ENVii GABRIELLAインタビュー「アラサーユニットだから表現できる、一筋縄じゃない愛」
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ENVii GABRIELLAインタビュー「アラサーユニットだから表現できる、一筋縄じゃない愛」

パワフルなパフォーマンスとゴージャスな世界観で、人気上昇中の音楽ユニット「ENVii GABRIELLA(エンヴィ・ガブリエラ)」。ソロアーティスト「soul juice」としてさまざまなアーティストに楽曲提供もしていたTakassy(タカシ)を中心に、『笑っていいとも!』の「第1回オネメンコンテスト」で優勝しタレント・アーティストとして活動していたHIDEKiSM(ヒデキズム)、元自衛官でありダンサーとしてイベント出演やアーティストのバックダンサーを務めていたKamus(カミュ)が集まり、2017年に結成。現在はYouTubeチャンネルの「スナックENVii GABRIELLA」の登録者が20万人以上、全国を回るライブ&トークツアーも年々拡大している。そんな「エンガブ」が、メジャー2ndフルアルバム『ENGABALL』をリリース。この作品に込めた想い、そして3人が考える「愛」について聞いた。

11cmヒールと、なんでもありのエンターテインメント!

──まずは、グループのコンセプトを教えてください。

Takassy「さまざまなジャンルをミックスした音楽をベースに、YouTubeでのフリートークや『Get Ready with Me』『お悩み相談室』などのバラエティコンテンツや、メイクファッション、アートなど、私たちのセンスを総動員してお届けする、なんでもありのエンターテインメントというのがコンセプトです。合ってるよね?」

HIDEKiSM「合ってるよ。あとはなんといってもピンヒールですね。11cm以上のピンヒールを履いてダンスパフォーマンスすることをモットーとしています」

Takassy「要するに、スキマ産業です」

Kamus「他にはないものをお見せしようっていうことよね」

──今回は「愛」をテーマにお話しを伺おうと思うのですが、3人がエンガブの活動を通して伝えたい「愛」とは?

Takassy「これは3人バラバラの答えになりそう。私たちはいつもそれぞれの考え方や主張を大切にしていて、グループとしてもひとつに絞らないんです。だからYouTubeのコンテンツでもお互いに全く共感し合わないで終わることもあって(笑)。まず私は、私たちからみなさんに愛を提供するというより、世の中にはこんな愛があるんだと気付くキッカケになればと思いながら曲を作っています。今、この記事を読んでくれている若い世代、特に10代の子はたくさん悩みを抱えているかもしれません。でも、大人になるともっと広い世界に出るから、今いるところ、例えば『学校だけ』が全てじゃないとわかるはず。私たちみたいな大人もたくさんいるので、私たちの姿を見て、人生はこれから始まるんだよと伝わったら嬉しいです」

HIDEKiSM「私は、年齢や性別の前にみんなが“ひとりの人”であり、お互いに敬意を持ちながら日々生活していけたら、世界はもっと平和になっていくんじゃないかなと思っているんですね。誰もが24時間、自分だけの人生を生きています。私以外の人は私がしてない経験をしていますよね。その時点で、他者に対して尊敬が生まれるし、その気持ちがあればもっと愛が広がっていくんじゃないかな。音楽には、年齢性別を問わず全ての人がひとつになれる場所を作る力があります。それが広がっていけば、優しい平和な世界に繋がっていく。その源が愛なんじゃないかなと思います」

Kamus「私は、愛と縁は近いものだと思っていて。例えば、道を歩いていて、全く知らない人が目の前で転んだら、助けてあげることもひとつの愛だと思うんですね。そこから縁が生まれて、回り回って最終的に自分を助けることになるかもしれない。だから、困ってる人にはできる限り声をかけるようにしているし、些細なことに気づけるように普段から心掛けています。みんながそう考えたら、もっと大きな縁が絡み合って柔らかい世界になるかもしれませんよね。でも、いろんな愛の持ち方があるし、そうは言ってもうまく行かないこともあるだろうから、ただ私はそういうふうに考えているって受け止めてもらえたらいいかなって思います」

──さて、今回のメジャー2ndフルアルバム『ENGABALL』はダンスがコンセプトだそうですが。

Takassy「ENVii GABRIELLAの作品は、これまでもダンスナンバーではあったんです。その中でも、私たちが好きなジャンルだったり、ステージで表現したい私たちの世界観を反映したものが多かったんですね。だけど、今回のアルバムは、とにかく踊りたくなるものにしようと『ダンスホール=ボール』をテーマに掲げました。ライブだけじゃなくて、お部屋でも聴きながら一緒に踊り狂ってくれたら嬉しいです」

アルバム『ENGABALL』を、古代ギリシャの“8つの愛”で分析!

──今回は人類の永遠のテーマである「愛」ついてのみなさんの考え方と、アルバム『ENGABALL』にはどんな「愛」が込められているのか、古代ギリシャの8つの愛にちなんでお話を伺えたらと思っています。まずは、無償の愛「アガペー」から。

(1)アガペー…無条件の愛 、自己犠牲の愛 

Takassy「これも3人とも全く違う答えになりそう。私は個人的に、『無償の愛』は存在しないと思っています。例えば、見知らぬ誰かを助けたら、その瞬間に相手から『私が助けてあげたという満足感』を受け取ります。そこには取引が存在するわけで、無償ではないと考えるタイプなんですね。大人が社会に出て色々経験をした上で、そう考えるようになったので、擦れてるというよりも悟りの境地です」

HIDEKiSM「人はひとりで生まれてひとりきりで死んでいくものね。無償の愛は親子ぐらいかなとも思ったんだけど、親子関係もいろいろだし。そう思うと、推し活ぐらい?」

Takassy「でも、推しからも対価をもらってるのよ。こちらがお金を払ってグッズを受け取っているし、ライブでは推しの姿を観る時間をいただいてるわけだから。私の人生は自分のためのものだから、誰かに何かを捧げるにしても、自分の得になったと捉えた方がヘルシーだと思うんです。それでも、誰かに何かをしてあげたいという気持ちがあるからこそ、成り立つ関係もあるし、それはそれでいいのかも」

Kamus「確かにそうは思うけれど、私は無償の愛はあると信じたい人なの。自分は傷付いてもいいから誰かに幸せになってほしいと思うこともあるし、自分をすり減らして何かをしたことに対して相手からお礼がなくても、まあいいかって思いたいなって」

Takassy「私の話は極論よ。でも、そのままのKamusでいてほしいわ」

HIDEKiSM「私も自分のことはどうでもいいから、この人のためだったら見返りがなくても何かしてあげたいわと思える人はおりますけどもね」

Kamus「とりあえず、柔らかい世界になってほしいわね」

(2)フィリア…友情・信頼に基づく愛

Takassy「1曲目『Love is Always Light of My Light』は、私の友達のことを考えながら書いた曲です。友情の歌ってエンガブにはあんまりないんですけど、今回は愛を歌う曲を作りたかったんです。聴く人によって、恋人や家族、大切な人に置き換えられるかもしれません。人に裏切られても失恋を繰り返しても、友達や家族、近くにいる人との大切な思い出があるから、また人を愛せる。愛された記憶があるから、人を求めることができるんだと思います」

HIDEKiSM「私は『友達が財産』といえるくらい、友達がたくさんいるんです。どこからどこまでが友達なのか、解釈は人それぞれだけど、私は一回会ったら“友達”、毎日会ったら“兄弟”、一緒にお酒を飲んだら“マブ(ダチ)”だと思ってるんですね。浅く広いだけかもしれないけど、Kamusみたいに、一度杯を交わした人が困っていて、それを助けてあげて絆を深めていったなんてことも過去にあったんです。東京は『出会い』と『お金』の街。それが必要なくなったら、東京にいる意味はないとさえ思っています。このフィリアという愛は私の中ではすごく大きな存在です。それが今の私を作って来たんだと思います」

Kamus「真逆の話になりますけど、私はそんなに友達は多くないんです。LINEには何百人も登録しているけれど、ぱっと連絡できる人は全身の指で足りるくらい。こういう仕事してるから、遊ぶ約束しても会えなくなっちゃうこともあるんですね。だから、今はそれでもいいからと連絡をくれたり、ふっと空いた時間に連絡を取り合って昔のように一緒にお酒を飲んでくれるような、お互いに許し合える関係を紡いでくれる友人は少なくてもいいかな。改めて大事な人たちだと改めてそう思います」

(3)ストルゲー…家族愛

Takassy「これも『Love is Always Light of My Light』かな」

Kamus「曲の雰囲気的には『(Life is Always Like a)Ball』もそうじゃない? 個人的に仲良くなった人は家族のように感じるし、いつも家族のような関係だと思って接するようにしてるんですね。ダンスホールで知り合って仲良くなって、また会って一緒に踊る、そんな曲です」

HIDEKiSM「人間が生まれて、初めて出会う大人は親。人間を形成する幼少期をともに過ごす家族は、人生で初めて味わう社会生活です。その成長過程を経て成人になり、社会へと旅立っていきます。その経験は良くも悪くもかけがえのないものであり、自分というものを形成した家族の存在は、たとえ敵だとしても味方だとしても、一生、絶対的な存在だと思います」

(4)プラグマ…実用的な愛

──これは相手をスペックで選んだり、恋愛が自分の目的達成の手段と考えたりする恋愛だそうです。

Takassy「それにぴったりなのは2曲あります。まずは『利害一致』。この曲は別に皮肉ともヤケクソというわけじゃなくて。年齢とともに感じるちょっとの焦燥感はみんなあるものだし、潔く孤独とか妥協とか認めちゃって自分に開き直った方が生きやすくなるかもなと思って書きました。フリーの友達、既婚者の友達、どのセクシャルの知り合いと話してても結果行き着くのってこの話題だったりするから、街に隠された本音というのがテーマです」

Kamus「『利害一致』はピッタリすぎて何も言うことがないです(笑)。とりあえずお酒でも飲みながら聴いてください」

Takassy「それともう1曲は『OL -Happy Ever After-』。時代背景的に、古い価値観で構築された御伽噺が再解釈されることはスタンダードになりつつあります。『アナと雪の女王』のように、プリンスを必要としないプリンセスもいますしね。個人的にはプリンスを森の仲間とフルボッコするシーンが大好きです! 社会的弱者と言われる立場の人間を守るふりして、自尊心を保とうとする奴らに一発お見舞いする感じで爽快です(笑)」

HIDEKiSM「この2曲はぴったりよね。居心地がいい、自分がありのままでいられる無理のない関係って、ただ『好き』という感情でつながっているだけじゃない。たくさん相手を想ってきて傷ついた経験があるからこそ、“都合の良い関係”が本当の居心地のよさだったりするのかもしれませんよ」

(5)フィラウティア…自己愛

Kamus「自己愛といえば『誕生誕生Birthday』かな。誕生日をきっかけに新しく何かを始めたり、新しい自分になるために色々考えたり。そういうのって結局、自分を愛すことにつながるかなって思います」

HIDEKiSM「エンガブは、自己愛を歌った楽曲が多いんですね。自分を大事にしたいから、相手も大事にする。誰かを愛することは、結果的に自分のためでもあると思うんですね。だから、私を大切にしてくれない相手ならいらない。私からの迫害になってしまう。自分を愛することは、私にとってもあなたにとっても健康的な話だと思います」

Takassy「そうね。エンガブの楽曲の根底にあるのは自己愛なんです。それは自分を愛することもそうだし、自分を律することもそう。私は自分を愛してるから、自分に甘くなりたくないかな。『誕生誕生Birthday』は誕生日という節目を迎えて明日からどう生きるか。『Raining Raining』は困難にぶつかった時に耐えしのぐだけじゃなくて、雨雲が過ぎ去った後の準備をしなさいと、人生を愛したいからこそのちょっとした厳しさを書きました。『HSP』は、私が人からよく『HSP』と言われるんです。自覚もあるし。自分のヒーリングのために作った曲です。それから、『Divalicious』は完全にセルフラブ讃歌です(笑)」

(6)マニア…狂おしい愛、執着

Takassy「『Unloved』は、まさに偏愛の歌。“嫉妬”という最大の偏愛を歌っています。自分を省みないで他人を妬んでばかりいる人。他人の努力は見ずに、自分だけが可哀想だと思ってる人。私の人生、なぜかそういう人によく出会うんです(笑)。それですごく傷つけられることも多くて。私が強そうに見えるからですかね。口も悪いしね(笑)。でも、毎日私に嫉妬して固執するって、それもう愛じゃん?とも思いますよね」

Kamus「『Unloved』って、ハマる人はハマっちゃう曲。私はダンサーだから、初めて曲を聴くときに歌詞より音や雰囲気を感じることが多いんですね。こういうロック系は、歌詞より音に没入して、その後、歌詞を見てさらに好きになることが多いんですけど、この曲も何度も何度もリピートして聴いていました」

HIDEKiSM「バカと天才は紙一重と言いますよね。音楽、映像、ダンス、スポーツ、アニメ、ファッション、コスメ…、あるいは人に対しても。何かに対してバカになれる人は人生に彩りがあると思います。人生バカであれ! いくら周りに後ろ指刺されても! 偏った愛はあなたにしかわかりえない充実と幸せがあると思います」

(7)ルダス…遊びの愛

──次は、恋の駆け引きですが。

Takassy「今回は、これに該当する曲はないかもしれませんね」

(8)エロス…情熱的・性愛的な愛

──最後にエロスについてですが。

Takassy「今回はセクシャルな歌詞の曲はあえて入れていないんです。いつもはあまり気にしていないんですが、今回のテーマはダンスなので、老若男女にストレスなく楽しんでもらいたいから。最近、親子でエンガブを楽しんでくださる方も増えているので、今回は親が子どもに説明できないような言葉は使いませんでした」

Kamus「パフォーマンスとしては、『Divalicious』が、セクシーというより、生っぽい質感になるかもしれないと想像しています。この曲は、背景にLGBTQ+カルチャーが育んできたアンダーグラウンドの世界観があるので、それを表現するにあたって、エロスの要素も入ってくるかもしれない」

Takassy「いつもアルバム制作では、ひとつのジャンルを深堀りするんですけど、今回は特にLGBTQ+カルチャーにリスペクトを込めた作品を収録しました。Kamusが言ったように、アンダーグラウンドの歴史にはエロスの要素は必須なので、エロスの香りがするステージングになるかもしれません。ライブを楽しみにしていてください」

──ちなみに、皆さんが「エロス」に関して大切にしていることはありますか。

Takassy「私がセックスに関して大事にしてるのは、没入すること。愛があっても、その時間を思いっきり楽しめないとムダなことをしたなと思っちゃう。行為にのめり込んで相手を気持ちよくさせてあげたいし、自分もそうありたい。セックスの瞬間は、相手を世界で一番愛おしい物体だと思い込んでいます。終わった後に、いい汗かいたなーと思いたいから」

Kamus「それも然りなんだけど、私はエロスに発展するまでの過程もエロスでないといけないと思っていて。セックスに至るまでに、お互い最高潮に盛り上がっていたら、より良いセックスになると思うんです。個人的には服を着ている人にはエロスを感じるけど、全裸には何も感じない。だから、全裸に至るまでの過程っていうものがとても大事だなと思っています」

HIDEKiSM「エロスに関しては、私なんて存在自体がもうエロスみたいなものですけどね! 意図してなくても滲み出ちゃうというか」

Takassy「突然どうしたんだろうか」

一同「(笑)」

ENVii GABRIELLA メジャー2ndフルアルバム『ENGABALL』
通常盤(CD+Blu-ray)¥4,950
KING e-SHOP限定豪華盤(CD+BLu-ray+サコッシュ+キーチャーム)¥13,200

ENVii GABRIELLA LIVE TOUR 2025 ENGABALL
6月7日(土)@札幌Zepp Sapporo 17:00開場/18:00開演
6月15日(日)@福岡Zepp Fukuoka 16:00開場/17:00開演
6月28日(土)@大阪Zepp Namba 17:00開場/18:00開演
6月29日(日)@名古屋Zepp Nagoya 16:00開場/17:00開演
7月6日(日)@東京Zepp DiverCity 16:00開場/17:00開演

URL/https://engab.jp/
Instagram/@enviigabriella
YouTube/@ENViiGABRIELLA

ENVii GABRIELLAの直筆サイン入りチェキを
3名様にプレゼント

Photos: kisimari Interview & Text: Miho Matsuda Edit: Yukiko Shinto

Profile

ENVii GABLIELLA エンヴィ・ガブリエラ それぞれ違うフィールドで活躍していたTakassy(タカシ)、HIDEKiSM(ヒデキズム)、Kamus(カミュ)の3人で、2018年3月よりユニット活動を開始。“動画で楽しむ新宿二丁目”をコンセプトに、同年よりスタートさせたYouTubeチャンネル「スナックENVii GABRIELLA」が話題を呼び、24年4月現在、登録者数は20万人を越える。メインの音楽活動では、圧倒的なヴォーカル、トレードマークである11cm以上のピンヒールを着用しての息の合ったダンスパフォーマンスも話題に。

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JULY & AUGUST 2025 N°188

2025.5.28 発売

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