WOW : arts #08『Motion Texture』 ──1回性の映像体験 | Numero TOKYO
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WOW : arts #08『Motion Texture』 ──1回性の映像体験

まさに鮮烈。日本発、映像から空間、伝統工芸から仮想現実までを操る先鋭的創造集団「WOW」。その地平をさらに進化させるべく発足した「ART」部門へ、新たにラインナップされた作品をご紹介しよう。

Motion Texture from WOW inc on Vimeo.
WOWオリジナルのインスタレーション作品『Motion Texture』(2006年)

WOW独自のアート表現の源流をたどる上で欠かすことのできない、領域横断型の初期プロジェクト。環境として“存在する映像”をコンセプトに、鑑賞者が床に投影された映像の中へ足を踏み入れると、映像が水のように有機的な反応を見せる。また、同タイトルで制作されたモーショングラフィックのDVDでは、他に先駆けて制作過程にアルゴリズムやシミュレーションを導入した。

思想家のヴァルター・ベンヤミンは自身の論考「複製技術時代の芸術作品」の中で、写真や映画などに始まる複製可能な表現と、それまでの作品が持つ“1回性”の強度を対比的に説いた。一方、本インスタレーションはリアルタイムな映像によってもたらされる“意図的な偶然”を、インタラクティブに表現する試み。せんだいメディアテークや日本科学未来館をはじめとする展示を通して、「芸術から失われたとされる1回性を、新しい形で作り出すことができる」という確信が生まれ、その後のWOWの作品に大きな影響を与えている。

WOW ART
www.w0w.co.jp/art/

『Motion Texture』
www.w0w.co.jp/art/Motion_Texture

Text:Keita Fukasawa

Profile

深沢慶太Keita Fukasawa コントリビューティング・エディターほか、フリー編集者、ライターとしても活躍。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numero TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集やインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)などがある。『Numéro TOKYO』では、アート/デザイン/カルチャー分野の記事を担当。

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