言葉がいざなう<ダンス>『わたしは幾つものナラティヴのバトルフィールド』 | Numero TOKYO
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言葉がいざなう<ダンス>『わたしは幾つものナラティヴのバトルフィールド』

©大洞博靖
©大洞博靖

昨年の3月、彩の国さいたま芸術劇場の育成・創造プロジェクト「さいたまダンス・ラボラトリVol.3公演『明日を探る身体』」で、第一部がワーク・イン・プログレスとして披露された作品が、完全版『わたしは幾つものナラティヴのバトルフィールド』として9月上演される。

昨年テキスト・演出を担当した演劇作家・小説家の岡田利規が新たに第二部、第三部を書き下ろす完成版だ。

©大洞博靖
©大洞博靖

30万人を超えるフォロワーを持つ<先生>のSNSアカウントをフォローする女性。その若い女性が<身体の声を聴きなさい>というひとつの主張について思考を巡らせることからパフォーマンスが始まる。

岡田が手掛けるテキスト・演出をダンサー・振付家の湯浅永麻が身体に取り入れて語り、踊る。

とかく難しくとらえられがちなコンテンポラリーダンスだが、この作品を通じて、岡田は、この作品は、まさに現代社会を生きる我々ひとりひとりの作品だと語る。

岡田利規 ©宇壽山貴久子
岡田利規 ©宇壽山貴久子

「さまざまなナラティヴ――人の思考を規定するための物語――が世界にあふれ、できるだけ多くの支持を得ようとバトルを繰り広げています。そしてそのバトルが繰り広げられる場所、すなわちバトルフィールドになっているのはわたしたち自身にほかなりません。(中略)身体がナラティヴのバトルフィールドであるということ。それはダンサーにだけ起きていることではむろんありません。わたしたち誰しもの日常で頻繁に熾烈に生じていることです。
このダンス作品は、ダンスと日々を生きるわたしたち――たとえダンスをしない人であっても――とも関係があるのだという当たり前のことを、しかしあらためて明らかにしたい、そのためのものでもあります」

太田信吾 ©︎bozzo
太田信吾 ©︎bozzo

前回は湯浅のソロ・パフォーマンスとなったが、今回は映画監督であり、岡田作品では俳優としても活躍する太田信吾が参加。場を翻弄する者、状況を引っかきまわす者として作品に登場する。

情報過多の現代、多くの情報が人間の身体に影響を及ぼす=振り付けられていると考えられるのではないか、と岡田は言う。だとすれば、この舞台を見ている時、私たちが見るのは自分の姿なのかもしれない。

舞台『わたしは幾つものナラティヴのバトルフィールド』
テキスト・演出/岡田利規
共同振付/岡田利規、湯浅永麻、太田信吾
出演/湯浅永麻、太田信吾

日時/2022年9月1日(木)・2日(金)19:00開演
2022年9月3日(土)・4日(日)14:00開演/18:00開演 (全6公演)
会場/彩の国さいたま芸術劇場 小ホール
チケット料金(全席指定・税込)/一般4,500円 メンバーズ4,200円 U-25* 2,500円
*公演時25歳以下対象。入場時要身分証提示。 ※未就学児の入場はご遠慮ください。

公演詳細/https://www.saf.or.jp/stages/detail/94292/
チケット取扱い・お問合せ/SAFチケットセンター
電話/0570-064-939(休館日を除く10:00~19:00)
窓口/彩の国さいたま芸術劇場(休館日を除く10:00~19:00) 埼玉会館(休館日を除く10:00~19:00)
Web/https://ticket.aserv.jp/saf/
イープラス https://eplus.jp、チケットぴあ https://t.pia.jp
主催・企画・制作/彩の国さいたま芸術劇場(公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団)

助成/Dance Reflections by Van Cleef & Arpels
文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|
独立行政法人日本芸術文化振興会

Text:Reiko Nakamura

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2024.4.26 発売

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