高良健吾インタビュー
「子どもと接することで父性が芽生えた」
2005年のデビューから10年目を迎え、実力派俳優として、映画だけでなく、大河ドラマでも活躍中の高良健吾。幼児虐待や学級崩壊といった問題を通して、希望という可能性を描いた中脇初枝の小説をベースに、『そこのみにて光輝く』の呉美保監督が映画化した最新作『きみはいい子』では、まじめだけれど優柔不断でな小学校の新米教師・岡野を演じる。映画について、そして役者として今思うこととは?
自分もみんなも通ってきた、1年目という経験
──生徒さんたちとのシーンがドキュメンタリータッチに描かれていたのも印象に残りました。高良さんが子どもたちと話すシーンは脚本なしで行われていたところもあったんですか?
「はい。ある程度の方向性は決まっていましたが、僕自身が子どもたちに話してる瞬間もあるんです。もちろん、岡野は僕よりも一番前にいるのだけれど、僕から自然に出てきた言葉もある。でも、あそこで思いっきり岡野像が変わってしまうということも嫌なんです。それでも思いが前にいっちゃって、言葉にはならないんだけど岡野はこう感じてる。その後ろで僕がこう感じてほしかったんだというのを台詞にはせずに喋っていたという感じでしたね」
──自分の幼少期に似ているなと思う子はいましたか?
「たくさんいました。絶対に自分もみんなも通ってきた道だし、岡野先生も通ってきた道なんです。1年目という辛さとか、大変さとか。自分が子どものときに言われたかったこととか、したかったなってこととかあるじゃないですか。そういうことを思い出して、こういうときはこう言ってあげたいなと思うこともありました」
──生徒に囲まれているうちに、父性が芽生えてきたなんてことも?
「それはたくさんある。子どもと接することで父性が芽生えた感覚はありますね。生徒のほとんどが事務所に入ってる子ではないんです。現場を知ってる子は、しっかりしてるじゃないですか。でも知らない子たちがほとんどだから、嫌なときは嫌そうにする。でもそれでいいんですよね。とにかく、すくすく育ってほしいなと思ってました(笑)」
──逆に、イラっとしたり、手に負えないと思ったことは?
「それも込み込みです(笑)。けれども、イラっとしたままで接したら、子どもは離れていくだけなんです。イラっとしたというのは、『こういうときには喋っちゃ駄目なんだよ』ってことだから。ちゃんと話せば伝わる。映画の中では、抱きしめることが大切だということが描かれてて、それもすごく感じるのですが、僕はその前に向き合ってましたね。子どもたちにとって、絶対に嫌な思い出にさせたくないと思っていました」
Photo:Satomi Yamauchi
Hair & Make-up:Satoka Takakuwa
Stylist:Kazuhiro Sawataishi
Interview & Text:Tomoko Ogawa
Edit:Yukiko Shinmura