
美術作家・今村遼佑と全盲の美術作家・光島貴之による、作品展示と感覚をめぐるリサーチの記録を報告する〈感覚の点P〉展が、東京都渋谷公園通りギャラリー(渋谷)にて開催中だ。
インスタレーション、映像、絵画、テキストなど多様な手法で、生活の中のささやかな出来事を取り上げ、見る人の記憶や感覚に働きかける表現を行う今村遼佑。『Numero TOKYO』2022年7・8月合併号「小さき視点のアートたち」でも紹介したアーティストだ。
光島貴之は10歳の頃に失明し、鍼灸を生業としながら、テープやカッティングシートを用いた「さわる絵画」の他、「触覚コラージュ」、「釘シリーズ」など独自の方法で、自身の身体感覚を投影した新たな表現手法を探求してきた。
世代や制作スタイルが異なりながらも、2022年頃より対話をはじめ、共通の体験を糸口に個々の美術作家としての感覚の違いに注目して、そこから生まれる新たな表現を探ってきたふたり。野外彫刻や森の木にふれる、点訳本(点字図書)について考察する、光島の感覚をたどりながら近所を歩く、スルーネットピンポン(誰もが同じルールでプレーできるバリアフリースポーツ)など、多岐にわたるリサーチの記録を一堂に展示・報告するとともに、それぞれの作品が公開となった。
さわることのできる作品が多数展示されることも本展の大きな特徴だ。今村のインスタレーション作品『プリペアド・トイピアノ』は、鑑賞者がおもちゃのピアノにふれると、鍵盤の数と同じ32個の仕掛けが3つの展示室のどこかで動くというもの。また、光島のレリーフ状の作品『さやかに色点字 ― 中原中也の詩集より』は、釘やカッティングシートなど、手ざわりの異なる多様な素材の組み合わせにふれることで、鑑賞者は、光島の感じた世界をたどることができる。

そのほかにも共同制作した作品『触覚のテーブル』を用いたワークショップなど、ゲストを招いた参加型のプログラムも多数実施。その詳細はウェブサイトでも要チェックを。


※掲載情報は2月23日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。
今村遼佑×光島貴之 感覚をめぐるリサーチ・プロジェクト
〈感覚の点P〉展
日時/2025年2月15日(土)〜5月11日(日)
会場/東京都渋谷公園通りギャラリー
住所/東京都渋谷区神南1-19-8 渋谷区立勤労福祉会館1F
時間/11:00〜19:00
休館/月曜日(2月24日、5月5日は開館)、2月25日、5月7日
URL/inclusion-art.jp/s/anypoint-p
Text:Akane Naniwa