「LOEWE」2023春夏 アンスリウムへのまなざしから生まれた、未来志向のリアリティ
2022年9月30日、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)による「ロエベ(LOEWE)」2023年春夏ウィメンズコレクションが開催された。パリのフランス共和国親衛隊馬術トレーニングアリーナに設置されたランウェイの中央には、精巧で巨大なアンスリウムが現れた。
会場にはカイリー・ジェンナー、ミュージシャンのアマ・ルー、インフルエンサーのエマ・チェンバレン、スケーターでフォトグラファーのエヴァン・モック、フォトグラファーのグレイ・ソレンティ、ソロアルバムが話題のThe xxのオリヴァー・シムらが訪れた。
ショーのはじまり、ファーストルックは俳優テイラー・ラッセル。アンスリウムの根元の階段から、ベルベッドのパニエドレスで登場した。彼女は、映画『WAVES/ウェイブス』はじめ、ルカ・グァダニーノ監督の最新作『Bones And All』でのティモシー・シャラメとの共演でも注目を集めている。
──研ぎ澄まし、削ぎ落とす。線と色彩、形状。衣服のリアリティへの厳密なまなざし。エロティックで精巧な、まるでデザインされたかのように見紛う自然の産物、アンスリウムの花のように。──
コレクションの着想源となった「アンスリウム」は、白や深い赤色、緑のコサージュとして、ドレスの一部として、様々な形で繰り返し現れた。
ポロニットのショートドレスは短く縮み、ニットドレスの袖は伸長し、しぼんだ風船に埋もれたパンプスが登場した。人気のバッグ「パファー ゴヤ」は変わらない遊び心を表現している。
反射する光が美しい花柄のエナメルメタルのショートドレス、膨張したラバーのパンプス。レザージャケットやハンティングジャケットは縮小されて裾が拡大。新作「パセオバッグ」は楕円形のフォルムが伸びやかさを感じさせた。
そして”時折混線する、グリッジノイズ”のように現れた、ピクセル柄のTシャツやチノ。パッド加工され、変形され、まるでスクリーン上の画像のようにも見える。さらに顔の一部を隠す胸当てのついたニット。ベーシックなアイテムに生じた新鮮な違和感は、私たちの生きる現実と、新たな感覚が混じっていくようだ。
──デザインが真っ向から主張するコレクション。それは、削ぎ落とすことで浮き彫りとなった、本質なのです。──
ジョナサン・アンダーソンが、アンスリウムの魅力から追求し、削ぎ落とし、思考し、生み出したコレクション。ライン、色、フォルム、テクスチャー、光・・・美しさの原点に向けられたまなざしの先に浮かび上がったリアリティは、柔らかく現在と混じりあい、確かな未来につながっていることを感じさせてくれた。
Loewe
ロエベ ジャパン クライアントサービス
TEL/03-6215-6116
URL/loewe.com
Text:Hiromi Mikuni