DISH// インタビュー「心の底をえぐって書いた“HAPPY”」 | Numero TOKYO
Interview / Post

DISH// インタビュー「心の底をえぐって書いた“HAPPY”」

旬な俳優、アーティストやクリエイターが登場し、「ONとOFF」をテーマに自身のクリエイションについて語る連載「Talks」。vol.100はDISH//にインタビュー。

左から泉大智(Dr)、矢部昌暉(Cho/G)、北村匠海(Vo/G)、橘柊生(DJ/Key)
左から泉大智(Dr)、矢部昌暉(Cho/G)、北村匠海(Vo/G)、橘柊生(DJ/Key)

北村匠海(Vo/G)、矢部昌暉(Cho/G)、橘柊生(DJ/Key)、泉大智(Dr)からなる4人組バンド、DISH//。2023年8月9日に発売となる1st EP『HAPPY』は、すべての楽曲の作詞作曲をメンバー自身が手がけている。リード曲「HAPPY」は北村匠海が作詞、メンバー全員で作曲を担った。パワフルなバンドサウンドが疾走するパンキッシュな楽曲で、愛を持って感情豊かに生きることで幸せを呼び込もうとする歌詞にもエネルギーが溢れている。ほかにも、泉大智が親友の結婚式のために作った「ウェディングソング」や、橘柊生と北村が共作したラップが入ったファンクチューン「Vamping」など5曲を収録。ダンスロックバンドとして活動を始めた彼らが、やがて自ら作詞作曲をすることでバンドとしてタフになっていった――。そんなDISH//の現在地が鮮明に浮き上がってくる。新作、バンドへの思い、そしてオフの過ごし方についても聞いた。

メンバーそれぞれが考える幸せの形

──今年(2023年2月)リリースした5thアルバム『TRIANGLE』はほぼ皆さんが作詞作曲したアルバムでしたが、1st EP『HAPPY』は全5曲を作詞作曲されています。

北村「僕たちは楽器も弾けないし、作曲もできないところからスタートしましたが、活動を続けていくなかで、自分たちが作った曲でライブをやったり、音楽番組に出たりするという夢が少しずつ叶っていきました。その流れで、このEPも自然と自分たちが作った曲で構成される作品になりました。最近はメンバーが作詞作曲するのが当たり前の状態でスタッフともブレストをしています。積み重ねてきたものが形になってきた感覚がありますね」

──多彩な5曲が収録されたEPですが、何か全体のイメージはあったのでしょうか。

北村「DISH//は何かひとつのアーティストが好きで集まったわけではなく、たまたま同じ事務所にいたメンバーによって生まれたバンドなので、そもそも好きな音楽もルーツも違うんですよね。柊生しか書けない曲や大智にしか書けない曲があります。DISH//らしさを追い求めると、自然と色とりどりの作品が生まれるんですよね。特にライブをやっているとすごく感じるんですが、何色にでもなれるというか、ある曲を演奏しているときは一色だったとしても、終わってみるとまた違う色になっていたりもする。”HAPPY”っていうのも、今年のテーマでもある”幸せ”の意味についてメンバーで話し合ったときに『人によっていろいろな幸せの形や角度があるけど、僕ら自身も自分たちが幸せだと思うものをチョイスしていこう』となって。各々が見てる幸せの形を集めてみたら、音楽性は幅広いけれど、1本軸が通った作品になったと思っています」

──表題曲の「HAPPY」は北村さんが作詞されていますが、4人が思う幸せと向き合って書かれたんでしょうか。

北村「そうですね。4人で作った曲を作詞するときは、メンバーで見る景色が毎回浮かびます。あとは、自分が感じてきたことのなかから言葉を取り出したかったりもする。『HAPPY』ではサビの“ただ”っていう言葉だけはメロディを作っているときにメンバーのなかから生まれていて、そこから『”ただ”伝えたいことって何なんだろう』と自分に問いかけました。とてもシンプルなメッセージのサビですが、それを書くためには心の底をかなりえぐらなきゃいけなかった。底抜けに明るく生きてる人ってあまりいないと思うんですよね。僕ら自身もそうですし、底抜けに明るく見えている人こそ裏ではすごく頑張っていたり、すごく悔しい思いをしていたり、大きな夢があったりする。そういう気持ちも込めて歌詞にしました」



──力強く愛を持って感情豊かに生きることでハッピーを呼び込むようなエネルギーを感じました。

北村「自分の人生を考えてみても、光と影は絶対にあります。でも、結局エンターテインメントが行きつくところというのは、見てくれる人や聴いてくれる人に対して、何を与えてあげられるか、どんな言葉をあげられるかということだと思っています。最近の世の中はため息をつきたくなることばかりかもしれないけど、僕たちはただDISH//の曲を聴いてくれる人に『ありがとう』を伝えたいんだと思って、最後の歌詞は書きました。いろいろな足し算、引き算、掛け算、割り算をした上で『ただ、この一言なんだ』という答えが出たような感じですね」

「『HAPPY』は最後全員でサビを歌うんですが、そのコーラスがタイトル通りすごくハッピーな感じがしました。でも匠海が言ったように、はっきりとした明暗もある曲で。僕も悲しいことがないとハッピーは感じられないと思っています。それがちゃんと込められているところが好きです」

矢部「世間のDISH//のイメージというと、『猫』や『沈丁花』のように優しい曲のイメージが強いと思うんです。でも4人ともロックな曲も好きだし、ライブでは後半セクションに一番盛り上がるような曲を持っていったりするので、『HAPPY』みたいな曲は、ずっと自分たちで作りたいなと思っていました。そうやって大事にしていた部分をリード曲としてリリースできることがすごく嬉しいです。DISH//にはこういう一面もあるんだっていうことを知ってもらいたいですね。さっき匠海が言っていたみたいに、4人に共通するルーツがないからこそ、ジャンルレスにいろいろな曲ができるのがDISH//の強みだと思います」

「4人とも曲が書けるところもDISH//の強みだと思います。今回のEPではそこがしっかりと出せました。『HAPPY』のように4人で作る曲はこれからも増やしていきたいですね」

──泉さんが作詞作曲した「ウェディングソング」は親友の結婚式のために作られたそうですが、明確に曲を贈る相手がいるということをやってみて、どうでした?

「誰かに曲を贈るということはこれまでにやったことはなかったんですが、僕としては今回が最初で最後だと思っています。一番の親友の大切な機会はそうそう訪れないと思うので、すごく思い入れのある曲ですね」

──「愛をありがとう」という歌詞は新郎新婦の気持ちにも、泉さん自身の気持ちにも思えました。

「人の幸せを喜べるということはすごく素敵なこと。自分だけじゃなく、周りの人が幸せでいることはすごく大事なんだということを身に染みて感じた出来事でした。目の前で愛を見て、それが自分にも連鎖していきましたね」

──橘さんと北村さんが共作されたファンキーな「Vamping」は、ラップパートからサビで一気に盛り上がったり、アグレッシヴな展開が印象的です。

北村「僕はメロディを付けたんですが、この曲のコード進行はもう『柊生!』って感じですね(笑)」

「やりたいことを詰めこんだ感じではあります。これまでのDISH//の曲にはないテンポ感を意識するなかで、今個人的に勉強しているループ進行を取り入れてみました。こういう曲はすごくライブ映えするんですよね。それもあって作曲していてすごく楽しかったです」


──「当然埋まるワンマン公演」というラインがあったり、歌詞もライブを意識したものになっていますね。

「そうですね。だから、ライブで歌うのがすごく楽しみです。でも、レコーディングの時は匠海と俺で『これライブで息継ぎどうすんだよ』って悩んでました(笑)」

北村「柊生の曲って息継ぎのことを考えてない曲が多いんです(笑)」

「(笑)」

北村「それで、僕も低いキーでラップをしたりして、2人でかなりアイディアを出し合いました」

──橘さんが作詞、バンドが作曲した「everyday life.」はジャジーなミディアムチューンです。

北村「DISH//のライブにはこういう空気感が必ず入ってくるんですよね。ジャジーでオシャレな雰囲気が僕たちは好きなんだと思います(笑)」

──音楽の溢れる平凡な日々を大事にするような曲ですね。

「雨が降っていたり、快晴だったり、いろんな朝があるよねっていうところから発想した曲なので、最初は『Morning』という仮タイトルがついていました。でも、朝だけじゃない日常のことを書こうと思って、そこから特にドラマティックなことは起こらない、平凡な日常の幸せを描く曲になっていきました。最近よく散歩をするんですが、散歩している時間って特に何も起こらないけど幸せを感じる。その感覚をそのまま曲に落とし込みました」

ライブ終わりに道後温泉へ

──アルバム『TRIANGLE』のツアーが4月から6月末まで開催されていましたが、ツアー中のオフは皆さんどう過ごしているんですか?

北村「僕たちは年がら年中会っているのでオフに会うことはほとんどないんですが、ツアー中は食事に行ったりはしますね」

「大智の誕生日がツアー中だったので、俺と昌暉で祝いました。匠海は仕事で参加できなかったんですけど。あと、大智とふたりで道後温泉に行きましたね」

北村「ライブ後に2人で温泉に行ってたので、めっちゃタフだなと思いました(笑)」

「ライブ終わってその足で行きましたね」

北村「俺と昌暉は『ごめんなさい。遠慮します』って言って断りました(笑)」

「かなりギリギリまで『行くよー!』って誘ったんですけど断られました(笑)」

矢部「翌日もライブだったので、ゆっくり休みたかったんです(笑)。ライブ終わりで泊まって次の日は東京に帰るだけというスケジュールが1回あって、ちょうど大智の誕生日だったので、一緒にお酒を飲みながらごはんを食べましたね」

「僕としては温泉は遊びに行くというより、体を休めに行く感覚が強いんですよね(笑)。温泉は好きなので行けて嬉しかったです。今回のツアーはそんなにオフの時間がなかったんですが、おいしいごはんが食べられたのは良かったですね」

──矢部さんのツアー中の楽しみというと?

矢部「16カ所18公演のツアーだったので各地のいろんなホテルに泊まらせてもらったんですが、あるホテルのベッドがめちゃくちゃ硬かったんです。他のメンバーやスタッフさんは『体がすごく痛い』って言ってたんですが、俺はめちゃくちゃ調子が良くて、『俺って硬いベッドが好きなんだ』って気付きました(笑)。そこから泊まるホテルのベッド事情がすごく気になるようになって『このホテルはどんなベッドなんだろう?』ってワクワクしてました。あと『どんな雰囲気の部屋なんだろう?』とか『トイレとお風呂は別なのかな?』とか想像したりして、楽しみが増えました」

オンラインゲームで世界とつながる

――では、普段のオフは最近何をすることが多いんですか?

北村「僕は休みの日にやりたいことがいっぱいありすぎて、天気によって何をするか決めたりします(笑)。晴れていたらゴルフの練習に行くし、曇りや雨だったら一日中ゲームをするか『水曜どうでしょう』を見ながらぐだっとします。『水曜どうでしょう』は本当に好きな番組で、もう3周目に突入しました(笑)。ビールを飲みながら観ているとすごく落ち着きますね」

「僕もゲームか散歩ですかね。今、家の周りのおいしいお店を制覇しようとしていて、頻繁に食事に出ています」

矢部「僕は基本的に家から出ないですね。YouTubeや映画やアニメを観たり、マンガを読んでいます。YouTubeだと、日本育ちの高学歴の外国人兄弟がやっている『サワヤン チャンネル』をよく観ています。兄弟がゲームをやったり、ドッキリを仕掛け合ったりするんですが、基本口が悪いんですよ。テンション高く暴言をぶつけ合っているのを頭をからっぽにした状態で観てます(笑)」

「俺も基本は家にいますね。たまに車でどこか出かけるくらいですね」

「最近、大智は埃を被っていたハードを起動させて。もともとよくゲームをやっていた匠海と僕と大智でオンラインゲームをちょこちょこやってます」

北村「ゲームは本当いいですよ。最近は(ボイスチャットで)海外の方としゃべりながら一緒にゲームしてます。グローバルなんですよね。英語で会話した気になれますし(笑)、ゲームは本当に面白いです」

DISH//『HAPPY』
価格/¥1,980(通常盤)
発売日/2023年8月9日(水)

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Photos:Takao Iwasawa Styling:Shinya Tokita Hair & Makeup:Keiji Udagawa (heliotrope) Interview & Text:Kaori Komatsu Edit:Mariko Kimbara

Profile

DISH//ディッシュ 北村匠海(Vo/G)、矢部昌暉(Cho/G)、橘柊生(DJ/Key)、泉大智(Dr)で構成された4人組ダンスロックバンド。2011年結成、今年で12年目を迎える。合算累計再生回数が10億回を突破した「猫」で、2021年末には紅白歌合戦への初出場を果たした。2023年2月にリリースされた5thフルアルバム『TRIANGLE』は自身初のウィークリーチャート3冠を獲得、8月にはEP『HAPPY』のリリースを控える。12月には『DISH// ARENA LIVE 2023「HAPPY?」』を敢行予定。4人は映画やドラマ、舞台など、個々でも活動を行っている。

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