あくなき探求を続けるアニッシュ・カプーアの近作が公開
インド、ムンバイ生まれの現代美術作家、アニッシュ・カプーア(1954年〜)。人間の知覚および空間に直接的に働きかけ、既成概念を覆す数多くの作品を発表してきた。世界的に活躍を続ける作家の近年の作品を紹介する展示が、東京・六本木のSCAI PIRAMIDEにて開催中だ。
70年代より渡欧し、現在は英国を代表する現代美術作家として知られるアニッシュ・カプーア。“Void(虚空)”の概念を、色、光、知覚、空間といった要素との造形的実践において探求し、世界各国にて作品を発表してきた。2016年には、99.965%の光を吸収する「地上で最も黒い黒」こと「ベンタブラック(Vantablack)」の芸術的用途における権利を購入。作品にさらなる強度をもたらす姿勢を明らかにし、アートシーンでも話題となった。
(参考)世界で最も黒い、超黒染料ベンタブラックの登場
(落合陽一が解明する黒の正体「人はなぜ黒に惹かれるのか」より)
現在、イタリア・ヴェネチアにある、アカデミア美術館とパラッツォ・マンフリンの二会場で大規模回顧展を開催しているカプーア。ヴェネチアの展覧会では作家のキャリアを総括する重要な作品とともに、ベンタブラックを使用した新プロジェクトが初公開中だ。SCAI PIRAMIDEにて開催中の本展では、ヴェネチアでの展覧会に合わせ、新作を含む構成でカプーア作品の魅力と芸術的実践の成果を改めて見通すものとなっている。
会場では、鏡面に映る自分の姿が反射したり、予想もつかない風景が映り込んだりする、驚きに満ちた鑑賞体験へと誘う『Oriental Blue』や、妊婦のお腹の膨らみのようにも見え、得体のしれないものが闇の中から生まれ出るような不穏を連想させる『Untitled』など、カプーア独特の作品形式の一つを感じられる彫刻作品が公開。
さらに別室は、カプーアがかねてより言及する“Void”空間の構成を示唆する展示室となっている。1990年のヴェネチア・ビエンナーレで発表され、翌年ターナー賞を受賞した“Void”彫刻は、すでにひとつの到着点を示していたとも言える。ところがカプーアのあくなき探求は、空間への直接的な展開を伴い、さらに新たな地平を示しているようだ。
カプーアの現在地を見渡し、近年の成果を紹介する本展。SCAI PARKとGYRE Galleryで開催中のグループ展でも、カプーアの作品を見ることができるので、こちらも合わせてチェックしたいところ。
(参考)未来のためにアートに何ができるのか?「世界の終わりと環境世界」展 @GYRE GALLERY
誰もたどり着いたことのない次元へと加速し続ける作家の思考と実践の集大成をご覧あれ。
※掲載情報は5月16日時点のものです。
開館日や時間など最新情報は公式サイトをチェックしてください。
「Anish Kapoor: Selected works 2015-2022」
会期/2022年5月7日(土)〜7月9日(土)
会場/SCAI PIRAMIDE
住所/東京都港区六本木6-6-9ピラミデビル3F
時間/12:00〜18:00
休廊/日・月、祝日
TEL/03-6447-4817
URL/www.scaithebathhouse.com/ja
Text:Akane Naniwa