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#Art #NY SLEEP NO MORE(スリープ・ノーモア)

ボクはよく寝る。とにかくよく寝る。「寝る子は育つ」らしいけど、寝る四十路はどうなるんだろう。溶けて無くなったりしたら嫌だな。だいたい毎日八時間は寝ている。それでも足りないらしく、気を抜いたらまた寝てしまう。車とか電車とか飛行機とかは当たり前として、美術館で寝たときには自分でもびっくりした。

 

「気を抜いたら寝てしまう」というのは、ボクの常設の欠点らしい。いわゆる「仕様」というやつだ。映画を見ても舞台を見ても、ライブに行っても寝てしまうケースがある(目撃者多数)。「見に行く」という行為を伴うので「興味がある」という前提条件は満たしているはずなんだけど、少しでもつまらない瞬間があると寝てしまう。おもしろくなってくると何故か目が覚めるから、寝てる時間を計っておけばミシュラン的な使い方もできるかもしれない。そういう意味ではもはや「0.93秒で寝れる」という睡眠界のカリスマ「野比のび太」先生を超えたんじゃないだろうか。

 

さて、「こいつ何言ってんだ」と思い始めた頃だと思うので、そろそろ本題に入る。今回はNYで人気の『SLEEP NO MORE』という演劇のおはなし。タイトル通り、そんなボクも寝る間もなく楽しめた最高のコンテンツ。

 

『SLEEP NO MORE』を見た人は、こぞって特異な自慢をする。「私は○○回見たよ。」と。ちなみにボクは今回の滞在中に二回見た、えっへん。なぜ回数を自慢するのか?『SLEEP NO MORE』は『THE McKITTRICK HOTEL』という廃ホテルの6フロア分を舞台にして進行する。役者は各々のストーリーを展開していくので時に集合し、時に方々に散って演じる。観客は見たいシーンを探す、選ぶ、追いかける。物理的に一度では「見切れない」のだ。

 

これから見る方もおられるので、詳細には触れない。あまり下調べしない方が楽しめると思う。ボク自身、事前に仕入れた情報は「シェイクスピアの『マクベス』とヒッチコックの『レベッカ』を予習するように」と「走る」と「返り血あびる」 だった。驚くことに後半二つも的を得ていた。

 

すごくおもしろかった。ロンドンで演っていた新作も見て帰国しようとしたくらい、おもしろかった。 ロンドンに入る前の週に千秋楽だったので、結果的に叶わなかったけど。演者の演技も身体能力も素晴らしいし、美術も相当いい。しかし、やはり環境設定が、今に相応しいのだと思う。

 

ボクの会社はデジタル戦略を提供している。Webサイトも作るしアプリも作るけど、その場合も基本『販売』しているのは戦略だ。簡単に言うと「ターゲットの行動に、こういう目立った『波』があるから、この『ネタ』をぶつけましょう」と言う役割である。『波』を見つけて、それに相応しい『ネタ』を考える。それだけ。『波』の情報収集は構造化してあるから、『ネタ』を考えるのが日々の仕事。この『ネタ』がおもしろければ『あたる』し、すごくおもしろければ『大あたり』になる。理論上も経験上も『はずす』ことはあまりない。なぜかと言うと『波』に確信がある案件しかお受けしないから。

 

もちろん上記の「ターゲット」は案件ごとに変わるのだけれど、最近、総じて『波』の前提になるのは「みんな、ズボラになっている」ということ。悪い意味ではない。それで良くなっているという時代の変化の話だ。20年も遡れば、好きなブランドの情報なんて本を読み漁って『収集』するものだったけど、今はtwitterとInstagramをフォローして、たまにハッシュタグを検索するだけで情報が『集合』する。長文から欲しい情報を抜き出さなくても140文字以下に要約されているし、多くの情報は誰かが一枚の絵や写真で表現してくれている。目的を諦めてズボラをするではなく、ズボラでいながら目的が達成される時代なのだ。

 

しかし「便利になると退化する」という側面は否めない。言うなれば「ボクらはコンテンツを根気よく見るという耐性を失っている」。ライブを見ている最中に寝てしまう奴もいる。嗚呼もはや自分でも意味が分らないよ、ママン。

 

そして作る側には2択が用意されている。(1)端的でおもしろい『インスタントなコンテンツ』をつくること(2)『コンテンツを根気よく見させる仕組み』をつくること。一方でコンテンツを作る側は大概それを仕事でやっている。稼がなければ食って行けない。効率も必要。となれば多くは(1)を選択しがちだ。悲しいけれど。そんな悲壮感の中で『SLEEP NO MORE』は(2)を選びながら大成功を納めている。『演劇に興味ある人々』をちゃんと集客するだけでも厳しい時代に、『それ以外の人々』をリピートさせている。すぐ寝るおっさんも寝れない仕組みを作ることで。作る側の人間の一人として純粋に尊敬してしまう。成功している事実よりも、彼らが選んだ1/2の選択肢に対して。

 

最後にひとつだけ補足。打合せで寝ているときは「つまらない時」ではなくて「前日がんばった日」だと思ってください。お願いだから。
SLEEP NO MORE(スリープ・ノーモア)
住所 :530 W 27th Street New York, NY
Web :SleepNoMoreNYC.com

 

by NKYMN
Photography NKYMN w/OLYMPUS OM-D E-M5
このエントリーは同様の内容で『dre55ing.jp』にも掲載されています。
http://dre55ing.jp/?p=3136

 

※劇中は撮影禁止なので、館内の写真は同劇団が『THE McKITTRICK HOTEL』内で運営するレストラン『The Heath』のものになります

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NKYMN
TOKYO
digital strategist , dre55ing Inc. CEO
Twitter:@NKYMN
ファッション・ビューティー領域で活動するデジタルクリエイター。特にソーシャルメディアを活用したウェブクリエイションの評価が高く、リアルクローズ・海外メゾンブランド・雑誌社など幅広いパートナーと活動。ドレスイング代表。ソフトバンクアカデミア外部一期生。京都人。

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