クリエイティブディレクター・小池一子が語る「大竹伸朗 ビル景 1978- 2019」 | Numero TOKYO
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クリエイティブディレクター・小池一子が語る「大竹伸朗 ビル景 1978- 2019」

《時憶/Bldg.》(中央の立体作品) 「大竹伸朗 ビル景  1978-2019」展示風景 © Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa 撮影:岡野圭 画像提供:水戸芸術館現代美術センター
《時憶/Bldg.》(中央の立体作品) 「大竹伸朗 ビル景  1978-2019」展示風景 © Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa 撮影:岡野圭 画像提供:水戸芸術館現代美術センター

1980年代初めのデビュー以降、現代美術の世界だけでなく、文字やデザインなど、幅広いジャンルに影響を与えてきた大竹伸朗。なかでも絵画シリーズ「ビル景」に焦点を当てた個展が水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催中。彼の活動を長い間追ってきたクリエイティブディレクターの小池一子がその見どころを語る。(「ヌメロ・トウキョウ」2019年10月号掲載)

「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」展示風景 ©Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa 撮影:岡野圭 画像提供:水戸芸術館現代美術センター
「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」展示風景 ©Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa 撮影:岡野圭 画像提供:水戸芸術館現代美術センター

つくり続ける男の凄さ

大竹伸朗を世界の美術愛好家が知っているのは、ヴェネツィア・ビエンナーレのような国際芸術展で「大型のスクラップブック」に圧倒されたなどの理由によるだろう。私は幸運にも彼が1970年代に最初のロンドン滞在から持ち帰ったスクラップブックを見せてもらったのだがそれ以来、重なり、連続し、収拾するページたちの強い印象から抜けだせないでいる。 ああ、だけど知らなかった。大竹さんは同じ頃にもう一つの、長期にわたる主題、「ビルディング」の発想を孕んでいたことを。

《白壁のビル2》 2017年 (c) Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo, Photo by Kei Okano
《白壁のビル2》 2017年 (c) Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo, Photo by Kei Okano

水戸芸術館の「ビル景」展は久々の関東での大個展なので、オープニングにあたってのトークには大勢の聴衆がつめかけていた。そこで彼が言ったのである。「40年、作ることをやってきて、その間にいつも出てきて続いているのがビルとスクラップブックなんだよね」と。そうか、大竹さんが40年続けていて世界にまだ知られていない「ビル景」を私たちは水戸でたっぷり見ることができるのだ。

《放棄地帯》 2019年 ©Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo, Photo by Kei Okano
《放棄地帯》 2019年 ©Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo, Photo by Kei Okano

展示は芸術館の8室を使いきり、どの部屋にも「ビル景」は充ち満ちているのだが、各室の構成に特徴的なのは色彩への配慮。大竹さんが色の魔術師であることをあらためて知らされる展観でもある。ビルはビルなのだが、私たちが圧倒されるのは作品に閉じ込められた「湿気、熱波、匂いやノイズ」と大竹さん自身が書いているとおりの人間世界の有り様である。デビュー以降、絵画を中心に印刷、写真、映像、そして音を最もコンテンポラリーに表現してきた大竹さんの主題を合体させた作品誕生が本展の華である。《時憶/Bldg.》それは展示室3にある

「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」展示風景 ©Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa 撮影:岡野圭 画像提供:水戸芸術館現代美術センター
「大竹伸朗 ビル景 1978-2019」展示風景 ©Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa 撮影:岡野圭 画像提供:水戸芸術館現代美術センター

「大竹伸朗 ビル景 1978- 2019」

会場/水戸芸術館現代美術ギャラリー
会期/2019年7月13日(土)~10月6日(日)
住所/茨城県水戸市五軒町1-6-8
開館時間/9:30~18:00(入場は 17:30 まで)
休館日/月曜日 ※ただし9月23日(月・祝/振)は開館、9月24日(火)は休館
入場料/一般900円、団体(20 名以上)700円
TEL/029-227-8111
URL/https://www.arttowermito.or.jp/

 

Text:Kazuko Koike Edit:Sayaka Ito

Profile

小池一子Kazuko Koike クリエイティブディレクター、十和田市現代美術館館長。1983年、オルタナティブ・スペース「佐賀町エキジビット・スペース」を創設・主宰し(~2000年)、多くの現代美術作家を国内外に紹介した。1980年「無印良品」創設以来アドバイザリー・ボード。武蔵野美術大学名誉教授。

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