ゴミがドレスへと甦る! デザイナー中里唯馬に密着した映画『燃えるドレスを紡いで』 | Numero TOKYO
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ゴミがドレスへと甦る! デザイナー中里唯馬に密着した映画『燃えるドレスを紡いで』

ファッションデザイナー中里唯馬がケニアで見た衣服のゴミ山。革新的なアイデアがコレクションとして発表されるまでの裏側を監督・関根光才が捉えたドキュメンタリー映画『燃えるドレスを紡いで』が2024年3月16日より公開される。中里がオートクチュールというファッションを通じて表現する、未来へ繋がるデザインのあり方とは。

パリコレの舞台で、モリ・ハナエ以来二人目となるゲストデザイナーとして、オートクチュールコレクションを発表する中里唯馬。華やかなファッション業界の中心で、衣服と向き合ってきた彼が、衣服の辿り着く先を見たいと、アフリカ・ケニアへと向かうところから物語は始まる。

現地で目の当たりにしたのは、世界中から押し付けられた膨大な量の中古衣料と、行き場もなく廃棄された衣服のゴミの山。そこには劣悪な環境下にもかかわらずゴミを漁りながら生きる子どもたちの姿があった。一方、環境破壊による地球温暖化がもたらした深刻な干ばつの影響を受けながらも自然と共存し砂漠に暮らす人々もいる。

大量生産・大量消費の結果、環境負荷が高いと問題視されているファッション産業の皺寄せが、思いがけないところで影響を及ぼしている現実。絶望的な光景を前に中里は言葉を失う。ファッションデザイナーとしていったい何ができるのか、何をすべきか。

帰国後、もともと準備していたプランを捨て、ケニアでの体験をもとに画期的なアイデアで新たな表現に挑戦する。それは、ケニアに行き着いた大量の中古衣料を新たな衣服へと甦らせること。

エプソン社との取り組みで水を使わず、廃棄された大量の服から新たな生地を開発し、スパイバー社の人工合成タンパク質で作られた自然循環ができる再精製素材を用い、最新テクノロジーとファッションを融合させ、捨てられた服に再び価値を与える。こうして出来上がったドレスとともにパリコレの舞台へと挑む。

「私たちは、普段、息をするように、当たり前のように服を着て生活している。少しでも衣服の見えていない部分に想像力を広げてほしい。衣服はどこからやって来て、どこへ行くのか。たどり着く先を垣間見ることにより、服に対する見え方がきっと変わるはず」。映画にはそんなファッションデザイナー中里唯馬のメッセージが込められている。

『燃えるドレスを紡いで』

出演/中里唯馬
監督/関根光才
特別協力/セイコーエプソン株式会社 Spiber
2024年3月16日(土)K’s cinema、シネクイント他 全国順次公開
https://dust-to-dust.jp/

Text:Masumi Sasaki, Atsushi Nakayama

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