フランソワ・オゾン インタビュー「現実にない喜びを得られるということ」 | Numero TOKYO - Part 3
Interview / Post

フランソワ・オゾン インタビュー「現実にない喜びを得られるということ」

talks #05
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「親友の夫が女ともだち?」というコピーが話題の新作『彼は秘密の女ともだち』。平凡な主婦クレールと「女性の服を着たい」と話す亡き親友の夫ダヴィッドが築く“女の友情”を描いた本作。監督を務めたフランソワ・オゾンが本作に込めた想いとは? 女流推理作家ルース・レンデルの短編を原作として「女装」というテーマに取り組んだ理由や、劇中ファッションに込めたメッセージを教えてくれた。<映画『彼は秘密の女ともだち』の情報はこちら
例えばカトリーヌ・ドヌーヴにジャージを着せるということ
──あなたの映画は女性のファッションやスタイルにも、とても敏感ですね。つねにファッションの面でも考え抜かれています。 「装うということは一種の変装であり、遊戯であると思う。映画とは、僕にとって遊戯だ。映画を作るとき、僕らは子どものように遊ぶ。たとえば『しあわせの雨傘』のカトリーヌ・ドヌーヴに、彼女がいままで着たことがないようなジャージの上下を着せて遊ぶ(笑)。僕にとって映画は幼少時代の遊戯に根ざしたもの。子どもの頃、僕らはどんなものにもなれただろう? 頭のなかではすべてが可能で、禁止であることは何もなかった。映画はそうした延長にあるんだ」
──そういう点が、あなたが映画に惹かれた理由でもあるのでしょうか。 「うん、とくに現実逃避という面でね。少年にとって現実の世界というのは制約があって悲しいけれど、想像の世界ならすべてが可能だ」
──あなたの育った家庭環境はそれほど厳格だったのですか。 「いや、ふつうの少年と変わりはなかったと思うけれど––つまり楽しいこともあればそうじゃないこともあったけれど、早くから映画や本や遊びのおかげで現実から逃避できることを学んだ。現実にない喜びを得られるということをね」
──では、たとえば仕事していない、オフのときに楽しいことは何ですか。 「そうだな、食べるのは大好きだよ(笑)。料理を自分でするのも好き。わりと巧い方じゃないかな」

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