菊地成孔が仕掛ける「HOT HOUSE」とは/対談連載 vol.8 | Numero TOKYO - Part 4
Culture / Post

菊地成孔が仕掛ける「HOT HOUSE」とは/対談連載 vol.8

ジャズ史とファッション、ドレスコードの鍵を握るのは?
 
──時代感を反映したようなコスプレ的なドレスコードは設けないんですか?
 
K「日本はコスプレが得意だから、コスプレをドレスコードにしてしまうと、コスプレ大会になってしまって、コスプレが目的化してしまうかもしれない。それはあまりよろしくない。現状では、第一にソロダンサーがスーツを着ないんですよ。ジャケットは羽織っているけれど、タイは締めない。むしろ、そんなのしてたら、あんなに激しい動きに服がついていけなくてグチャグチャになってしまいますから。でも、カップルダンサーの人は、帽子に至るまで3ピースをバシッと着て、40年代のファッションで。シューズもNIKEなどではなく、ダンスシューズ持参で。どっちかにしちゃうとまた元通りの島宇宙になっちゃう。だから、そこはゆるくしてます」
 
I「スーツにしても、ズートスーツにまで回帰しているんですか?」
 
K「いや、ズートスーツまではないですね。会場のロビーに展示していたスーツブランドの「COOL STRUTTIN(クール・ストラティン)」というのは、ズートまではいっていなくて、どちらかというとタイトなものですね。60年代のモダンジャズのハードバップのころですね。モッズの直前です」
 
I「あの頃はチェーンをたくさん巻いて、チェーンの動きでスウィング感を出したり、すごく細かい工夫をしてましたよね」
 
K「大きくいうと「改造服」ですね。まぁ、ズート自体が改造服というか。だから、本当に難しいんですよね、パーティマナーを作っていくというのと、集客していくというのは。だから、僕が洋服屋に呼び掛けているのは、洋服の値段を下げろってことなんです。ユニクロとかH&Mも含めプチプラのところも結構立派で、3つ揃えのものを破格の値段で買えるようになってるんで。そもそもズートスーツ自体が、可処分所得がすごく低かった人たちが古着を改造して作っていたんですよ。だから、安物をデコラティブに作り直してできている、それがビーバップルックで。言ってみれば、70年代でいうところのパンクですよね。わざと破いたり、改造するというかたちで。まぁ、そんなのはマイルス・ディヴィスが一人イギリスのつるしを着ていたので目立ったというのがジャズ史で、悪い先輩たちは皆ズートを着ていたんですよね。ズートルックも時が経つに従って洗練されちゃったんだけど、精神はモッズに受け継がれていて。スーツは着ているけれど、やることは乱暴なんだってことなんです。だから、服屋が値段を下げてくれれば、ドレスコードはかえって面白くなると思うんですよね」
 
──女子のファッションはもっと難しい感じがしました。
 
K「女子のファッションは難しい。踊ろうと思って…メイクから何から40年代のコスプレにした人たち。それとは別に、単に現状のパーティのエレガントでリュクスな人とかもいるし、社交ダンス的な人とか。あと、ハウスのパーティとかに行くと、要するにNumero読者みたいな感じの普通の平均的な遊び人な感じのボディコンみたいな(笑)人たちもいて。だから相当奇妙なんですよ、あのパーティは。その代わり、彼らのピュアリストがやってるパーティに行ったら、全員同じ格好してるから。コスプレ大会ですよね」
 
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