CFCLのクリエイティブディレクター高橋悠介が見たヨーゼフ・ボイス展
戦後ドイツ美術の第一人者、ヨーゼフ・ボイスの作品や活動を現代日本の視点で検証する展覧会「ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展」が、東京・神宮前のGYRE GALLERYにて開催中。ボイスの作品のほか、ボイスの対話相手として6名の日本人作家が出展。貴重な本展をCFCLのクリエイティブディレクター高橋悠介がレビュー。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2024年10月号掲載)
ボイスから受け継ぐ意思を展示の外側に感じる
この展覧会でいちばん面白いのは受付に置いてあるハンドアウトではないだろうか。ボイスにまつわる2つの質問に作家たちが回答している。そもそもボイスの壮大な思想を小さなホワイトキューブで体現することはできない。しかし、現代に受け継がれた意思が、既に展示の外側にあると感じることができる。ただし、アートの枠を超えたボイスの意思は、アーティストに限らず、今を生きる多くの人に受け継がれている。見る側は自分ごととして解を探してみるのが、いいかもしれない。
私は服を作ることを生業にしているが、究極的には私にとって服を作る行為は、近しいコミュニティや社会を良くしていく活動だと思っている。私がボイスを尊敬するのは、そこに共感するからだろうか。今どき、現代アートが流行ってそれっぽいものがあふれているが、私にとっては現代社会と接続し、どんなに小さなことであっても、新しい視点や可能性の気づきを与えてくれるアート以外には本質を感じない。だから、この展覧会は結構好きだ。
時に、今の時代では当たり前すぎて、パイオニアの凄さに気づかないことがあるが、ボイスは私にとって、それにあたる。「そうか、ボイスは既にやっていたんだ」と、数年に一回意識するのは、私にとって良いことかもしれない。日々生きるのに忙しくて、根源的なことを忘れがちなこのごろは、結論を急がず、じっくりと、現代社会とその未来に向き合うことが、本当は生きるのに大事なのだと思い出す、良い展覧会だった。
「ヨーゼフ・ボイス ダイアローグ展」
会期/2024年7月17日(水)〜9月24日(火)
会場/GYRE GALLERY
住所/東京都渋谷区神宮前5-10-1GYRE3F
時間/11:00〜20:00
企画/飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所所長)
展覧会出展作家/ヨーゼフ・ボイス、若江漢字、畠山直哉、磯谷博史、加茂昂、AKI INOMATA、武田萌花
URL/gyre-omotesando.com/artandgallery/josephbeuys-dialogue/
Text:Yusuke Takahashi Edit:Sayaka Ito