「中村壱太郎×尾上右近　ART歌舞伎」再配信＆「ART歌舞伎 Music Live 2020 in Kyoto」

中村壱太郎、尾上右近らが7月に配信した「ART歌舞伎」の再配信が決まった。今回は、再配信前に京都・御寺泉涌寺の「舎利殿」から、プロジェクトに参加した音楽家たちの生配信LIVE、そして「ART歌舞伎」の新作「ART道成寺」も披露される。

2020年は歌舞伎俳優にとって、文字通り試される年になった。1年後2年後まで公演予定が詰まっている俳優もいる中で、ある日突然、スケジュールが白紙になったのだから。

歌舞伎の公演が無くなってしばらくは、公演予定だった演目の舞台リハーサルやメイク・小道具の裏側を見せたり、とファンの心をくすぐるような工夫をこらし、徐々にZOOMでの歌舞伎配信、劇場での無観客配信上演などを経て、今は観客数を制限しての上演にようやくこぎ着けた。だが、実際に劇場に足を運ぶ観客数が圧倒的に少ない中、舞台で観られない人向けのチャレンジは今も続いている。

今回の「ART歌舞伎」も、きっかけは歌舞伎役者の中村壱太郎がこうした中で何か出来ないか、と考えたのが始まりだ。しかし、このコロナ禍で衣装や下座音楽など“いつもの”スタッフを揃えられなかったことが、逆にエネルギッシュな新しい芸術を生むことになった。「舞台で見られないから」という代替感がゼロの、掛け値なしに心を動かされる映像作品にできあがっている。

幕開け、歌舞伎役者・日本舞踊家と津軽三味線や太鼓、琵琶、筝、笛などの邦楽器奏者とのスピーディーなコラボレーションは初めて歌舞伎を見るものも圧巻の迫力だ。ともすると歌舞伎や日本舞踊は「なんであんなスローなんだろう」と思われがちなのだが、今回の配信映像を見ると、その動きが鍛え抜かれた肉体のなせる技だとわかるだろう。ゆっくり動くことこそ、筋力を必要とする。いま、自分達が酔いしれる歌舞伎の世界があるのは、一見優雅に見える歌舞伎役者・舞踊家たちのたゆまぬ鍛練の積み重ねだと実感するのだ。試しにどこのシーンでも適当なところで一時停止して見て欲しい。バレエなどどんな舞踊・演劇も第一人者がみんなそうであるように、恐ろしい精度でどのポーズも絵になっているはずだ。その後の演目も、モード感の強い衣装やメイクが、不思議と違和感なく溶け込んだ初めて見る世界に息をのむばかりだ。

今回の注目は演者ばかりではない。歌舞伎の音楽は、言うまでもなく役者やその場面が引き立つように、調和するように作られているが、今回は役者の力が少しでもゆるめば、負けてしまうパワーを持った音楽がぶつけられている。役者・舞踊家と演奏家、両者の緊張感と力感、それをとらえるカメラワーク、すべてが絶妙なバランスで構成されているのだ。

思えば歌舞伎は江戸幕府の度重なる規制や、第二次世界大戦後のGHQによる歌舞伎の上演禁止などさまざまな困難を掻い潜ってきた。このコロナ禍でも簡単にコケるわけにはいかないのである。

若い歌舞伎役者、舞踊家、邦楽器の演奏家たちが、“いつも”を失った中から生み出した新しいアートをぜひ、体感してみてほしい。

無観客ライブ生配信「ART歌舞伎 Music Live 2020 in Kyoto

日程／2020年12月20日（日）17:00配信スタート
京都・御寺泉涌寺「舎利殿」より生配信
出演／浅野祥（津軽三味線）、藤舎推峰（笛）、中井智弥（箏・二十五絃箏）、山部泰嗣（太鼓）
スペシャルゲスト／中村壱太郎（「ART道成寺」立方）
文化庁委託事業「文化芸術収益力強化事業」

配信メディア／PIA LIVE STREAM
視聴券／￥1,000（税込）
発売日／2020年12月4日（金）20:00～
チケット購入ページURL：
PIA LIVE STREAM 　https://w.pia.jp/t/artkabuki-musiclive/
※配信公演終了後、見逃し配信として12月21日23:59までご視聴いただけます

リピート配信「中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎」

日程／2020年12月20日（日）19:00配信スタート
配信メディア／PIA LIVE STREAM、Streaming+
視聴券／￥3,000（税込）
発売日／2020年12月1日（火）20:00
チケット購入ページ：
PIA LIVE STREAM　https://w.pia.jp/t/artkabuki/
Streaming+　https://eplus.jp/artkabuki-stp-archive12/

※配信公演終了後、見逃し配信として12月21日23:59までご視聴いただけます