全人類を魅了する、奥深き食の世界[後編]/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.19 | Numero TOKYO - Part 4
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全人類を魅了する、奥深き食の世界[後編]/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.19

菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.19
菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.19
『生まれた時からアルデンテ』平野紗季子著(平凡社)
菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.19
菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.19
『美食倶楽部』谷崎潤一郎著(筑摩書房)
菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.19
菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.19
『文人悪食』嵐山光三郎著(新潮社)
菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.19
菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.19
「シャリアピンステーキ」。帝国ホテルで考案され、今でも伝統メニューとして味わうことができる。 「トラディショナルダイニング ラ ブラスリー」 住所/東京都千代田区内幸町1-1-1 タワー館B1F TEL/03-3539-8073 03-3504-1111(帝国ホテル 東京 代表)
K「勝沼とか、いいものは本当にいいですしね。それから、この間対談した、『生まれた時からアルデンテ』という本を書いた平野紗季子さんという若くてかわいいフードブロガーが、女の子目線で自由に書いた食のエッセイが読まれていたりもしてして。一方で、フードライターの力は落ちていますよね。そういえば、来栖けいさんはいま、『小熊飯店』という二つ星の中華で給仕をされていますよ。私も料理本を書けとのお声はかかりますが、もう筆を折ろうかと思っていて(笑)」
I「食の本、いいじゃないですか。芸術家、たとえば作曲家の武満徹が闘病している時に自分で考えたレシピ、“馬鈴薯のバレーボール”は有名です。こういう芸術家シリーズも、ずっとありますよね。武満さんはテレビの料理番組が好きで、病院でもずっと見ていたそうですが。永井荷風が死の直前に食べたカツ丼とか。谷崎潤一郎の『美食倶楽部』では、食が官能と絡めて描かれていたり。森鷗外の饅頭茶漬というのもあって、鷗外はごはんの上に葬式饅頭を乗せ、お茶をかけたものを好み、子どもたちにも食べさせていたそうです」
K「鷗外の饅頭茶漬は、元祖・ちょい足しですよね。文人は内部がたぎっているから悪食で、嵐山光三郎の著作に、小説家がどれだけ偏ったヘンなものを食べていたかをまとめた、そのまま『文人悪食』という本もありますが、すごくいい本ですよ」
I「国木田独歩が食べていた、ごはんにカレー粉をまぶした『ライスカレー』は僕も試したことがありますが、これはおいしかった(笑)。文人が悪食な一方で、音楽家は美食ですよね。たとえば、マカロニ・ロッシーニ風。ロッシーニが考案した料理で、マカロニに独特の注射器でフォアグラとトリュフのソースを詰めたもので、おいしいですよ」
K「ロッシーニは、フォアグラとトリュフを乗せるスタイルのステーキにも名前を残していますよね」
I「オペラ歌手のシャリアピンにちなんだシャリアピンステーキというのもありますよね」
【“三つ星の銀座の寿司屋”という名誉ハイプ】

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