人と生き物が紡ぎ出す世界―AKI INOMATA展 @ 十和田市現代美術館
他種の生き物たちを、畏敬の念を持って日々観察し、彼らを知り、コミュニケーションを試みることで、人間との関係性を再考する――。“生き物との共作”で注目を集める女性アーティスト、AKI INOMATA。日本の美術館では初となる個展が、2019年9月14日(土)より十和田市現代美術館で開幕する。(「ヌメロ・トウキョウ」2019年10月号掲載)
私たちはずっと、人間以外の生き物とともに生きてきた。草木が生み出す酸素を呼吸し、蚕(かいこ)の糸や羊の毛の衣服を着て、菌が醸したパンやチーズを食べる。野山の草花の移ろいに心癒やされ、鳥や虫の声に思いを巡らす。薄れゆくその感覚とともに私たちは、いったい何を失ってきたのだろう。
AKI INOMATAの作品は、その多くが“生き物との共作”によるものだ。世界の都市や建物を模した殻を3Dプリンターで制作し、やどかりに提供する『やどかりに「やど」をわたしてみる』シリーズ。
女性の服の布地をミノムシに纏わせる『girl,girl,girl,,,』。
東北沿岸部のアサリの殻に刻まれた成長線から、彼らが感じたであろう東日本大震災の影響を音や写真で表現する『Lines―⾙の成⻑線を聴く』。
それらは生き物から見た世界を通して、国や土地の線引きが引き起こす移民・難民問題や、女性が美しく着飾る意味など、私たち自身の姿を浮き彫りにする試み。
展覧会タイトル「Significant Otherness(重要な他者性)」は、人と犬など、人間と他の生物との関係を問う科学史家ダナ・ハラウェイの概念から着想を得たもの。自然に抱かれた十和田の地、生命の息吹に満ちたアート体験が、あなたの来訪を待っている。
「AKI INOMATA : Significant Otherness(シグニフィカント・アザネス)生きものと私が出会うとき」
美術館での生体展示は難しいなか、生きたやどかりの展示を実現。十和田ゆかりの南部馬がテーマの新作も公開される。
会期/2019年9月14日(土)〜2020年1月13日(月・祝)
場所/十和田市現代美術館
住所/青森県十和田市西二番町10-9
TEL/0176-20-1127
URL/www.towadaartcenter.com
Edit & Text : Keita Fukasawa