「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」の歩き方 | Numero TOKYO
Art / Editor's Post

「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」の歩き方

京都を舞台に開催される、日本最高峰のアート写真フェスティバル「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭2020」。通常非公開の寺院、指定文化財などといった歴史的建造物から、ギャラリー、近代建築などさまざまな空間を舞台にアート写真を展示。第8回となる2020年のテーマは「VISION」。見どころをご紹介します!

京都府庁旧本館に展示されているのは、10月号でインタビュー取材をしたセネガル出身のオマー・ヴィクター・ディオプ「Diaspora」とピエール=エリィ・ド・ピブラックによる「In Situ」。 オマーの「Diaspora」は、アフリカ出身の16〜20世紀に活躍した偉人と、欧州リーグでプレイするサッカー選手に自らを重ねたセルフポートレートシリーズ。旧議場に肖像画のように並べられた展示もユニーク。 パリ・オペラ座の舞台裏に3年越しで密着撮影した「In Situ」。バックステージからダンサーたちの美しい肉体を捉えた写真まで、壮大でドラマティック。幻想的な世界に引き込まれます。 KYOTOGRAPHIEの醍醐味と言えば、普段なかなか訪れることのない空間での展示。ここ京都府庁旧本館は1904年に建てられた重要文化財。ここはパリ?のような建物も併せて見学したい。

外山亮介「導光」は両足院(建仁寺山内)に。日本各地を訪れ撮影した様々な伝統工芸の若手職人たちのポートレート。その10年後に再び訪れ、19世紀の写真術「アンブロタイプ(ガラス湿板写真)」で撮影し、その職人による工芸品とともに展示。職人の魂が作品から浮かび上がるよう。茶室の展示も是非! 両足院の庭がフィルム作品のように見えます。作品と両足院との融合も素晴らしい。

©︎ Takeshi Asano-KYOTOGRAPHIE 2020

片山真理「home again」は、嶋臺ギャラリーで展示。先天性の四肢疾患により幼少期に両足を切断し、以来、義足とともに生きてきた自分をモチーフに創作活動を続ける彼女。今年の第45回「木村伊兵衛写真賞」を受賞も記憶に新しい。「home again」は、自身の足をモチーフに制作した最新シリーズ『in the water』を中心に展示。

「『in the water』は、実は水とは関係なくて。自分の足の帯状疱疹が悪化して抗体にアレルギー反応を起こすようになってしまって、その姿に公害、人間がやってきたこと、社会の成り立ちと似たものを見たんですね。内部で問題が起きたときに、外部に敵をつくるといがみ合っていた人たちが同じ方向を向くというような。ただ普通に痛々しく撮るのは嫌だったから、ラメっとくか(笑)と、キラキラさせて写真撮ったら海っぽくなったので、そのタイトルを付けたんです。そしたら2ヵ月後に、滞在先のベネチアで、アクアアルタと呼ばれる満潮を体験して」(5月号インタビューより)。過去の代表作とともに独自の世界観に浸って欲しい。

会場で片山真理さんにお会いできました。KYOTOGRAPHIEではアーティストのギャラリートーク(今年はオンライン)や、体験イベントなども実施。

写真家・映像作家の瀧本幹也はAssociated Programsとして、妙満寺とSferaギャラリーの2会場で発表。

妙満寺「CHAOS 2020」では、江戸時代より名園として名高い名庭「雪の庭」から着想し、大書院の空間を生かして、“雪”をテーマにした写真、映像作品、アートインスタレーションを展示。地球を俯瞰して見ているような不思議な感覚に。空間とも相まって禅を彷彿とさせる。ちょっと遠いと怯まずに是非訪れて。

Sferaでは、原初の地球を表現した「LAND」と、最先端文明の象徴である宇宙産業を撮った「SPACE」に未発表作品を加え、「LAND SPACE 2020」として発表。自然と文明を対峙させた展示に考えさせられる。

甲斐 扶佐義が市井の風景、そこに生きる人々を50年来撮り続けた「鴨川逍遥」、世界中の廃墟と化した建物の破片を再構築したインスタレーションで知られるマリアン・ティーウェンが京町家を手がけた「Architectural Installation Destroyed House Kyoto」、福島あつしの高齢者向け弁当配達の記録、2019年KG+Awardでグランプリを受賞した「弁当 is Ready」、映画監督ウォン・カーウァイの元専属フォトグラファー兼グラフィックデザイナー、ウィン・シャの独特の色彩を感じる「一光諸影」、伝統手法を織り交ぜたポップアートのようなエルサ・レディエの「Heatwave」、マリー・リエスによるフランス国立盲学校の生徒たちの“触れる”ポートレート展示「二つの世界を繋ぐ橋の物語」など、それぞれのクリエイターの思いが溢れる展示が盛りだくさん。KYOTOGRAPHIEで是非その思いを直に感じてみて。

KYOTOGRAPHIE
会期/2020年9月19日(土)〜10月18日(日)
会場/メインプログラム:京都市内14カ所 アソシエイテッドプログラム:京都市内4カ所
開館時間・休館日/会場により異なる
www.kyotographie.jp/

 

 

 

Profile

水戸美千恵Michie Mito マーケティング・ディレクター/エディトリアル・ディレクター。大学時代にジャーナリストアシスタント、ライターとして書籍、雑誌に携わる。卒業後扶桑社へ入社し、女性ファッション誌を経て『NumeroTOKYO』創刊1年目より副編集長に就任。ファッションページ制作や取材のほか連載「YOUのテキトーく」「佐久間由美子が聞く 女性表現者たちの闘い」を担当。趣味は歴史や文化をテーマにしたプラベートトリップで、西ゴート族追っかけ旅、スターウォーズロケ地旅などを経験。座右の銘は「いつも心にナンシーを」。
Instagram: @mitomiche

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