都築響一氏が今年の大ゴム祭の記事をロードサイダーズ・ウィークリー307号に載せて下さいました。
会員限定のメルマガなのですが、ゴム祭記事の部分だけ転載させていただいています。写真も文章も流石のクオリティーです✨記事にしてくれるだけでなく、素敵写真&素敵文章がラブレターのように感じれるような濃厚さ。これだけの記事にしてくれる方はなかなかいないと思います。
毎回物凄い情報量のメルマガなのですが、普通に本を買って読むのと同じボリュームで、これを毎週やっている、しかも面白い人たちを発掘し続けるというバイタリティーに頭が下がります。ご興味ある方は是非、これを機にご購読してくださいませ!!
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2018/05/09号 Vol.307(1/2)ロードサイダーズ・ウィークリー307号をお届けします。 |
food & drink Neverland Diner 二度と行けないあの店で 22
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「恋」と「変」の字ははよく似ている。「変態」を読み間違えたら「恋態」。変態とはもしかしたら、このどうしようもない日常に恋していられるための、きわめて有効なサバイバル・ツールなのかもしれない――長いこと世の変態さんたちを取材してきて、そんな思いが強くなっている。
先週土曜日、5月5日の「こどもの日」から日付が変わった6日の深夜1時、とってもオトナのイベント「デパートメントH」が幕を開けた。場所は鶯谷の東京キネマ倶楽部。先週はグランドキャバレーのお話をしたが、ここはもともとワールドという名の大箱キャバレーだった場所。通算回数2百数十回となるデパHは、もう10年以上前からキネマ倶楽部で毎月第1土曜に開催されていて、5月6日は「ゴムの日」というわけで、今夜は毎年恒例の『大ゴム祭』なのだ。 |
今年が8回目となる大ゴム祭、ロードサイダーズ・ウィークリーでは創刊の2012年から何度も取材させてもらってきた。去年はお休みだったゴム祭は、僕にとっても久しぶりだったし、今回はこれもメルマガで何回も取り上げたラバー・アーティスト、サエボーグの新作『Wasteland』が披露されるというのも楽しみだった。デパHとゴム祭を取り巻く物語については、記事末にリストアップした記事をバックナンバーからお読みいただきたい。 |
第8回大ゴム祭は、4つのパートにわかれた2時間あまりのプログラムになった。
1 サエボーグによる新作発表パフォーマンス |
ゴムと呼んでも、ラバーと呼んでもいいのだけれど、他になかなか類を見ないその特質は「伸縮」にあると、僕は勝手に思っている。
ロードサイダーズ読者にはもうおなじみかと思うが、サエボーグはラバーによる巨大な動物や物体をつくり、それらを単に展示するだけでなく、内部に人間を仕込むことによってコミカルで不条理な一幕の演劇的空間を立ち上げるアーティストだ。さまざまなやりかたで「リアル/ナチュラル」に近づこうとする着ぐるみの怪獣やCGによる映像表現とは異なり、空気で膨らませた登場人物たちは明らかに文字どおりの「ハリボテ」であり、その不自然=アンナチュラルな外観と演技は、それがあまりに滑稽であるために、ある種の不安や不穏な感覚さえ生み出しもする。たとえば、シリアルキラーが描くピエロの絵のように。 |
その対極にあるとも言えるKURAGEの衣装デザインは、ラバーのストレッチ特性を最大限に活かして第二の皮膚とすることで、人体改造による別種の美を着用者にもたらしてくれる。とはいえラバー・ファッションは「ゴムのコスプレ」とはまったく似て非なるものでもある。なぜならコスプレにはアニメや漫画の登場人物といった元ネタがあって、それにどう近づくかという遊戯=プレイであるけれど、KURAGEやゴム祭に登場するラバリストたちの衣装は、ひとつひとつが着用者の人体に合わせてつくられたオリジナルであって、オートクチュールなのだから。これらラバリストたちの奇妙に美しい存在感は、着用者と制作者のコラボレーションによる「動く作品」だ。 |
そして同時にそれは、皮膚をピチピチに閉じ込める「動ける緊縛」という性的快感を暗示させもする。あるM女さんがご主人様にからだ全体をきつく包み込むラバー衣装を着せられ、局部に取り付けられたジッパーを開けると「性器だけが飛び出して、自分が自分でなく性交のためにつくられた穴人形になった気持ちになるんです」と言っていたのを思い出すが、ラバーは人体を物理的だけでなく、精神的にも別人格に改造してしまう装置なのかもしれない。今回の取材にあたって、リハーサルの時間から参加させてもらった僕は(なにしろゴム祭は毎回超満員で、リハの段階から行ってないと撮影場所すら確保できないので)、ここに登場するラバリストたちの素顔も見ているのだが、彼女や彼らの素顔と普段着のあとで、ラバーに身を包んで舞台に現れた姿を見ると、そのギャップに驚くというよりも、そのギャップが生むエロティックな衝撃に、ファインダーを覗きながら震えそうになる瞬間すらあった。 |
今週は2時間あまりにわたって繰り広げられたデパートメントH・第8回大ゴム祭の模様を、100枚以上の写真で誌上追体験していただく。一夜、舞台を飾ったラバリストと、客席から祭を盛り上げた変態さんたち、そしてなによりこんなにビザールでクレイジーな夜を、いつものように完璧に運営してくれた主宰者のゴッホ今泉さん&チーム・デパHのみなさんに、最大限のリスペクトと感謝を込めて。 |
[デパートメントH・第8回大ゴム祭 誌上再現館] |
深夜12時を過ぎたころドア・オープン。数時間前から並んでいた観客が、思い思いの出で立ちで会場を埋め、ショー・スタートまでの時間をあたためていく。 |
『Wasteland』サエボーグ |
暗闇から舞台に巨大なフンコロガシが登場、ハエが飛び交う中、茶色のフンを奪い合う。そのうちに舞台の外から多数のフンが投げ込まれて驚喜している只中に、頭上から殺虫剤が噴射され、フンコロガシは息絶えてしまう・・・という、今回がお披露目となる新シリーズ。Wastelandとは「荒地」の意。2012年から始まった『Slaughterhouse』シリーズ、2015年の『HISSS』、2016年の『Pigpen』に続く新たな展開である。 『Wasteland』とは「4月はもっとも残酷な月だ」で始まる、20世紀でもっとも有名なT.S.エリオットの難解で長大な詩作品のタイトルでもあるが、サエボーグの「荒地」はこれからどんなふうに展開していくのだろうか。ちなみに『Pigpen』は現在、フィラデルフィアICAで開催中のグループ展『Tag: Proposals on Queer Play and the Ways Forward』に出展中。 http://saeborg.com/ |
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KURAGE パート1 |
フェティシュ界隈を超えて、もうハイファッションの領域でも知られるようになったKURAGE。KURAGEを主宰するKid’ O(キド)さんは、「新宿から向こうは敵だと思ってますから!」と、現在までずっと池袋を拠点に活動を続けている。 新作ショーの第1部は純白のラバー花嫁衣装から始まるパフォーマンス。演じるはストリップ・アーティスト若林美保。 http://kurage.tokyo/ |
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ラバリスト・ウォーク |
30人/組以上のラバリストが登場したコレクション。セクシー度満点のコスチュームから、あえて分厚いラバーを使ったヘヴィ志向、犬や鹿など動物とのハイブリッド・獣人組など、さまざまな嗜好とデザインが披露され、圧巻。 |
なかでもアイデアの奇抜さで群を抜いた感があった「チーム日暮里」。最初にふたりのラバリストが登場。空気で膨らませた球体に首から下を埋め込まれる。そこから腕を拘束されたものや、四つ足の犬などが加わっていき、最後にクイーンが登場。会場を熱狂させた。 |
KURAGE パート2 |
Kid’ O氏を中心にKURAGEチーム集合撮影 そして出演したラバリストたちがぶたいに戻ってきて、記念撮影タイムが始まる。 第8回大ゴム祭のショー・フィナーレ! そしてフロアや客席では興奮冷めやらぬ観客、参加者たちのパーティ・タイムが夜明けまで! |
[参考記事リスト] |
2012年05月09日配信号『ウグイス谷のゴム人間』 http://www.roadsiders.com/backnumbers/article.php?a_id=55 2012年06月20日配信号『突撃! 隣の変態さん2 サエボーグ』 2012年07月18日配信号『池袋のラバー女神たち』 2013年05月09日配信号『ウグイス谷のラバー・ソウル』 2014年02月26日配信号『芸術はいまも爆発しているか――岡本太郎現代芸術賞展』 2015年06月10日配信号『ラバーの炎にくるまれて』 |
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