坂本美雨が選ぶおすすめの本妊娠・出産・子育てのバイブル
さまざまな分野で活躍するクリエイターやアーティストに聞いたとっておきの一冊。
『子どもへのまなざし』佐々木正美/著 ¥1,700(福音館書店) 子育てのお守りのようなことば ブックディレクターである夫が私の妊娠を知るやいなや私のためにせっせと集めて机の上に積み上げていった妊娠・子育て本の中にこの本があった。まだ妊娠と出産に向き合うのに精いっぱいで、どんなふうに育てたいか、なんて具体的には想像もできなかったが、子育てのバイブルともいわれる一冊なので手に取った。妊娠中は集中力がすぐ切れて一冊を読むのが難しかったので、気になる箇所を拾い読みしていたところ、ある文章が目に入り、何度も繰り返し読み、声に出して読んだ。身体の中にしみ込んでいくようだった。 「伝えた希望が望んだとおりに、かなえられればかなえられるほど相手を信じるし、その相手の人をとおして多くの人を信じるし、それよりなにより自分自身を信じるし、自分が住んでいる環境、地球、世界を信じることができるのです。人を信じることと自分や世界を信じることとは、このようにおなじことなのです」 泣くことでしか伝えられない乳幼児期から、親にあらゆる望みに応えてもらい、全面的に肯定されることで親を信頼することができる。肯定されることによって、自分に自信が持て、安心して自立できる、という、この本を貫いている佐々木先生の信念。素直な子、優しい子、人を思いやれる子になってほしい…よく親が願う当たり前のことを私も願うようになった。けれど、その基盤となるのは、世界を信じる、ということじゃないだろうか。世の中はいいところだな、生まれてきてよかった、とふとした瞬間に思ってもらえること。恐ろしい事件や不安に満ちあふれた今の時代に生まれて、それでもこの世界に生まれてよかったと思ってもらえるように、私たちができることは、その世界の縮図である、お父さんとお母さんの元に生まれてよかったなぁとまず感じてもらうことかもしれない。親が、絶対に自分のことが好きで、いつでも味方でいてくれると安心してもらうこと。態度で、言葉で、体温で、全力で伝えていきたい。
テーマにまつわるその他の3冊
『コウノドリ 1』
鈴ノ木ユウ/著 ¥562(講談社)
「妊娠・出産は本当に一人一人違う。妊婦や新生児の病気なども含めさまざまなケースが描かれ、お産の一つ一つが奇跡なんだと教えられる」
『子どもはみんな問題児。』
中川李枝子/著 ¥1,000(新潮社)
「『ぐりとぐら』の中川李枝子さんがシンプルな言葉で綴った、子どもを大らかに見守る姿勢。疲れたら時折パラパラとめくりたい一冊」
『マタニティ古武術』
若林理砂/著 ¥1,600(亜紀書房
「鍼灸師の若林理砂先生のルーツである古武術と妊娠体験をもとに書かれた、大きく変化する産前産後の身体との上手な付き合い方」
Text:Miu Sakamoto Photo:Keiichi Wagatsuma