会期延長!「マーク・マンダース ーマーク・マンダースの不在」@東京都現代美術館 レビュー
「建物としての自画像」という構想に沿って、一貫した制作を続けているオランダ生まれの作家、マーク・マンダース。東京都現代美術館にて開催中の個展「マーク・マンダース ーマーク・マンダースの不在」を「ARTalk(アートーク)」代表の新井まるがレポートする。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2021年6月号掲載)
探偵気分でタイムトラベル
展示室に足を踏み入れると、そこは作家のアトリエのよう。今まさに作り手が中座したかのように、制作は進行中、周囲に粘土も散らばっている。マンダースの作品には、小説でいう行間のような余白がある。展覧会全体に複数のメタファーがちりばめられ、それを鑑賞者自身が自由にひもといていくような仕組みで、なんだか探偵になった気分だ。
作品を注意深く観察していると、いろんな気づきがあるのが面白い。例えば、ひび割れた塑像のように見える作品たちは、実はブロンズで出来ていて、木に見える板やロープまでブロンズだ!でも、本当に木を使ったものも……? 他にも、《ドローイングの廊下》はまるで作家の頭の中を覗いているようだし、真鍮と釘の作品《短く悲しい思考》はマンダースの目の高さに設置されていて、見つめ返されているように感じたり。そんなふうに探偵気分で推理すれば、未完だと思っていた彫刻は崩壊に向かっているようにも思えてきて、時空を超えたどこかへ来てしまったような感覚に。古代ギリシアのアルカイックスマイルの引用やブランクーシ作品の再解釈などのようにも見える、歴史的要素を含む作品たちはまるで「タイムトラベル」だ。
「不在」がテーマだけれど、逆に強く作家の存在を感じる。「趣味は家具作りで、休日はほとんどそうやって過ごす」というマンダースのほっこりエピソードを知ると、謎がまた違って見えてくるのかも。一度では解ききれないので、また再調査に訪れたい。
「マーク・マンダース ーマーク・マンダースの不在」
会期/2021年3月20日(土)〜6月22日(火) ※会期延長
会場/東京都現代美術館
住所/東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
開館時間/10:00〜18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日/6月1日〜22日は休館日なし
TEL/050-5541-8600(ハローダイヤル)
URL/www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mark-manders/
6月1日~22日は完全予約制(日にち指定)
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Text:Maru Arai Edit:Sayaka Ito