パントビスコの不都合研究所 vol.11 MEGUMI | Numero TOKYO
Culture / Pantovisco's Column

パントビスコの不都合研究所 vol.11 MEGUMI

世の中に渦巻くありとあらゆる“不都合”な出来事や日常の些細な気づき、気になることなどをテーマに、人気クリエイターのパントビスコがゲストを迎えてゆる〜くトークを繰り広げる連載「パントビスコの不都合研究所」。今回のゲストは満を持してMEGUMIが登場!

パントビスコ「今日は、ずっとお会いしたかったMEGUMIさんにお越しいただきました。いつもテレビやメディアで拝見しています」

MEGUMI「こちらこそ、いつもInstagramで拝見しておりました。今日はお目にかかれてうれしいです」

パントビスコ「光栄です。私のことはどのように知っていただいたのか、お聞きしてもよろしいですか」

MEGUMI「ある日、突然流れてきたんですよ。日常のディテールにフォーカスした作品をお描きになっているので、そういった角度からの気づきにはすごいほっこりするんです。私は常に前に進む生活をしているので、立ち止まって『こうだよね』という視点は、自分に足りてない要素なんですよね。そんな感じで楽しませていただいております」

パントビスコ「恐縮です。ありがとうございます! お話の前に、お互いの似顔絵を描き合うということになってまして」

MEGUMI「私、絵がものすごく下手なんですよね。こうやって描き合うということもないですし……。あ、意外とうまく描けました」

似顔絵、完成!

「すごい、過去一大きく描いてくださいました(笑)。初めてのテイストですね」

「オーラがあるので、表現してみました。なんだが夏休みに畑に来た人みたいになりましたね(笑)」

時代は進化しても布団の“あれ”が変わらない!

「単刀直入ですが、今MEGUMIさんが感じている不都合はありますか?」

「そうですね。家の中のことで言えば、布団カバーの変えにくさって、進化しないなぁと」

「布団カバー! 確かに」

「あれって紐じゃないですか。全部をファスナーにしていただけたら、開いて布団をのせるだけなのになって、15年くらい前から思っているのですが。あの行為が本当に苦手というか、嫌なんですよ。どこの布団の端を自分が持っているかわからなくなりますよね」

「中でグチャってなったりしますもんね」

「使っていくと片方に布団が寄っていったりして、こちら側に布団が何もないという事態になるじゃないですか。あれがすごいストレスなんですよ」

「どうにかならないんですかね。みんな思ってましたけど、なかなか口に出して言わない話題ですよね」

「こんなにいろいろなものがすごいスピードで変化しているなかで、あれだけ紐じゃないですか。紐か、一箇所がファスナーですよね。これは皆さんビジネスチャンスだと思います。2秒でさっと広げられるテントみたいに、布団が入れられたらいいのに」

「布団業界も、そこは個々人で頑張ってね!という感じなんですかね」

「これはもうこういうものだよって、きっと布団業界の人は受け入れていらっしゃるんじゃないですかね。布団カバーの話が広がっちゃってますけど(笑)。無駄にもいい無駄と嫌な無駄があると思うんですけど、あれは嫌な無駄のトップオブトップだと思うんですよね」

“無駄”から生まれるものも必要

「確かに。でも、世の中の流れの早さや技術の進化で、大体の無駄は解消されていきつつありますよね」

「無駄がなさすぎることで、今までの3倍ぐらい忙しくなっていませんか?」

「本当に思いますね。流行り廃りも早いし、忙しすぎますよね」

「移動中にオンラインでの打ち合わせをすることが多いのですが、なんだか隙間が自分の中になくなっているように感じます。今までは直接お会いして主要な話が終わった後に、ちょっとした無駄話から生まれるものもあったりして。詰め込む割には、生まれているものはあんまりない感じがするというか。奇跡の出会いとかセッションみたいなものがなくなっているのは、ちょっと危機感を持っていますね」

「本当に同じことを考えていて、僕は地元が福岡なんですけど、この間帰るときに普通電車に乗ってみたんですよ。目的地まで新幹線の3倍ぐらい時間がかかったんですね。でも逆に、普段よりすごく時間がかかって不便だなっていうのが、良かったですね。日常に余白を作る方がいいんじゃないかなと最近思うようになりました」

「わかります。たゆたう時間は絶対に必要だと思います。起きた瞬間から携帯でインプットが始まっちゃうじゃないですか。誰かが何を食べたとかどうでもいいことの(笑)。寝る瞬間まで、お会いして打ち合わせしてセリフ言ってって、自分が何したいのかがどんどんわからなくなっちゃうのはあるかなぁと思ってて」

「本当に。スマホの台頭で、公私の区別がつかなくなりましたよね。常にオンの状態になってるというか。それって心にはあんまりよくないよくないですよね」

「そうなんです。だから私、同時多発をやめたんですよ。セリフを覚えながら、インスタも見ながらたまに洗濯機回しながら、家に何か届いたりして、ずーっと何かやってるわけじゃないですか。今の人って同時多発的にいろんなことをやっていると思うんです。そしたらセリフが出てこなくなったときがあったんですよね。もうショートしちゃったんですよ」

「確かに、MEGUMIさんは俳優業もやられているので、チャンネルが人よりも多いから余計に大変ですよね」

「ちょっとこんがらがっちゃったんですよね。それが3回ぐらい続いて、『あ、ちょっと同時多発やめよう』って。運転するときは運転だけ。音楽もつけないで。そうすると、『あ、信号のデザインってこうなっているんだ』とか、『このビルはこんな看板の色だったんだ』とかって、今にフォーカスするようになりました。セリフを覚えるんだったら覚える。終わったら食器洗う、それが終わったら携帯でメールを送るとか。1個1個片付けると進みが良くて、セリフも覚えられるので、当時多発をやめてみました」

「大事ですね。しかもこれって気づいていない人が多いんですよね。自分が効率よくスマートにこなしてるって勘違いしてるけど、実はそれで疲れが蓄積されているのに、気づかずに後で爆発したりして」

「要は中途半端なわけじゃないですか。漫画見ながらアニメつけて、そこに音楽も流れているとなると、何を自分の体の中に入れているかわからない。そうなると、やっぱりそういう未来を作るんですよね。クオリティの低い時間を過ごしすぎると」

「それと、やらない勇気っていうのも大事ですよね。これだけは押さえて、他は割愛するとか。そっちの方が質が上がりますよね」

「そうですね。私、神社仏閣がすごく好きでよく行くんですけど、京都や奈良に行くと、『この建築は釘1本使ってないで』という話になるじゃないですか。あれ、“ながら”じゃ絶対できないですよね(笑)。携帯を見ながらでは作れない。やっぱりああいう絶対的集中力と絶対的な気迫みたいなものは、絶対にいいものじゃないですか。特に私は役者をやっているので、その没入していく感じはあった方がいいと思うんですよね」

そういえば……心霊番組が消えたのはなぜ!?

「確かに。MEGUMIさんに本を1冊書いてもらいたいくらい、有意義なお話でした。そういえば私も1つ不都合なことを考えてきたのですが、最近テレビで心霊映像や心霊写真があまり取り扱われなくなってきたなと。結構好きなんですけど、それがちょっと寂しいなと思っているんですよ。以前MEGUMIさんが映画『事故物件 恐い間取り』に出られていたので、今日このお話をしたいと思っていたのですが」

「ありがとうございます。あの映画は、製作側もびっくりするぐらい大ヒットしたんですけど、ちょっと意外なリアクションだったんですよね。あれって、実はあんまり怖くないんですよ(笑)。ちょっと突っ込みどころがあるわけですね。なので、アミューズメントパーク的に楽しんでくれたんだなっていう。でもみんな求めてると思うんですよ」

「絶対そうなんですよ。需要と供給が合っていないんですよ。みんなそういうのを見たいのに、あんまり供給されないという。私はだいぶ昔、部屋の雨戸とかを全部締め切って、呪いのビデオを一日中見てたりしてたんですね」

「それはすごい。どうなるんですか? 怖くならないんですか」

「自分は一体何してるんだろうっていう(笑)。怖いというよりも麻痺してくるというか。でもそれがなんだか面白くて。今同じものを見たら、『これ作り物でしょう』っていう風になると思うんですね。昔だったから没入できたというか、そこが最近の不便なところなんですよね。文明が発達しすぎてて、平気でバレるじゃないですか」

「好きですけどね。霊能者とか出てこなくなりましたもんね。あの時代のスターでしたけど。エンターテインメントとして面白かったですし」

「得体の知れないものって、やっぱり大事だと思うんですよ。解明されすぎるのもどうなんだろうっていう気持ちがあるんですよね」

「すごくわかります。解明して何があるのって思います」

「知らない方がきれいに終わるものもあるのになと思うんですよね。今、検索で何でも情報が出てくるじゃないですか。だから知りすぎているのかなと思います」

「恋愛していても、今はアプリを入れて、誰が今どこにいてという情報を全部把握して付き合っている若い子もいるらしいんですよ。あれもちょっと苦しいですよね、お互い。不安だからいいところもあるじゃないですか。知らないからいいとか」

「より絆が強くなったり」

「連絡が取れないということもないし、GPSで残るからわかっちゃう。そうなると、やっぱり恋愛の歌詞とかも変わってきますよね。会いたくて震えなくなっちゃうんですね」

「確かに(笑)。今はもう震えないですよね。その人がどこで何しているかわかるので」

「その温度感の低さみたいなものはちょっと感じますよね、やっぱり」

誰でもウェルカム!枠組みを越えたプロジェクトのきっかけ

「今回の対談をお声掛けしたのも、MEGUMIさんがいろいろな人とコラボレーションする『+コラボレート』というプロジェクトを拝見したからなのですが、そもそもどのようなきっかけでスタートされたのでしょうか」

「お店をやり始めようとしていたときに、本当にいろいろなサイトをリサーチをしたんですね。カフェも喫茶店も、どんな規模のお店でもホームページが必ずあるんですけど、芸能界って超絶アナログなので、事務所のホームページはあっても個人のホームページって意外とないんですよ」

「言われてみたら、確かに」

「それが違和感で作りましょうと。だけど、お仕事情報だけ載せていても何も面白くはないので、アートがすごく好きなのもあり、世の中になかなか出ていけない方たちと一緒に作品撮りをして、このサイトでアップしていけば、本当に何かすごい場所になるんじゃないかなっていう想いから始まったんです」

「ホームページを拝見したんですけど、MGUMIさんほどのキャリアがある方が、ああいうことを書くっていうのは、目標や夢がある人からすると勇気が出るなと思いました」

「本当ですか。もう待ってますから、いつでも! お子さんからおばあちゃんまで、超自由でボーダーレスなので」

「今はSNSでのフォロワー数などでジャッジされて、お仕事が駄目になっちゃうこともあるじゃないですか。本来は、同じ人間同士で何か作るっていうのが一番シンプルで、楽しいことだと思います。素敵ですよね。それを実現するのは」

「芸能界ってオファーがないと稼働できないので、浮き沈みがあるんですね。それは地獄なんですよ。努力してても、呼ばれないと仕事がない。努力してても、誰も聞きたくないのよ私の話なんて、っていう。何か発信をしていくっていうことに、ちょっと不得意な世代だと思うんですよ。私たち30代・40代の人たちって。そういう意味でも、何か人のためになりつつ自分もモチベーションがあって、発信をするっていうことは常に心がけているところなんですよね」

「今のキャリアだったり人となりに関係なくコラボレートできるというところで、私も背中を押されました」

「ご自身も作品を発信されていますけど、ああいうのを見るとみんな癒されますよね、きっと。だって幸せだって思うときって、意外とちっちゃいことじゃないですかね。めちゃくちゃ忙しくて落ち着いて卵かけご飯食べたときとか(笑)。壮大にうれしいってあんまりないですよね。あっても5分ぐらいで終わるし。授賞式でも5時間ぐらい拍手してくださるわけじゃないので、3〜4分で終わりますし」

「自分のフォーカスする視点次第ですよね。豪華客船でシャンパンを飲んで幸せな人もいれば、別にそれだけが幸せじゃないですし。布団をきれいにカバーに入れられてるだけでも、幸せな人もいますしね」

「そうですよ! 気持ちいいわぁ〜ってなります(笑)」

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Photos: Natsuno Yokomichi Hair & Makeup: Megumi Kato Edit & Text: Yukiko Shinto

Profile

MEGUMIメグミ 岡山県倉敷市出身。2001年にデビュー後、テレビや雑誌をはじめさまざまなメディアに出演。映画やドラマ、舞台を中心に俳優としても活躍。20年、映画『台風家族』、『ひとよ』で第62回ブルーリボン賞助演女優賞受賞。主な出演作に映画『孤狼の血』(18)、『アイネクライネナハトムジーク』(19)、『AI崩壊』(20)、『事故物件 恐い間取り』(20)、『極主夫道 ザ・シネマ』(22)、ドラマ 、『AI崩壊』(20)、『アイネクライネナハトムジーク』(19)、『孤狼の血』(18)、『極主夫道 ザ・シネマ』(22)、ドラマ『おっさんずラブ-inthesky-』(19)『伝説のお母さん』(20)、『アノニマス〜警視庁“指殺人”対策室〜』(21)など多数。ウェブメディア+collaborateも運営。Instagram: @megumi1818, Twitter: @calmakids
パントビスコ Pantovisco Instagramで日々作品を発表する話題のマルチクリエイター。これまでに5冊の著書を出版し、現在は「パントビスコの不都合研究所」(Numero.jp)をはじめ雑誌やWebで7本の連載を行うほか、三越伊勢丹、花王、ソニーなどとの企業コラボやTV出演など、業種や媒体を問わず活躍の場を広げている。近著に『やさ村やさしの悩みを手放す108の言葉』(主婦の友社)。Instagram: @pantovisco

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