懐かしくも新しい絵画の世界「ピーター・ドイグ展」 | Numero TOKYO
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懐かしくも新しい絵画の世界「ピーター・ドイグ展」

《ペリカン(スタッグ)》2003年 個人蔵マイケル ヴェルナー ギャラリー、ニューヨーク/ロンドン蔵 ©Peter Doig. Private Collection, courtesy Michael Werner Gallery, New York and London. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120
《ペリカン(スタッグ)》2003年 個人蔵マイケル ヴェルナー ギャラリー、ニューヨーク/ロンドン蔵 ©Peter Doig. Private Collection, courtesy Michael Werner Gallery, New York and London. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

ロマンティックかつミステリアスな風景を描く画家、ピーター・ドイグの初期作から最新作までを紹介する待望の日本初個展(6月12日より再開)を、アーティストで編集者の山瀬まみが紹介する。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年5月号掲載)


《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》 2000-02年、シカゴ美術館 ©Peter Doig. The Art Institute of Chicago, Gift of Nancy Lauter McDougal and Alfred L. McDougal, 2003. 433. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120
《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》 2000-02年、シカゴ美術館 ©Peter Doig. The Art Institute of Chicago, Gift of Nancy Lauter McDougal and Alfred L. McDougal, 2003. 433. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

ドイグの描く具体的な抽象世界

ピーター・ドイグを知ったのは、私がロンドンに住んでいるときでした。当時はまだダミアン・ハーストやトレイシー・エミンなどYBAs(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)の雰囲気が色濃く、特に“彫刻”と“絵画”という境界がアート界で薄れていたように思います。そんな中、展示でも繰り返し説明されていましたが、絵画をあらためて興味深いものにしてくれたのがドイグでした。その影響は私が通っていたチェルシー芸術大学(そう、ドイグが修士を取得した!)でもしっかりと残っていたように思います。専攻していたファインアートでは写真を撮っている子もいれば、一日中何もせず、公表会にはテキストが書かれた紙を持ってくる子がいたり、表現方法はみんなバラバラ。それでも、やはり(私も含め)ペインターはいて、色や構図、そして何よりこの時代に“絵画をやる”というモチベーションに彼の存在は大きかったのです。

《ラペイルーズの壁》 2004年、ニューヨーク近代美術館 ©Peter Doig. Museum of Modern Art, New York. Gift of Anna Marie and Robert F. Shapiro in honor of Kynaston McShine, 2004. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120
《ラペイルーズの壁》 2004年、ニューヨーク近代美術館 ©Peter Doig. Museum of Modern Art, New York. Gift of Anna Marie and Robert F. Shapiro in honor of Kynaston McShine, 2004. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

3部構成の本展で特に心が惹かれたのは、ドイグが幼少期を過ごしていた島国トリニダード・トバゴに移住した前後の作品が多い第2章でした。前半期に比べてすこし軽快な筆遣い、独特なモチーフと構図は一段と洗練されていて、一枚の絵の中に具象と神秘的な抽象部分が混じり合い、どこか怪しい南国の雰囲気とともに行ったことのない場所を見せてくれます。

《ストレンジャー・ザン・パラダイス》(「スタジオフィルムクラブ」より) 2011年、マイケル ヴェルナー ギャラリー、ニューヨーク/ロンドン ©Peter Doig. Courtesy Michael Werner Gallery, New York and London. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120
《ストレンジャー・ザン・パラダイス》(「スタジオフィルムクラブ」より) 2011年、マイケル ヴェルナー ギャラリー、ニューヨーク/ロンドン ©Peter Doig. Courtesy Michael Werner Gallery, New York and London. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

第3章の映画クラブポスターも新鮮で興奮しましたが、兎にも角にも、彼の作品がこんなに見られるまたとない機会/企画に大興奮なのです。

《ブロッター》 1993年、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー ©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120
《ブロッター》 1993年、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー ©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

《スキージャケット》 1994年、テート ©Peter Doig. Tate. Purchased with assistance from Evelyn, Lady Downshire’s Trust Fund 1995. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120
《スキージャケット》 1994年、テート ©Peter Doig. Tate. Purchased with assistance from Evelyn, Lady Downshire’s Trust Fund 1995. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

《夜の水浴者たち》 2019年、作家蔵 ©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120
《夜の水浴者たち》 2019年、作家蔵 ©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

「ピーター・ドイグ展」

会場/東京国立近代美術館
会期/6月12日(金)再開〜10月11日(日)まで
休館日/月曜日[ただし8月10日、9月21日は開館]、8月11日(火)、9月23日(水)

※日時指定チケットの導入についてなど、最新の開催情報は、展覧会公式サイトをご確認ください。

Text:Mayumi Yamase Edit:Sayaka Ito

Profile

山瀬まゆみMayumi Yamase アーティスト、編集者。東京都生まれ。ロンドン芸術大学、チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ&デザインにてファインアート学科を専攻。現在は東京を拠点に展示や企業とのコラボレーションを行う傍、さまざまな媒体で編集者としても活躍。

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