松居大悟監督が映画化
蒼井優主演の『アズミ・ハルコは行方不明』
『ここは退屈迎えに来て』の山内マリコが、2013年に書き下ろした小説『アズミ・ハルコは行方不明』を、『スイートプールサイド』『私たちのハァハァ』など一筋縄ではいかない青春映画を監督してきたことでも知られる松居大悟監督が映画化。
タイトルにもなっている物語の中心人物・安曇春子(蒼井優)は27歳のしがないOL。地方都市に生まれ、祖母と両親とともに実家暮らし、会社に行けば、セクハラ三昧という日々に辟易していた。もう若くはない30歳を目前にしながらも、家と会社の行き来という変化のない日常を送っていた彼女は、ある日、幼馴染の曽我(石崎ひゅーい)と関係を持つことに。この、寂しさを埋め合うだけの曖昧な関係の描写の生々しさは、見ていて辛くなる。
その頃街では、女子高生集団が無差別に男を襲撃するという噂が広がっていた。20歳の愛菜(高畑充希)は、成人式で再開したユキオ(太賀)となんとなくセックスしたり遊んだりしてしまう、なんだかやれそうな女の子。覆面アーティストのバンクシーのドキュメンタリー『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』を観て感化されたユキオはレンタルビデオ店で再会した同級生の学(葉山奨之)とともにグラフィティアートユニット「キルロイ」を結成し、アズミ・ハルコの捜索願いのポスターをグラフティにして、拡散していく。
春子の失踪事件の前後、2つの時間軸を交差させながら描かれるのは、10代、20代を経て30代に向かう女性たちが生きる上での痛みと葛藤だ。なぜハルコは姿を消したのか? 彼女の向かう先には何があるのか。環ROYのエレクトリカルな音楽と、心身気鋭の映像作家であり漫画家でもある、ひらのりょうが手がける爽快感溢れるアニメーションパートにも注目。2016年12月3日(土)より、11月にリニューアル・オープンを果たした新宿武蔵野館ほか全国公開。
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Text:Tomoko Ogawa