ブリュッセルと東京にあるふたつのエルメス財団のギャラリーの協働によるグループ展「スペクトラムスペクトラム(Spektrum Spektrum)」が、東京・銀座の銀座メゾンエルメス フォーラムにて開催中。エマニュエル・カステラン、マリー・ローランサン、津田道子ら7名が参加する。

昨年ブリュッセルにあるギャラリー ラ・ヴェリエール(La Verrière)にて開催された展覧会「Spektrum」をもとにし、新たなナラティブの構造を重ね合わせてゆく対話の中で生まれた本展。
タイトルの「スペクトラム」とは、ドイツ語表記による「スペクトル(Spectrum)」からなり、物理的な現象の分布や範囲(光学や音響に用いられるスペクトルなど)を表すと同時に、亡霊や幻視といった超自然的な存在や、また比喩的に扇子を意味するなど、広い射程とグラデーションを持つ言葉だという。
本展参加アーティストのひとり、ベルリンを拠点とするエマニュエル・カステランの拡張的個展として展開したブリュッセルから、今回は「スペクトラム」という言葉に含有される振れ幅や共鳴を鏡のような道具として用いながら、展覧会を一つの小説のように捉え、真実と虚の〈あいだ〉にとどまることのできる居場所として、密やかな室内のナラティブを生み出そうという試みだ。

本展には7名のアーティストが参加。モンタージュを思わせる切り込みのあるキャンバスに人物像を描くエマニュエル・カステランは、マルグリット・デュラスなどのヌーヴォー・ロマンに影響を受け、舞台や映画のセットのような空間を立ち上げる。セラミックを用いるヨハネス・ナ―ゲルは、鮮明な発色や、非対称、不調和、表面の粗さや滑らかさを放つ壺(器)で異なる次元を掘り出し、ヴァルター・スウェネンの絵画は、謎めいた暗号を投げかけるようである。また映像原理を用いて、時空の振れ幅を可視化させる津田道子、器やスプーンなどのオブジェの凹面に、エロティックな幻想を宿しつつ結界をももたらす川端健太郎のオブジェ、ユーモアに満ちた水の亡霊を路上にしかける題府基之の写真、そしてパステルの色彩を用い、現実を装飾へと昇華させるマリー・ローランサンが参加する。



それぞれの作品が不可避に関わり合い、映し合うなかで、スペクトラムは反復し、その姿や幻影を現わしていくようである。会期は6月29日(日)まで。
※掲載情報は4月13日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。
「スペクトラム スペクトラム(Spektrum Spektrum)」
日時/2025年3月20日(木・祝)~6月29日(日)
会場/銀座メゾンエルメス フォーラム 8・9階
住所/東京都中央区銀座5-4-1
時間/11:00~19:00※入場は18:30まで
休館/水曜
URL/www.hermes.com/jp/ja/content/maison-ginza/forum/250320/