青森の弘前れんが倉庫美術館にて、開館5周年記念展「ニュー・ユートピアーーわたしたちがつくる新しい⽣態系」が開催されている。若いアーティストたちの作品と、1万5千年をさかのぼるともいわれる津軽地方の人間の営みに連なる作品を織り交ぜながら、新しい生態系について考えようとする試み。2025年4⽉4⽇(⾦)から11⽉16⽇(⽇)まで。
展覧会タイトルにある「ユートピア」、これはイギリスの思想家トマス・モアの著作に登場する架空の国家の名前。「どこにもないところ」というギリシャ語に由来する造語で、当時のイギリス社会と対極の場所として描かれているという。

食べ物とそれを取り込む身体や、人間と動物が重なり合うような神話的なイメージを、刺繍や絵画など多様な手法を使って描き出す川内理⾹⼦。

東京の地下空間を滑走するスケーターたちや、青函トンネルによって変化した青森の風景を捉え直したSIDE COREの映像作品では、現実には存在しない巨大な地下都市やトンネルでつながる日本列島の姿が浮かび上がるように見える。
外来種を含む生き物と人間社会との関わりなどを考察する作品を手がける渡辺志桜⾥は、本展では水槽をつないで循環させることで生き物が影響しあう、あらたなシステムを作り出すインスタレーションを。

さらには弘前出身の奈良美智の新作、数年前より弘前の桜を撮り続けている蜷川実花、弘前や近郊でリサーチを重ねた佐藤朋⼦は語りを取り入れた新作。五所川原市出身の工藤麻紀子は青森の山を連想させる風景を描いた作品を展示。

それぞれの作家が、自らの身体、動植物などの他者の存在、そして土地や歴史と向き合うことで、身近な世界から広く遠い世界まで新たな関係が築かれていく。
やがて自然環境における命の循環の仕組みとしての「生態系」だけでなく、人間が作り出す都市空間の構造を含め、大小様々な生態系も見えてくる。

それぞれが異なる多様な価値観で生きる現代社会の、わたしたちの、「ニュー・ユートピア」はどのようなものだろう。私たちがつくる「生態系」とは。この地に集ったアーティストたちが描き出した、少し先の未来を一緒に感じてほしい。
開館5周年記念展「ニュー・ユートピアーーわたしたちがつくる新しい⽣態系」
期間/1期:2025年4月4日(金)〜7月7日(月)
2期:2025年7月11日(金)〜11月16日(日)
会場/弘前れんが倉庫美術館
休館日/火曜日、5月7日(水)、7月9日(水)・10日(木)、9月24日(水)
※ただし4月15日(火)・22日(火)・29日(火)、5月6日(火)、8月5日(火)、9月23日(火)は開館
開館時間/9:00〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
観覧料/一般 1,500円、大学生・専門学校生 1,000円、高校生以下無料
URL/www.hirosaki-moca.jp
※最新情報、詳細はサイトをご確認ください。