Text:Keisuke Kagiwada
Culture / Post
ナチスに翻弄された男女の愛の行方は……?『あの日のように抱きしめて』が公開中。
愛する人に自分が自分であると気づいてもらえない––。その哀しみたるや、想像を絶するものがある。公開中のドイツ映画『あの日のように抱きしめて』が描くのはまさにそれ。
主人公はナチスの強制収容所から命かながら生還したネリー。彼女は生き別れとなった最愛の夫と再会するが、ネリーは死んだと思い込んでいる彼は、彼女をネリーと認めてくれない。確かに、ネリーは収容所で顔面に重篤な傷を負い、その治療のために整形手術をしてはいる。しかし、傍目にそのビフォア/アフターの違いはほとんどわからない。にも関わらず、夫はネリーをネリーにそっくりな女性としか認識してくれないのだ。そればかりか、ネリーにネリーを演じさせ、ネリーが残した財産を一緒にぶんどるという計画に巻き込む始末。いつか愛する夫が気づいてくれるだろうという期待を胸に彼の言いなりになるネリーの姿は、けなげというかお人好しというか……。そして、クライマックス。当然、夫が彼女を実際のネリーだと気づく瞬間になるのだけど、これが途轍もなく切なく、そして、美しい。歴史に翻弄された男女の物語として楽しめるはもちろん、恋人の言いなりになりがちっていう女子も共感すること必至。ぜひ、劇場に足を運んでみて!
『あの日のように抱きしめて』
監督・脚本/クリスティアン・ペッツォルト
出演/ニーナ・ホス、ロナルト・ツェアフェルト、ニーナ・クンツェンドルフ
公開/8月15日(土)よりBunkamuraル・シネマ他にて全国順次中
配給/アルバトロス・フィルム
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