歌舞伎町、ホストクラブの並びに本屋が出現!
新宿・歌舞伎町のど真ん中に本屋がオープンした。その名も「歌舞伎町ブックセンター」。いったいどんな本屋なのだろう?その全貌を知るべく、歌舞伎町へ。
撮影協力:ホストの皆さん(左から時計まわりに)蘭、風早涼太(APiTS)、颯(OPUST)、凰華麗(APiTS)、宮本武蔵(OPUST)
歌舞伎町の、通常はバーとして営業する「JIMUSHONO1KAI」の一角に登場した書店「歌舞伎町ブックセンター」。“LOVE”をテーマに常時約400冊を揃えるという。この風変わりな書店の仕掛人は、新宿でホストクラブ5軒、バー3軒のほか、ヘアサロンやネイルサロンなども展開するスマッパグループの会長・手塚マキさん。
手塚さん曰く、「歌舞伎町は良くも悪くも愛にまみれている街。ここで働いている人は、愛のプロフェッショナルと思われているけれど、実際、ホストやキャバ嬢に愛のプロはいないと思う。逆に、愛の迷路になってるのが歌舞伎町」。だから、テーマは「LOVE」。愛といっても恋愛に限らず、幅広い愛を扱っている。
ブックセレクター柳下恭平さん(左)とオーナー手塚マキさん(右)
本のセレクトは、神楽坂の「かもめブックス」、文章の校正・校閲会社「鴎来堂」のオーナー柳下恭平さんが担当した。
「『ホストクラブに来る方には、いろいろな理由があるけれども、リピートする目的は、何かしらの愛を探しに来る』という手塚さんの言葉が印象的で、書店のテーマを愛にしたいと言われた時に、その愛はいろんなものを内包すると思ったんです。たとえば、山田うどん(埼玉を中心に関東で展開するうどんチェーン)への愛を綴った本もあるんですよ。案外、歌舞伎町には地方出身者が集まっているんじゃないかと思って。ここには時代小説も漫画も写真集もあるし、数学の本もあります。歌舞伎町は多様性の街だから、差異や違和を許容する。混沌があったほうが歌舞伎町らしい」(柳下さん)
さらに、“地元”歌舞伎町にゆかりある人の本にもこだわる。
「菊地成孔さんの本を一番売りたいなと思ってるんです。以前、歌舞伎町に拠点を持っていて、今も新宿在住で、よく新宿のデニーズにいらっしゃるということだから、ふらっと通った時に“あっ俺の本だ”って思ってもらえたら」と、『スペインの宇宙食』『歌舞伎町のミッドナイト・フトボール』と、新宿感の色濃い初期の2冊揃えた。
一方、手塚さんは、普段あまり本を読まないホストにも本を読んでほしいという思いがある。
「本を読むこと自体は、今の仕事にもつながるはず。お客さんが悲しい時に一緒に悲しめる。そういう感情の共有とか、感性のマネジメントの上で本を読むことは重要だと思います。想像したことのない感情も、映画や本に感情移入したことがあるかないかで変わってくるんじゃないでしょうか」(手塚さん)
3つの棚には、ピンク、赤、黒と、色の異なる帯の付いた本が並んでいる。テーマの「LOVE」を、言葉でなく色で分類した。黒はタブー、闇、不倫、愛憎、夜といったイメージ。赤はストレートな情熱、昼のイメージ。ピンクはふんわり初々しい愛や恋から、官能的、エロまで。同じ作家でも、作品の特徴によって別の棚に入っていることがあるという。
「サン・デグジュペリの『星の王子さま』はピンクなんですが、彼が死んでから出た、20歳年下の女の子にラブレターを送り続けるという書簡集『名の明かされない女性への手紙―恋をした星の王子さま』は黒に入れているんです。村上春樹の三部作でも、『風の歌を聴け』はピンク、『1973年のピンボール』は赤、『羊を巡る冒険』は黒に入れています」(柳下さん)
柳下恭平さんオススメの「LOVE」な本3冊
ピンクなLOVE
『LOVE理論』(水野敬也/文響社)
「これを読んで本当に結婚した人もいるほど。本来は男性のために書かれているが、女性が読んでも実践的」
赤いLOVE
『ストーナー』(ジョン・ウィリアムズ・著、東江一紀・訳/作品社)
「1950年代の小説で、大学教授が生まれてから死ぬまでの話。起伏がないようで、愛について描かれている」
黒いLOVE
『LOVE DOLL×SHINOYAMA KISHIN』(篠山紀信/小学館)
「愛の対象とは何か、自分と相手の関係性について考えさせられる。性的な欲望なのか愛なのか、わからなくなってくる」
ホスト(写真に写っている方々ではありません!)が“書店ソムリエ”として店に立ち、本をおすすめしてくれるという、この街ならではの新しいスタイルの「歌舞伎町ブックセンター」。ここに来れば、愛の手掛かりとなる1冊が見つかるかもしれない。
歌舞伎町ブックセンター
住所/東京都新宿区歌舞伎町2-28-14
時間/11:30〜17:30
定休/無休
TEL/03-6380-2259
URL/www.facebook.com/KabukichoBookCenter/
Photos&Text:Koyuki Awai
Edit:Masumi Sasaki
Special Thanks:Rei Ouka, Ryota Kazehaya, Ran (Apits) ,Musashi Miyamoto, Kakeru (Opust)