
東京芸術劇場で2026年7月に上演される『NORA』は、近代劇の古典として知られるヘンリック・イプセンの『人形の家』を、現代のコミュニケーションのかたちへと大胆に置き換える注目作だ。
1879年にノルウェーで生まれた『人形の家』は、父権的な家庭で「可愛い妻」として暮らし、献身的に家族と夫を支えるノラが、自らの人生を見つめ直していく物語。先駆的なテーマで、初演から150年近く経った今も、世界各国で上演され続けている。
演出を手がけるのは、ヨーロッパで最も注目を集める演出家のひとり、ティモフェイ・クリャービン。2019年に東京芸術祭で上演された『三人姉妹』では、全編を手話で演じるというストイックかつ鮮烈な演出で、日本の観客にも強い印象を残した。古典作品を現代的な視点から読み替え、人間の内面に鋭く切り込む手腕で知られるクリャービンが、イプセンの代表作をどのように更新するのか注目だ。
その切り口として、今回はスマートフォンがキーアイテムのひとつになる。コミュニケーションの取り方が急激に変化する現代に沿うように、登場人物たちはメッセンジャーやフェイスタイムといったツールを通して言葉を交わす。舞台上で発せられる言葉だけでなく、指先で打ち込まれ、送信されるテキストから、登場人物たちの孤独や葛藤、欲望が浮かび上がっていく。
主人公であるノラを演じるのは、黒木華。一見、素朴でシンプルに感じられる表情の奥に、多くの引き出しを抱える演技で観る者を魅了してきた俳優だ。これまで多くの名優たちが演じてきたノラという役を、黒木がどのように立ち上げるのか。
また、支配的なノラの夫・ヘルメルを演じるのは勝地涼。銀行の頭取にまで上り詰めながらも、妻を人形のように扱う“残念な夫”を、どのように咀嚼していくのか期待が高まる。さらに、ノラの友人クリスティーンを瀧内公美、ノラの秘密を握り、彼女を追い詰めていくクログスタを鈴木浩介が演じる。
先進国の中でもジェンダーギャップの大きいこの国で、どのようなノラが生まれ、受け入れられるのだろうか。
舞台『NORA』
原作/ヘンリック・イプセン『人形の家』
演出/ティモフェイ・クリャービン
出演/黒木華、勝地涼、瀧内公美、鈴木浩介 ほか
主催・企画制作/東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
日程/2026年7月15日(水)〜7月26日(日)
会場/東京芸術劇場 プレイハウス
チケット料金(全席指定・税込)/S席10,500円、S席(前半割/平日夜割)9,000円、A席7,000円、U25 5,000円、U18 1,000円
問い合わせ/東京芸術劇場ボックスオフィス 0570-010-296(休館日を除く10:00〜19:00)
公式サイト/https://nora.geigeki-classics.jp
※宮城、愛知公演あり
