片桐仁が選ぶおすすめの本
旅する気持ちを刺激してくれる本
さまざまな分野で活躍するクリエイターやアーティストに聞いたとっておきの一冊。
『東京くねくね』松尾貴史/著 ¥1,300(東京新聞出版局)
キッチュさんが横で
話してくれるような気分で
キッチュさん(松尾貴史さんの旧芸名です)とは、何度か舞台で共演させていただいているんですが、打ち上げの席などで、「昭和のスター芸人たちは、実はこんな人であった」とか、「世の中にはこういう業界がある」とか、聞いたこともない話をしてくれます。そんな中、事実より本当っぽい“ウソ雑学”を混ぜ込むのがキッチュ流で、いつも騙されてしまいます。あと「ウーロン茶は口の油を奪うので、本番前には飲まない」とか、「ビールは糖分が多いので、飲む前に歯を磨く」とか、「血液型占いは信じないので、教えない」とか、キッチュさん独自のルールがあるので、いい加減な僕としては、物事をいろんな方向から考えていて、しかも忘れないでスゴいなーといつも感心しきりです。
そんな、松尾貴史さん(これも芸名。本名は「松尾」でも「貴史」でもない!)が、東京23区を中心に各地を散歩しながら、ご飯を食べたり(主にカレーと麺類)、お酒を飲んだりするエッセイ『東京くねくね』。全然興味のなかった“区”の話(全国には中央区ではなく、北区が一番多いなど)や区の由来(大田区は「大森」と「蒲田」から取ったらしいが、なぜそこの部位を?)、イメージと現実のギャップ、妙に符合する話の持っていき方が楽しく、横でキッチュさんが話してくれているような文体に引き込まれました。
「これ、誰かに話したいなーと思うけど、忘れちゃう雑学満載」です。本になってしまうので、正確な情報も載せないといけないけど、「これはこういう理由なのではないか?」という推理が、事実より面白かったな〜。あと、ここ行ってみたい!と思ったお店が〈*現在は閉店〉という注釈が多いのも、寂しいけど、東京っぽいな〜と思いました。
惜しむらくは語られているお店の写真が少ないこと。できればカラーで入れてほしかったなー。ということで、この時の写真を交えた、トークライブをやってほしいです(やってたらすいません)!!
テーマにまつわるその他の2冊
『幸福トラベラー』
山本幸久/著 ¥640(ポプラ文庫)
「偶然出会った中学生同士のデートの話。本当に上野を散歩している気分になれてとてもよい。甘酸っぱい初恋の話。息子に読ませたい」
『地球の歩き方 ガイドブック D15中央アジア サマルカンドとシルクロードの国々 2017年~2018年版』
地球の歩き方編集室/著 ¥1,900(ダイヤモンド社)
「キルギスでお会いした日本人旅行者の方が持っていて、他の国に比べて中央アジアは国数の割に薄い。国によっては5ページしかない。発売してから大分たつものでも、きちんと機能しているところがすごい。(写真は最新版)」
Text:Jin Katagiri Photo:Kouki Hayashi