若者をエンパワメントする新世代アーティスト、Mura Masaのニューアルバム | Numero TOKYO
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若者をエンパワメントする新世代アーティスト、Mura Masaのニューアルバム

最新リリースの中から、ヌメロ・トウキョウおすすめの音楽をピックアップ。今回は、Mura Masaの『R.Y.C』をレビュー。

ザラついたサウンドに感じとる、未来への不安に抗う若者のパワー

イギリス・ガーンジー島出身のプロデューサー/トラックメイカーのMura Masa。新世代アーティストと呼ぶにふさわしい弱冠23歳なのだが、すでに21歳の時にデビューアルバムをリリースしており、その早熟さ、完成度の高さには驚かされたものだ。昨年11月には3度目の来日公演を敢行、筆者も東京公演に足を運んだが、洋楽不況もどこ吹く風、なんとZepp DiverCityがパンパン! ただ面白いことに、どうもその場にいたのは生粋のパーティー好きばかりではなさそうに思えたのだ。インディーロックやポップスのライブにいそうな人たちからB-BOY風の若者までが大いに盛り上がっていた会場を見て、Mura Masaの多面的な魅力に触れたような気がした。

そんな彼の多面性がより垣間見えるのが、今回のセカンドアルバム。つるりとした未来的なサウンドの享楽的なダンス・アルバムだった前作に比べると、今作『R.Y.C』は全く違った印象の作品になっている。全体にフィーチャーされたギターサウンドやニューウェーブのような四つ打ちの性急なビートが、これまでのMura Masaのイメージを覆すロック志向な一面を見せてくれている。またアルバム全体を通じて歪みやノイズをいたるところに聴くことができ、ヴォーカルには音割れしたようなエフェクトがかかっている箇所も多い。そんなザラついたサウンドを前面に押し出した今作は、”No Hope Generation” “I Don’t Think I Can Do This Again” という曲名が並ぶように、漠然とした未来への不安を抱かざるを得ない現代の若者の声を代弁した作品なのかもしれない。Clairo、Slowthaiといった若きニューカマーたちとのコラボも際立つ今作は、そんな未来への不安に抗う若者たちのパワーを感じさせる1枚と言えるだろう。

Mura Masa 『R.Y.C』
国内版CD ¥2,750(Universal/2020年1月31日リリース)

各種デジタル配信はこちらから
https://muramasa.lnk.to/RYC

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Text:Nami Igusa Edit:Chiho Inoue

Profile

井草七海Nami Igusa 東京都出身、ライター。主に音楽関連のコラムやディスクレビュー、ライナーノーツなどの執筆を手がけている。現在は音楽メディア《TURN》にてレギュラーライターおよび編集も担当。

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