「カオ2」
代々木駅東口に「TOH」というアートスペースが1月10日に新規オープンしました。
杮落しとして、友人のアーティストである山内祥太さんが個展を開催中です。企画主催はアートスペースFL田SHのディレクターである吉田山さん。
私は先日行ってきたばかり。本来ならノイズであるはずの、外から聞こえる電車の音も含めてインスタレーションされてる立地を生かした展示&コンセプトになっていて杮落としに相応しい企画!
何十層にもマスクが積み重なっていってミルフィーユ?地層のようになっていく映像は凄くフェティッシュで、交換可能な身体として「変身サイボーグ」(着せ替えであり、手足を交換できる12インチドール)のように身体拡張を模索してる私的にはグッとくるものがありました。
私はシェイプシフター(変身能力者)への憧れがあるので。。
映像の中でニキビやステロイドまでシールみたいに貼っていくところはラミリードール(傷や妊娠線などを貼って遊べる人体バランスを極力リアルにした12インチドール)のようなプレイフルさも。
私が行った時にはパフォーマンスも行われていました。山内さんがやり続けていることがわかりやすいものだと思います。勝手に「半生彫刻」と呼ばせてもらってます。アーカイブ動画が出来上がったのでこちらも是非。↓ 会期は今週中までなのでお見逃しなく!!
学生時代に彫刻と映像を学んだ山内は、これまでVRや3DCGなどの映像技術と自身の身体イメージ、そして粘土彫刻などを組み合わせることで制作活動を行ってきました。この作品構造は2019年に発表している「ロキ黄昏」でも明らかなように自身の存在を作品の物語内部に登場させることで物語の外部である私たちの時代との新たな関係性を見いだします。
今回の展覧会では、日本の漫画家である諸星大二郎の「カオカオ様が通る*」から影響を受けて書き起こされた顔にまつわる短編物語を中心としたインスタレーションを発表します。
人間の皮膚、そして都市の風景を現代のテクスチュア(感触)と捉え、山内が近年取り組んでいる身体の彫刻化への探求とテキストに潜む映像性について考察を深めます。
2020年では世界的感染症の対策として、常時マスク着用が日常風景の一つとなり、顔が持つ多様な情報を剥奪された我々は新たな第二のテクスチュア(感触)を探す旅へと出ることを余儀なくされました。
この状況に対して、山内の物語は新たなる第二の日常を創造できるきっかけとなる展覧会となりうるでしょう。
「カオ1」photo by Koichi Takemura
*この物語は「カオカオ様」という巨大な顔に足が生えた怪物が様々な土地や文化圏を通過していき、それぞれの土地でカオカオ様への対応や反応の違いを旅人が観察する物語です。カオカオ様について様々な人間が様々なことを言うので主人公は結局「カオカオ様」について確証を得ることができずに物語は終わっていしまいます。カオカオ様の存在は自分の顔や身体を視ることは不可能であるという現象そのものが実体化した象徴的な存在として描かれています。作中で「カオカオ様もわたしであり、わたしもまたカオカオ様である。」と発言する村人が現れますが、これも私という存在を視ることの不可能性また相対的な存在としての自分という現象そのものを体現しているのではないかと思います。つまりカオカオ様はみなの情念が作り出した幻影であって、蜃気楼のような存在なのではないだろうかと思うのです。
山内祥太による「カオカオ様が通る」解釈
山内祥太「第二のテクスチュア(感触)」
開催期間/2021年1月10日(日)~30日(土)
開催場所/「TOH」 東京都渋谷区千駄ケ谷5-20-11 第一シルバービル 1B
営業時間/13:00~19:00(月~17:00)
休廊日/火水日祝
・初日のみ日曜開廊
私と世界の関係を様々なメディアを通して、探究する。
代表的な作品では、3DCGとクロマキー合成という簡易的な合成方法を組み合わせた映像作品や、
近年はVRを体験すること自体を作品とする自己言及的かつパフォーマティブな作品制作にも
取り組む。
主な展覧会歴に、
「TOKYO 2021-un/real engine -慰霊のエンジニアリング/ 戸田建設本社ビル1F, 東京, 2019
「六本木クロッシング2019:つないでみる」/森美術館, 東京, 2019
「イン・ア・ゲームスケープヴィデオ・ゲームの風景,リアリティ,物語,自我」/ ICC, 東京, 2019
「WROビエンナーレ2019 -HUMAN ASPECT」/ Four Domes Pavilion ポーランド, ヴロツワフ 2019
など
「Lonely Eyes」