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Culture Art

終了間近! 東京都写真美術館で開催中の『夢のかけら』展

ジャック・アンリ・ラルティーグ 《デスピオ、アンダイ》 1927年 ゼラチン・シルバー・プリント
ジャック・アンリ・ラルティーグ 《デスピオ、アンダイ》 1927年 ゼラチン・シルバー・プリント

今週末まで東京都写真美術館にて『夢のかけら』展が開催中。「作品」という名の夢のかけらを手がかりに、自由で、新鮮な驚きのある作品体験へ。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年11月号掲載)

ロベール・ドアノー 〈ヴィトリーヌ、ギャルリー・ロミ、パリ〉より 1948年 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact
ロベール・ドアノー 〈ヴィトリーヌ、ギャルリー・ロミ、パリ〉より 1948年 ゼラチン・シルバー・プリント ©Atelier Robert Doisneau/Contact

写真家たちの「遊び心」を読む

 19世紀に女性写真家ジュリア・マーガレット・キャメロンが撮影したポートレートから、1970年代に篠山紀信がドキュメンタリータッチで撮った〈家〉シリーズなどもあり、果ては21世紀の川内倫子によるスナップショットまで。文字どおり、古今東西の写真表現を会場にぎっしり詰め込んだのが、東京都写真美術館「夢のかけら」展だ。

山田 實 《手をつないで 糸満漁港》 1960年 ゼラチン・シルバー・プリント
山田 實 《手をつないで 糸満漁港》 1960年 ゼラチン・シルバー・プリント

これだけ脈絡なしに作品が並んでいると、被写体やテーマなんかからは離れて、それぞれの写真家の「まなざしの質」が比較できておもしろい。違いがはっきり出るのは、撮る側の遊び心のある・なしだ。

数十人に及ぶ出品作家のうち、群を抜いて遊び心に富んでいるのは、フランス人写真家ジャック・アンリ・ラルティーグ。ボールめがけて男性が宙を舞う《デスピオ、アンダイ》の、そこはかとなく漂うおかしみを見よ。裕福な家系に暮らし、道楽として写真を撮り続けたという環境の成せる業か、画面にはゆとりとユーモア、生を肯定する明るさがあふれる。

瑛九 《家・窓・人》 〈フォトデッサン〉より 1950年 ゼラチン・シルバー・プリント
瑛九 《家・窓・人》 〈フォトデッサン〉より 1950年 ゼラチン・シルバー・プリント

日本人なら、長野重一の遊び心が際立つ。「遠い視線」シリーズは1980年代東京の、何の変哲もない光景を切り取ったもの。地上げされた土地とかディスコのお立ち台だとか、バブル狂騒を表す定番イメージがまるっきり無視されているのがいい。いつの時代とも知れぬ、誰にとっても原風景となり得るような写真がただそこにある。

長野 重一《中央区 日本橋蛎殻町》〈遠い視線〉より 1985年 ゼラチン・シルバー・プリント
長野 重一《中央区 日本橋蛎殻町》〈遠い視線〉より 1985年 ゼラチン・シルバー・プリント

それを眺める僕は知らず画面に没入し、時間を忘れいつまでも中で遊んでいた。長野の術中に、まんまとはまったのだった。

ハロルド・ユージン・エジャートン 《ミルクの中に落としたクランベリージュース》 1960年 ダイ・トランスファー・プリント ©2010 MIT. Courtesy of MIT Museum
ハロルド・ユージン・エジャートン 《ミルクの中に落としたクランベリージュース》 1960年 ダイ・トランスファー・プリント ©2010 MIT. Courtesy of MIT Museum

木村 伊兵衛《秋田市追分・板塀》1953年 ゼラチン・シルバー・プリント
木村 伊兵衛《秋田市追分・板塀》1953年 ゼラチン・シルバー・プリント

『TOPコレクション たのしむ、まなぶ 夢のかけら』

会期/2018年8月11日(土・祝)〜11月4日(日)
会場/東京都写真美術館
住所/東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
開館時間/10:00〜18:00
※木・金は20:00まで
※入室は閉館の30分前まで
休館日/月曜日
URL/http://topmuseum.jp/
問い合わせ/03-3280-0099

Profile

山内宏泰(Hiroyasu Yamauchi)ライター。著書に『写真のプロフェッショナル』(パイインターナショナル)、『文学とワイン』(青幻舎)、『大人の教養としてのアート入門』(スマート新書)など。「写真を読む夜」「文学ワイン会」などのイベントも主宰。twitterアカウント @reading_photo

Text:Hiroyasu Yamauchi Edit:Sayaka Ito

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