自由奔放でハイブリッドな新世代SSWニルファー・ヤンヤの新曲 | Numero TOKYO
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自由奔放でハイブリッドな新世代SSWニルファー・ヤンヤの新曲

最新リリースの中から、ヌメロ・トウキョウおすすめの音楽をピックアップ。今回は、Nilüfer Yanya(ニルファー・ヤンヤ)の最新シングル「Crash」をレビュー。

Photo:Molly Daniel
Photo:Molly Daniel

小柄な体にギターを抱え、自由で柔軟なソングライティングを繰り出す、新世代を代表するSSW

新しい才能の出現にはいつだって驚かされるが、ここ1~2年で、次々と自分よりもぐっと若いアーティストたち、90年代後半以降生まれのいわゆる「Z世代」たちのデビューが目立つようになってきている。そんな彼ら、彼女らの存在に「いよいよ自分もいつまでも若いなんて言っていられないぞ」なんて、ちょっと身の引き締まる想いでもいるわけだが、驚かされるのはその若さにだけではない。彼ら、彼女らの音楽は、それより少し上の世代のアーティストたちの音楽よりも、ジャンルというくくりに捉われない自由奔放さを持っているように感じられるのだ。その「Z世代」とも呼ばれる彼ら、彼女らの中で、特に筆者が注目しているのが、UK・ロンドン出身で、トルコ系の父、バルバドス系の母を持つニルファー・ヤンヤだ。

現在25歳の彼女は、2016年にファースト・シングルをリリース、2018年には英《BBC Sound Of 2018》の注目新人に選ばれており、昨年、満を辞してデビュー・アルバム『Miss Universe』を発表。各所海外メディアで、その年のベストアルバムに多数ランクインを果たしていた。彼女のような若い世代では特に、打ち込みによるトラックメイクを表現手段とするアーティストのほうが昨今は主流であるようにも思うが、ニルファーのソングライティングの楽器は、あくまでギター。だが、作り出すサウンドやアレンジの振り幅は自由自在だ。

今回リリースしたシングル「Crash」は、昨年のアルバム以来の新曲。レーベルメイトでもある、NY・ブルックリンのローファイ / ソウルシンガー、ニック・ハキムが共作、プロデュースしたものだ。冒頭のコーラスがフェードアウトすると、リズムはレイド・バック。だが同時に、深くファズがかった厚みのあるギターサウンドが、腹に打ち込まれるようなバスドラムの音とともに、左右から波のように耳に流れ込んでくるのだ。そう聞くとやたらとハードな印象を受けるかもしれないが、そこはニック・ハキムのプロデュース。適度にローファイさを残し、いい意味で気の抜けたサウンドに仕上げているのが、さすがだ。とともに、低音と高音を自在に行き来する、鳥のさえずりのようなニルファーの歌とそのメロディにも心躍る。

そうそう、彼女の持ち味は、ハードなロックサウンドかと思いきやリズムはR&Bのようであったり、ネオ・ソウルだと思って聴いていたら予想だにしないメロディの飛躍を見せたり……などといった、いくつもの音楽の特徴をハイブリッドに持ち合わせているところなのだ。しかも、ごく自然に。それはまさに、彼女の世代らしい柔軟さそのものであり、その自由さに憧れも抱いてしまう。そんな彼女は今年の12/11に、このシングルを含むEPをリリース予定とのこと。今年最後のちょっとしたお楽しみとして、ニルファーの持つ自由奔放さに、ぜひとも期待したい。

Nilüfer Yanya「Crash」
2020年10月20日リリース
各種配信はこちらから


Nilüfer Yanya『FEELING LUCKY?』
2020年12月11日リリース予定

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Text:Nami Igusa  Edit:Chiho Inoue

Profile

井草七海Nami Igusa 東京都出身、ライター。主に音楽関連のコラムやディスクレビュー、ライナーノーツなどの執筆を手がけている。現在は音楽メディア《TURN》にてレギュラーライターおよび編集も担当。

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