「記憶:リメンブランス-現代写真・映像の表現から」@東京都写真美術館
写真や映像は、人々のどのような「記憶」を捉えようとしてきたのか。 東京都写真美術館で「記憶:リメンブランス-現代写真・映像の表現から」が開催されている。2024年6月9日(日)まで。
本展では、篠山紀信の「決闘写真論」(1976年)より『誕生日』、1970年代に撮影された『家』における記憶への示唆を起点に、さらには高齢者社会や人工知能(AI)といった今日の記憶と関連するテーマまで焦点をあてていく。 日本、ベトナム、フィンランドのアーティスト7組8名による新作、日本未公開作約70点を紹介する。
「決闘写真論」は、雑誌「アサヒカメラ」において、篠山紀信が写真を、中平卓馬がテキストを寄せた連載。本展では、篠山のポートレート『誕生日』が展示として再現される。さらには1970年代に月刊誌「潮」の連載のために、石川県珠州市をはじめ日本各地で写した『家』、そして2011年の東日本大震災を取材した『ATOKATA』とも対比しながら、篠山の視点を探っていく。
60年以上にわたり写真活動を続け、本展の重要な起点となった篠山紀信だが、今年の1月4日に惜しまれながらも逝去した。本誌においても創刊以来、数々の撮影を手がけてくれた(※)。
※ 参考リンク:https://numero.jp/tag/kishinshinoyama/そして「記憶」をテーマに、写真や映像を用いた、多彩な作品が紹介されていく。
画面に映ることのない不在の存在を想起させる作品を手がける米田知子。ここでは国境線、国とは何かを問いかける。
ベトナム出身のグエン・チン・ティは、ベトナム初の原子力発電所の建設候補地を取材した映像作品『パンドゥランガからの手紙』を。
評論家としても活躍する彫刻家の小田原のどかは、同館収蔵の「上野彦馬関連資料(故梅本貞雄氏所蔵)」を取り上げ、テキストとインスタレーションを制作。新たな視点や出会いを提示する。
カメラ・オブスキュラの手法を用いる写真家マルヤ・ピリラと日本の作陶ユニットSatoko Sai + Tomoko Kurahara(崔聡子+蔵原智子)は、高齢者たちへインタビューを行い、写真や映像、陶作品によって、その記憶や内面を浮かび上がらせた「インナー・ランドスケープス、トゥルク」を展示。
画家の村山悟郎は、自ら制作した1000枚のドローイングをAIに学習させて出力した作品を制作。東京大学教授の池上高志と人工生命(Alife)研究のAlternative Machine、そしてAIから創造的な表現を試みるQosmoが制作に参加した。
写された瞬間に過去になっていく写真・映像。それが記録であっても、時間や空間が隔てられていようとも、それが他者の記憶と結びついたものであっても、感覚が揺さぶられたり、観る側の私たちの記憶と結びつけられることがある。
写真・映像の特性と向き合いながら、「記憶」について、多様なアプローチを続ける現代のアーティストたちの作品に触れてほしい。
記憶:リメンブランス-現代写真・映像の表現から
期間/2024年3月1日(金)~6月9日(日)
場所/東京都写真美術館 2階展示室
開館時間/10:00〜18:00(木・金は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日/毎週月曜日 ただし4月29日(月)、5月6日(月)は開館。5月7日(火)は休館
観覧料/一般700円、学生560円、中高生・65歳以上350円
※詳細は公式HPをご確認ください
URL/topmuseum.jp
Text:Hiromi Mikuni