佐久間由衣インタビュー「初めての舞台。今は私が成長するとき」 | Numero TOKYO
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佐久間由衣インタビュー「初めての舞台。今は私が成長するとき」

旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.69は佐久間由衣にインタビュー。

年明けに放送されるドラマ『教場 II』や、2021年に公開の予定『君は永遠にそいつらより若い』に主演するなど、ますます注目を集める若手女優・佐久間由衣。透明感のあるフレッシュな存在感に加えて、女優としての実力をつけてきた彼女が、柄本明演出・出演の『てにあまる』で舞台デビュー。新しいフィールドに飛び込む気持ちを、舞台の開幕直前に尋ねた。

これまで見逃してきたことに、はっとすることがあった。

──今回、初舞台ですが、もともと舞台には興味があったんでしょうか。

「そうですね。よく劇場にも足を運んでいたのですが、いざ自分が挑戦するとなると、戸惑うこともたくさんありました。改めて、とんでもないところに来てしまったという感覚です。でも、日々学ぶことが多くて、ちゃんと吸収できるような状態にしておこうと心がけています。まずはひとつずつ積み重ねていかないと」

──今回は、演出も手がける柄本明さんと藤原竜也さん、高杉真宙さんとの4人劇です。共演者の方々の印象は?

「みなさん、私が戦いを挑めるような相手ではないので、胸を借りるというか、引っ張っていただいています。柄本さんは、大黒柱のように大きな優しさがあって。もちろん、切れ味の鋭い言葉をいただくこともありますが、それは私が今まで見逃していたことで、はっとすることもたくさんありました」

舞台「てにあまる」より、佐久間由衣(左)と藤原竜也(右)。 写真:宮川舞子
舞台「てにあまる」より、佐久間由衣(左)と藤原竜也(右)。 写真:宮川舞子

──主演の藤原竜也さんが演じる“男”は、佐久間さんが演じる“妻”と別居中という設定ですね。

「ずっとテレビを通して見ていた藤原さんなので、その妻役ができることが純粋に嬉しくて(笑)。少年のような一面もある方ですが、やっぱり舞台の経験をずっと重ねられているので、何かと頼ってしまう大先輩です。稽古の段階でも、すごく輝いてらして、一緒に稽古をしていると、その輝きで、こちらも引き上げられるよう。私も藤原さんのお芝居の魔法にかかってしまいました」

──“男”の部下の役である高杉真宙さんの印象は?

「ほぼ同世代ですが、高杉さんの方がキャリアも長くて舞台の経験が豊富なんです。普段はゲームとかマンガの話で面白いんですけど、お芝居となるとガラッと変わって、とても素敵です。高杉さんにも引っ張っていただいていますね。本当に、皆さんの胸をお借りしている状態です」

──今回は“男”の別居中の妻という複雑な役柄ですが、25歳になって求められる演技にも変化がありましたか。

「普段はあまり年齢を意識せずに過ごしていますが、仕事の面では、挑戦が必要な役が増えてきました。ボールだったらまっすぐしか投げられなくて、私の中にそれ以外の引き出しが少ないので、今はそれを勉強するときなんだと思います。実生活では結婚も出産の経験もないのですが、その分、想像力で補って楽しんで演じたいなと思っています」

舞台「てにあまる」より、(左から)佐久間由衣、高杉真宙、柄本明。 写真:宮川舞子
舞台「てにあまる」より、(左から)佐久間由衣、高杉真宙、柄本明。 写真:宮川舞子

──引き出しを増やすために心がけていることは?

「作品の答えは台本の中にしかないから、ひとつひとつ丁寧に向き合っていくことが重要と思っています。あとは、普段決まった人としか会わないので、幅広くいろんな方にお話を伺ってみたいですね。例えば今回、柄本さんや藤原さん、高杉さんなど、共演者の方にお芝居のことや、仕事以外はどう過ごされているのか、お話をたくさん聞いて、芝居への姿勢も含めて色々と学んでいければと思っています」

──舞台への意気込みについて教えてください。

「今はひたすら、最後まで全員が健康で走り抜けたら抜けられたらと願っています。みんなで力を合わせてひとつの舞台を作っていますが、この仕事は、見てくださる方に届いてから始まるものだと思うので、本当に体調に気をつけて千秋楽を迎えられたらと思っています」

舞台「てにあまる」より。 写真:宮川舞子
舞台「てにあまる」より。 写真:宮川舞子

コロナ自粛であらためて気がついたエンターテイメントの力

──プライベートについても伺います。2020年といえば、コロナ自粛がありました。その時間はどう過ごしていましたか?

「ちょっと太ってみようと思って、夜中にピザを食べたり、お風呂の中でアイスクリームを食べたりして、5kg増やしてみました。そのうち、その状態にも飽きてきたので、増えた分、体を絞って元に戻して。いつもなら先々の仕事を考えるとできないので、いい機会でした」

──どうやって体重を落としたんですか?

「ランニングして食事に気をつけました。私は、運動で減量しやすいタイプなのかもしれませんね。コロナの自粛期間は、たっぷり時間があったので、映画やドラマをたっぷり見ました。この期間、外出しないで家にいる時間を支えてくれたのは、ドラマや映画で、それはただの娯楽かもしれないけれど、必要なものだと思ったし、エンターテインメントっていいなと感じました」

──例えば、どんな作品をご覧になりましたか?

「まずは韓国ドラマですよね。『愛の不時着』から始まり、いろいろ観ました。特に『サム、マイウェイ〜恋の一発逆転〜』はキュンキュンしました。他にも古い韓国映画を観たり、ジブリ映画を全部もう一度観たり。ジブリでは『風の谷のナウシカ』が一番好きなんですけど、環境破壊への問題提起がベースになっていて、特にコロナの自粛期間に観るとドキっとさせられる部分がありました。これが1984年に公開されていたなんて本当にすごいですね。それから、エヴァンゲリオンも大好きです」

──趣味の乗馬は再開しました?

「コロナの自粛期間は乗馬クラブもお休みで、そのあとは舞台に集中しているから、ずっと馬たちに会えていなくて。でも乗馬の先生が、今日は爪を研いだとか、前髪を切ったとか、彼らの写真を絵葉書のように送ってくれるので、それを心の支えにしています。舞台が終わって落ち着いたら、1、2週間ぐらい、乗馬のトレーニング合宿に行きたいなあと思っています」

──乗馬ができないとなると、今はどうやってリフレッシュしているのでしょうか?

「とにかく眠るようにしています。もともと切り替えるのが下手なタイプなんですけど、藤原さんから、とにかく食べて眠るようにすれば大きい声が出るから、とアドバイスをいただいて。シンプルですけど、それが一番大事ですよね。自分が健康でないと、何も生み出すことはできませんから」

──眠る時はパジャマ派ですか?

「Tシャツ、スウェット、腹巻です。お腹が弱くて、冷たいものでもお腹を壊しちゃうので、腹巻はお守りのようなものなんです」

──お肌がきれいですが、スキンケアはどのように?

「とにかく保湿を心がけています。乾燥しやすい季節なので、舞台に向けて喉のケアのための部屋に2つ加湿器を置いてるんですが、肌の調子が良くなったんです。やっぱり保湿が大事なんだと感じました。それから、自分へのご褒美として、3日に1日はパックをしています」

──今、気になるファッションは?

「乗馬をしているからジョッキースタイルには憧れます。それから、スポーティだけどモードでフェミニンな〈ピーター・ドゥ〉や、ヴィンテージも好きです。今は、舞台で精一杯なのでファッションから遠ざかっていますが、落ち着いたらまた、ファッションも楽しみたいです。まずは、この舞台を完走するように頑張ります」

Sky presents『てにあまる』

2020年12月19日(土)~2021年1月9日(土)
東京芸術劇場プレイハウス
ほか、地方公演あり
URL/horipro-stage.jp/stage/teniamaru2020/

Interview & Text:Miho Matsuda Edit:Chiho Inoue

Profile

佐久間由衣Yui Sakuma 1995年、神奈川県生まれ。2014年に女優デビュー。2017年結婚情報誌『ゼクシィ』の10代目CMガールで注目を浴びる。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』、初主演映画『“隠れビッチ”やってました。』(2019年)など話題作に出演。フジテレビスペシャルドラマ『教場II』(2011年)に出演。『殺意の道程』や主演をつとめる『君は永遠にそいつらより若い』が2021年公開予定。現在、初出演の舞台『てにあまる』に出演中。 https://yuisakuma.com/

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