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全人類を魅了する、奥深き食の世界[中編]/菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.18

菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.18
菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.18

岡田裕子 ビデオ《愛憎弁当》より
2007 © OKADA Hiroko
Courtesy Mizuma Art Gallery
菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.18
菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.18

岡田裕子 『愛憎弁当(松)』
2007 © OKADA Hiroko
Courtesy Mizuma Art Gallery
菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.18
菊地成孔×伊藤俊治 対談連載 vol.18

トランジットジェネラルオフィスによるイケメン勢揃いのケータリングサービス。
K「それから、ドイツに引っ越してしまったのですが、僕の友人に謝琳さんという料理人でもあるアーティストがいて、彼女は『ヘンゼルとグレーテル』のお菓子の家の制作や、食欲をいちばん減退させる色であるブルーのケーキや紅茶をふるまうパフォーマンスなど、食をテーマにした表現をしていましたね」
I「アンディ・ウォーホルに料理本があるように、もともとアーティストは料理にいろいろ執着してきた歴史がありますが、最近は若いフードアーティストもいろいろ出てきていますよね」
──晩餐会スタイルで食によって感覚を刺激する「ゲリラレストラン」を開催するアーティスト、諏訪綾子さんもいますね。
K「エル・ブリのようなコンセプトでしょうか。一言で“おいしい!”とは言えないところとか」
I「会田誠さんの奥さんで美術家の岡田裕子さんも、架空の料理番組で料理研究家に扮した『愛憎弁当』という映像作品を発表していましたね。展覧会のオープニングやクロージングで、テーマやニーズに応じたケータリングサービスを提供するフードユニットやアーティストもいます」
K「伊勢丹新宿店のシャンパン・スタンド、『THE STAND』や『BISTRO CAFE LADIES & GENTLEMEN』をプロデュースしたトランジットジェネラルオフィスも、イケメン・ケータリングでひと財産作りましたよね。まあ、バブル期のイタ飯ブームの時にも、トラットリアにいる子がみんなイケメン、というのはありましたけど。トラットリアが定着したのは90年代で、それ以前は食に関しては惨憺たる状況でしたね。当時は奇矯だったけれど、原宿に『バスタパスタ』という初めてオープンキッチンを取り入れた店ができ、恵比寿の『イル・ボッカローネ』とともに、パスタに喫茶店で頼むナポリタン以上の価値を与える起爆剤になりました。それまでのイタリア料理屋の、太ったおっちゃんがカンツォーネを歌いながら作るイメージから、かっこいい男の子がサーヴしてくれるというホスピタリティに転向して、いまで言う『UOMO』のような、イタリア男がかっこいいという価値観すら一気に導入したんですよ。それでみんなイタリア料理の修行に行くようになったのですが、90年代は僕がいちばん海外でよく仕事をしていた時期で、世界中行く先々のイタリア料理屋に必ず日本人が修行に来ていました。日本人は勤勉だし言葉も覚えるので、店主がかわいがってセコンドにしてあげるんですよ。やがて彼らが日本に帰ってきて店を開き、ゼロ年代に一気に日本のトラットリアの水準が上がったんです」
I「これだけ日本にイタリアンができた原型ですよね。そして、いまは東京よりも地方が頑張っているような気がします。地域ごとの独特な環境ででき上がる野菜やワインのほうが、東京の洗練されてはいるものの均質化した料理よりも味があるということでしょうか」
【ラーメンこそが日本のオーバーローカリティー】

Photo(portrait):Yuji Namba Text:Misho Matsue

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