岸井ゆきのインタビュー「芝居をすることだけが女優じゃない」
旬な俳優、女優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.41は注目の若手女優、岸井ゆきのにインタビュー。
新しく家族を持つことは、
自分の家族と離れることかもしれない
──今回の映画のように、親族の死を通して家族に対する見方が変わったことはありますか?
「父と母は、私にとってはそれぞれ別の存在で、両親の背景に関してはまったく知りませんでした。でも、祖父母が亡くなった時、叔母は母の妹なんだということを初めて意識したんです。“母は叔母とずっと一緒に住んでいて、同じ時間を共有していたんだ”と、ふと思いました。それは映画の中でもそうなんですが、岩松了さん演じる春野昭男は光石研さん演じる春野清二と兄弟で、池本啓太くん演じる春野清太は私が演じる吉子の弟です。でも、こうやって一緒に生活して過ごした仲なのに、なんでこんなに遠くなってしまったのかな……と映画でもプライベートでも思ったりしました」
──これまで見えなかった家族の在り方が、あるきっかけで見えてきたんですね。
「やっと関係性がわかるようになってきました。新しい家族を持つというのは、これまでの自分の家族と離れることでもあるのかと考えたりして」
──映画の中の役も、冷静で客観的な見方をできる人物像でしたが、岸井さんもそういうタイプですか?
「私も高校生の時そうでしたね。俯瞰して物ごとを考えるタイプで(笑)。だから、その時のことを思い出しながら演じました。あと、台本を読んでいると、客観的に見るからこそ理解できることが多い。恋人との関係性もそうだし、一歩引いて見れないとダメな部分もあるなって。好きだけどドライ、どこか諦めているところもある、みたいな。ただ、いろいろと考えても結局、自分で考えるよりは会話をしよう、現場でそう感じました」
──役に引きずられますか?
「普段はそうみたいです。ただこの映画の撮影中は“元気でいよう”という気持ちでいっぱいだったので、そこまで引きずられることはなかったです。でも、撮影が終わってホテルへ帰ってからは主人公の吉子みたいに、もう一人の自分がいるような感じでふーっと一息つくことがありましたね」
──シーンとしてつらかったところや印象に残っているところはありますか?
「光石さんと2人で車に乗っているシーンがあるのですが、私が台本で読んで想像した以上の感情が湧きました。おじいちゃんが死んだ、その事実が吉子にとってももちろんつらいことなのですが、私自身もどこか感情的になって。一人で台本読んででもわからないことがたくさんあって、現場で演じるからこそ湧いてくる感情がありました。あと、タバコを吸うシーンがすごくつらかったです(笑)。私、タバコがたぶん合わなくて。シーンによってはフリスクを食べながらタバコを吸っていたので、かなりしゃべりづらかったですね(笑)」
オフの日は基本的に室内で過ごします(笑)
──今、忙しい日々を過ごしていると思いますが、オフは何をしていますか?
「映画見るか、舞台見るか、友達とお茶するか……。外には出るけれど室内に入ってしまいますね。前は、散歩したりもしていたんですが、今はもうしないです。おいしいパン屋さんとか、雑貨屋さんに寄って、無駄使いばかりしちゃうんですよ(笑)」
──今、ハマっているものは?
「“筋膜リリース(筋膜の癒着や萎縮を正常に戻すこと)”です! 11月3日まで舞台もやっているので、体力づくりに励んでいることが大きな理由なのですが……ローラーを使って毎日コロコロしています(笑)」
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Photos:Motohiko Hasui Styling:Satsuki Shimoyama Hair & Makeup:Nori Interview & Text:Kurumi Fukutsu Edit:Sayaka Ito