山口藍「山あいの歌」 @ミヅマアートギャラリー | Numero TOKYO
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山口藍「山あいの歌」 @ミヅマアートギャラリー

山口藍 『せつが恵とき』 (2022年) 撮影:宮島径 ©︎ ai yamaguchi・ninyu works Courtesy of Mizuma Art Gallery
山口藍 『せつが恵とき』 (2022年) 撮影:宮島径 ©︎ ai yamaguchi・ninyu works Courtesy of Mizuma Art Gallery

美術作家・山口藍による個展「山あいの歌」が、東京・市ヶ谷のミヅマアートギャラリーにて開催中。会期は、2022年3月9日(水)〜4月9日(土)まで。

山口藍 『すその雪』 (2022年) 撮影:宮島径 ©︎ ai yamaguchi・ninyu works Courtesy of Mizuma Art Gallery
山口藍 『すその雪』 (2022年) 撮影:宮島径 ©︎ ai yamaguchi・ninyu works Courtesy of Mizuma Art Gallery

日本の文化や慣習を新たに解釈し、絵を描く山口藍。近年の作品の多くは、古今和歌集などを題材にしたり、和歌の一部をタイトルに冠したりと、言葉の響きや形に呼応しながら深化を遂げてきた。作品に登場する女の子の姿は折々の季節や風景などに見立てられ、その美しい存在は鑑賞者に豊かな想像力を喚起させる。

山口藍 『わからない人』 (2022年) 撮影:宮島径 ©︎ ai yamaguchi・ninyu works Courtesy of Mizuma Art Gallery
山口藍 『わからない人』 (2022年) 撮影:宮島径 ©︎ ai yamaguchi・ninyu works Courtesy of Mizuma Art Gallery

古い杉戸に描かれた新作『せつが恵とき』は、「雪(山口の愛猫)が絵解き」の意で、北斎の「姥がゑとき」から名づけられた。百人一首に詠まれた歌意を、乳母がわかりやすく子どもに説明するという趣旨で制作されたというが、北斎ならではの難解な絵図が版元の意向に沿わず途中で断念したとされる、北斎晩年期の錦絵の連作である。

杉戸の端には女の子が猫と共に横たわり、静かな余韻を感じさせる画面には百人一首に編まれた全首が描かれている。そして、和歌の筆の運びが着物の襞(ひだ)や柄へとつながり、女の子の髪の毛が文字へと流れていく。

山口藍 『里の山』 (2022年) 撮影:宮島径 ©︎ ai yamaguchi・ninyu works Courtesy of Mizuma Art Gallery
山口藍 『里の山』 (2022年) 撮影:宮島径 ©︎ ai yamaguchi・ninyu works Courtesy of Mizuma Art Gallery

本展のタイトル「山あいの歌」は、作家自身の姓である「山口」の起源を探ったことから導かれている。漢字研究で知られる白川静の字典から、「山口」は「サンコウ」と読み、「山間(ヤマアイ)」という意味だということにたどり着いた彼女は、山間にある人の営みやそこに流れる川によってもたらされる豊かさを想像し、作品を制作。杉戸やキャンバス、陶器などを用いた新作によって、会場の空間全体で「山間」の景色を表現したという。

山間に流れる川のように配置された作品の一つひとつが、美しく共鳴し合い、歌となり響き渡るような本展。この機会に、ぜひ体感してみたい。

※掲載情報は3月13日時点のものです。
開館日時など最新情報は公式サイトをご確認ください。

山口藍「山あいの歌」
会期/2022年3月9日(水)〜4月9日(土)
会場/ミヅマアートギャラリー
住所/東京都新宿区市谷田町3-13神楽ビル2F
開館時間/12:00〜18:00
休館日/日・月・祝
URL/https://mizuma-art.co.jp/exhibitions/2203_yamaguchiai/

Text : Akiko Kinoshita

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