-1211
URL/www.miyakohotels.ne.jp/shima/

Chim↑Pomエリイのお伊勢参りの旅はこちら

Photos:Ellie, Masumi Sasaki Edit&Text:Masumi Sasaki

Profile

エリイ(Ellie)アーティスト集団「Chim↑Pom(チンポム)」の紅一点メンバー。パフォーマンスや映像など話題を生む作品を発表し続け国内外から注目の的。『Chim↑Pomチンポム作品集』、『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』、『芸術実行犯』など著書も多数。

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