マジすか!?『レッドブル・ミュージック・アカデミー東京2014』 | Numero TOKYO - Part 4
Art / Post

マジすか!?
『レッドブル・ミュージック・アカデミー東京2014』


続いては、11月に開催される後半戦。

実験音楽だけでなく、現代アーティストとしても世界中に熱烈なファンを有する池田亮司。パリ在住の彼による、東京で久方ぶりの大型インスタレーションが、表参道のスパイラルホールで展開される。可視/不可視、可聴/不可聴の境界を揺さぶる圧巻の時空間は、まさに必見。

ご存じ、Perfumeの舞台演出や、ドローン(小型無人ヘリ)と人間のダンサーの動きを組み合わせた前代未聞のパフォーマンスなど、最新テクノロジー×アート領域の最前線のさらに先をひた走るライゾマティクス代表の真鍋大度。“眠らないテクノロジー男子” といわれる彼が、秋葉原近くの3331アーツ千代田でのオープンレクチャーに登場する。

世界に誇るべき業績を誇りながら、灯台もと暗し状態なのが、日本のゲーム音楽シーン。世界中のサウンドクリエイターに影響を与えてきた伝説の作曲家たちをフィーチャーするドキュメンタリーシリーズ『Diggin’ in The Carts』の公開を記念して、ゲーム音楽の名曲に身も心も浸りまくる、伝説必至の1夜が渋谷Wombにて開催される。

そして、RBMA東京2014の最終夜。カール・クレイグを筆頭に、テクノ&ハウスの猛者たちが恵比寿リキッドルームの空間をぐにゃぐにゃとねじ曲げ、 “千秋楽” と称する享楽の亜空間が出現を果たす──。


……と、終始そんな塩梅で、四方八方から知的好奇心とアゲアゲ欲をかき立てまくるイベントが数十本も仕込まれている有様に、思わずイベントリストを5度見した。
しかし、ここで大きな疑問が。いったい何のために、世界各都市でこのような取り組みを行っているのだろう……?

思うに、音楽に限らずアート、デザイン、ファッションなど、“カルチャー” と呼ばれる領域は日本ではことさら、人の生き死にと関係のない “趣味のこと” として軽視されている。
だが、私たち人間は “役に立つ” 事柄だけで生きているのではない。『1984年』から『華氏451』、ワイドショーで喧伝される “将軍様の国” のお笑いネタに至るまで、誰かが決めた価値基準を全員でなぞり、操作されたマーケットから機密費や広告費で垂れ流される “最新の音楽” や “流行の話題” に右へならえしながら、それを自分自身の意志と勘違いした人ばかりのディストピア(地獄郷)の姿は、意外なほどすぐそこにあるのだ。

だからこそ、創造なくして幸せなし。国境や民族、分野などの既成概念、狭苦しい私たちの了見を超え、「マジか!?????」と目や耳を疑うようなMIX UP、超常的なマッシュアップから、突然変異的にまばゆすぎる表現が勃興し、よりよい未来が拓かれるはず──。
そこに、世界各都市を巡り、ローカルとグローバルの才能とを魔女の大鍋のごとく一緒くたにかき混ぜ、誰も見たことのない新種が爆誕するように仕向けながら、あらゆる人にテイスティング(お試し)のチャンスを与えてまわる、RBMAの本当の目的があるのではないだろうか。
(感想文おわり)

……そう考えると、RBMA東京の功徳(くどく)はもはや、音楽×カルチャーの菩薩(ぼさつ)軍団が一斉降臨し、囚われの衆生に “翼を授けて” 回るがごとし。嗚呼、ありがたやありがたや……!
ならば、私たちにできることはひとつ。
聴け、そして踊れ! もっと自由な世界のために。
自分の目や耳や体で感じた “リアル” のなかから、自分たちの未来をつかみ取れ!

──東京カルチャー史に輝く “伝説の1ヶ月”。そのゆくえを見守るのは、あなた自身だ。

※『Numéro TOKYO』2014年11月号 掲載記事を加筆転載

『Red Bull Music Academy Tokyo 2014』
期間/2014年10月12日(日)〜11月14日(金)
場所/都内各所
URL/http://www.redbullmusicacademy.jp
※会期中のイベント情報など詳細は公式サイトをチェック!

Text:Keita Fukasawa

Profile

深沢慶太(Keita Fukasawa) フリー編集者/ライター/『Numéro TOKYO』コントリビューティング・エディター。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numéro TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集・執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集や、編集者9人のインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)など。

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