アート×宇宙ブーム到来?『ミッション[宇宙×芸術]』展 | Numero TOKYO - Part 3
Art / Post

アート×宇宙ブーム到来?
『ミッション[宇宙×芸術]』展

そして……個人的に「マジか!?」と驚きを禁じ得なかったのは、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」で行われた、ドサイケな着物を身にまとった古川聡 宇宙飛行士による『宇宙で抹茶を点てる』(JAXA「文化・人文社会科学利用パイロットミッション」)や、アート活動のために打ち上げられた “世界初の芸術衛星” こと、『ARTSAT:衛星芸術プロジェクト』など、リアルに[宇宙×芸術]な先駆的すぎる取り組みが、日本人の手によって宇宙空間で実施されていた……! という、一般市民の想像の遙か斜め上空を行く事実だった。
mission space × art
mission space × art
それにしてもなぜ、[宇宙]と[芸術]が結び付かなければならないのだろうか? 「その理由は……人がこの世に生まれて以来、その眼差しの先にはいつも[宇宙]があったから。 大会を夢見る井の中の蛙(かわず)のように、太古より人々は遙かな星々へと想いを馳せ、まだ見ぬ世界を想い続けてきた。でも宇宙に挑むということは、母なる惑星=地球の重力の“井戸の底”からいかにして這い上がり、その先の自由を手に入れるかという、自分たちの身体の能力を遙かに超えた闘いにほかならない。 一方で、人々は無意識の奥底にある情動の源泉(フロイトの精神分析学における“イド”)に向き合い、自らの肉体の範囲を遥かに超えた[芸術(アート)]という名の広大無辺な[内的宇宙]を打ち立ててきた。 [宇宙]と[芸術]──ともに自らの身体的制約を超え、未だ見ぬ世界を求めてきた人類史の行方に横たわる、2つの巨大な神秘の領域。その両者がついに融合を果たすとき、そこには有史以来ずっと誰もが夢見てきた、真の意味での “井戸の外の眺め” が広がっているに違いない」(感想文おわり) ──地球の重力に魂を縛られた人々へ。[宇宙×芸術]の新地平から、さらなるコスモロジー(宇宙観)を切り拓いていこう。 ※『Numéro TOKYO』2014年9月号 掲載記事を加筆転載
mission space × art
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『ミッション[宇宙×芸術]—コスモロジーを超えて』 期間/2014年6月7日(土)〜8月31日(日) 会場/東京都現代美術館 URL/www.mot-art-museum.jp

Text:Keita Fukasawa

Profile

深沢慶太(Keita Fukasawa) フリー編集者/ライター/『Numéro TOKYO』コントリビューティング・エディター。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numéro TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集・執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集や、編集者9人のインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)など。

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