Art / Post

真剣なり。
マーク・ニューソン×日本の伝統工芸の精髄『aikuchi』


まず、日本刀は単なる “武器” ではない。
文化や歴史に興味を持つ人に留まらず、いまや日本刀は世界中の人々の憧れの的。
……といっても、その印象はほとんどフィクションで、ハリウッド映画やコンピューターゲームにおける “無敵の刃物” というイメージだ。
しかし日本刀の真価は、“切った貼った” のスプラッターにあらず!
なんとなれば、「Numero TOKYO」7・8月合併号(5/28発売)の特集記事(※1)でアーティストの杉本博司氏が述べているとおり、世界的にも特異な “日本の精神性” が、そこに息づいているのだ。

神に捧げるための “御神刀(ごしんとう)” や、魔除けやお守りとしての意味を持つ “合口(あいくち)” などは、まさにその象徴。
また、玉鋼(たまはがね)から刀を打ち出す作業を司る刀鍛冶は “神の召し者” として神聖視され、鍛え抜かれた刃紋(はもん)の美しさ、柄(つか)や鞘(さや)といった刀装具(とうそうぐ)に施される意匠などにおいても、芸術性が極められていった。
つまり。当の日本人すら忘れかけたひとつの宇宙が、そこに広がっているのだった。


一方、マーク・ニューソンといえば、1980年代に東京を訪れた際、雨の中をずぶ濡れで歩いていたところへ家具メーカーIDEEの創業者・黒崎輝男氏が傘を差し出したのがきっかけで、デザイナーとしての才能を見出され、黒崎氏の紹介でジョナサン・アイブとの交流がスタートしたという。
その逸話から30年。
いまやスターダムに上り詰めながら、日本との浅からぬ絆を持つ彼の元に、日本刀のデザイン依頼が舞い込んできた。

依頼主は東京、仙台、ロンドンを拠点に、映像作品やスマートフォンなどのインタラクティブなUI(ユーザーインターフェイス)、プロジェクションマッピングをはじめとする空間インスタレーション作品など、映像制作を超えた独創的な活動で世界的な注目を集めるビジュアルデザインスタジオ「WOW inc.」。
 
しかし……デジタルテクノロジーの最先端を行くクリエイティブ集団が、なぜアナログ入魂の極致とも呼ぶべき日本刀を、さらにあのマーク・ニューソンへと依頼するに至ったのだろうか。

Text:Keita Fukasawa

Profile

深沢慶太(Keita Fukasawa) フリー編集者/ライター/『Numéro TOKYO』コントリビューティング・エディター。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numéro TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集・執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集や、編集者9人のインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)など。

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