未来か現実か!? 全人類に告ぐ。
「ヴァンサン・フルニエ展」
いったい、ここで写し出されているものは、目の前の “現実” の先に訪れる “未来” なのだろうか。それとも、単なる “寓話“ なのだろうか。
それはわからない。でも、私たちの胸のうちにかき立てられるあの感情だけは、疑いようもなくリアルなのだった──。
単なる記録とも、創作とも判じ得ない、彼の作品世界に立ち現れる不可思議な感覚。
その奥底にあるのは、猿人の時代からずっと私たちを人間たらしめてきた、“ある衝動” ではないだろうか。
アフリカで誕生した私たちの祖先が、陸続きだった海峡を徒歩で渡り、数万年をかけてはるか南アメリカ大陸の先端までたどり着いたという事実。
太平洋の海原を前に、新たな土地を求めてカヌーで漕ぎ出し、嵐に飲まれ、渇きや飢えで命を落とし、無数の犠牲を積み重ねながら、ハワイへ、イースター島へ、絶海の島々へと渡っていった歴史。
そして近い将来、私たちは火星に降り立ち、機械に知性を与え、新たな生き物を創り出しながら、さらなる “未知” を求めて宇宙を漂い、遙か星々の彼方へと散らばっていくだろう。
それほどまでにこの衝動は、私たちの根源に抗いがたく刻み込まれている。
だとすれば、彼の作品に写し出されたものは一見、“未来” のようでいて、そうではない。そこに浮かび上がるのは、人類が絶えず夢見てきた過去という名の “現実” であり、私たちの根底に逃れようもなく刻まれた、儚(はかな)い憧れの残影なのだ──。
(感想文おわり)
そのヴァンサン・フルニエによる、写真、映像、立体作品など約30点からなる展覧会が、東京・渋谷のDIESEL SHIBUYA内、DIESEL ART GALLERYで開幕を迎える。
映画『アメイジング・スパイダーマン2』の劇中にも登場した「POST NATURAL HISTORY」シリーズが日本で初めての公開されるほか、「SPACE PROJECT」の作品集なども販売される。
未来とはなにか。私たちはどこへ向かうのか。
2014年、沸き立つ “宇宙ブーム”(※1)の最深部──心揺さぶる「未来の考古学」が、いま、ひも解かれる。
※1 Numero.jp「アート×宇宙ブーム到来?『ミッション[宇宙×芸術]』展」を参照のこと。
※ 『Numéro TOKYO』2014年10月号 掲載記事を加筆転載
ヴァンサン・フルニエ『ARCHEOLOGY OF THE FUTURE—未来の考古学』
期間/2104年8月22日(金)〜11月14日(金)
場所/DIESEL ART GALLERY
住所/東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1F
URL/http://www.diesel.co.jp/art
Text:Keita Fukasawa