MEGUMIインタビュー「困難を超えるたびに、自信がつき、見える景色が変わっていく」
俳優、タレントとしての活動にとどまらず、プロデューサー、そして国際交流イベント「JAPAN NIGHT」のファウンダーとして活動するMEGUMI。「JAPAN NIGHT」は昨年の開催で大きな反響を呼び、その流れを受けて2025年も第78回カンヌ国際映画祭の会期中に同イベントを開催するという。エネルギッシュに活動の幅を広げている彼女に、「JAPAN NIGHT」にかける想いと、さらには仕事とプライベートのONとOFFをどのように切り替えているのかを聞いた。

海外には日本に興味を持つ人がたくさんいる
──第2回目の開催となる「JAPAN NIGHT」ですが、今回はどのようにパワーアップしているのですか。
「カンヌ映画祭期間中に、5つ星ホテルの『ホテル マルチネス カンヌ』で、映画関係者をはじめ、メディア、文化、政治・経済分野のリーダーたちを招いたクローズドな国際交流イベントを開催します。パリの一つ星レストラン『パージュ』の日本人シェフ、日本のソムリエ、盆栽アーティストに現地までお越しいただき、日本の食文化を味わう交流会を開催予定です。翌日は、映画関係者によるトークセッションを実施します。
ヨーロッパの方々は、往年の日本映画に強い関心を持っている方が多いんです。黒澤明監督や今村昌平監督が手がけた作品はいまなお高い人気があります。最近の日本映画にも、もっと過去の作品へのオマージュや、当時のエッセンスを取り入れた方がよいという声をよくいただきます。私たち日本人が気づいていないことも多く、そうした視点を知るためにも、さまざまな意見交換の機会を設けています」
──特にMEGUMIさんが特に力を入れていることは?
「すべてですね。JAPAN NIGHT自体がまだ2回目の開催なので、不安に思うこともありますが、楽しみでもあります。イベントを通して、海外の方と日本の方がコネクトして新たなコラボレーションが生まれる可能性がある。例えば、国境を越えた合作の企画が立ち上がったり、新しい配給先が決まったり、飲食のビジネスが始まるかもしれない。そういう国際的なチャンスが生まれる場を、私たちがつくっているという意識でいます。だからこそ、全体から細部に至るまで神経を研ぎ澄ませて取り組みたいと思っています」
──イベントの企画は、どれくらいの時間を費やしているのでしょう。
「今回の構成は、1年くらいかけてじっくり考えました。去年の反省点を振り返り、次回に向けて自分で調べて勉強していくなかで新しい出会いがあったり、アイデアが閃くこともありますね」
──前回の手応えはいかがでしたか?
「第1回目は1日限りで、我々は300人ぐらいの規模で想定していましたが、結果的には1,000人以上の方が来場。8割が海外の方でした。大きな宣伝はしておらず、映画関係者へ直接メールでご案内しただけだったのですが、自然と口コミで広がったように思います。会場前で『JAPAN NIGHTのチケット譲ってください』と求めてくださる人がいたりして。日本というだけで興味を持ってくださる方が本当に多いので、驚きました。ちょっと誇らしさも感じたくらい。
新進の映像プロデューサーや映画監督、国内外で活躍する俳優がスピーチをしたり、日本の映画監督たちによるプレゼンテーションも行われます。それがきっかけで中東の方が出資を決めて協業しようという話につながったと聞いてます。実は今年はイタリアのウディネでもJAPAN NIGHTを開催するのですが、それも現地からの逆オファーで『ぜひ来てほしい』とご連絡をいただいたんです。ヴェネチアからも、同じようなお話をいただいていています」
人生を謳歌する人々に刺激を受ける。バルセロナでの生活
──そんな多忙の中、スペイン・バルセロナにも生活拠点を設けられました。
「東京とバルセロナで生活しています。一昨年ぐらいに仕事で疲れきってしまい、友人とピラティスの先生に『バルセロナは元気をもらえる場所』『女性に優しい国だから行ったほうがいい』と言われて。2人に言われたら行くべきだなと思い、実際行ってみたらいいエネルギーを感じて『私はまだやっていけるかもしれない』と思えたんですね。スペインの大人の女性たちは本当にいきいきしているし、天気もずっと晴れであたたかくて、自律神経にいい気候なんです。建築が好きだから、紀元前からある建築物が見られるのもいいし、食事もとってもおいしい。そんな理由から通うようになり、住むことにしました。正直、日本だとずっと全力で働き続けてしまうタイプなのであっちへ行って少し立ち止まらないと、40歳も過ぎて、心身ともに危ないという気持ちもある。日本だと忙しすぎて考える時間がないんです。次にワクワクする新しいことを考える余裕を持つためにも、思い切って2拠点生活を始めました」
──2拠点生活してみて効果てきめんという感じでしょうか?
「遠いなと思いつつも、バルセロナでフレッシュオレンジジュースを飲みながら散歩しているだけで幸せな気持ちになるんですよね。東京だとそんな余裕ないじゃないですか。バルセロナの大人たちはみんな50、60歳で堂々と恋愛していて。本当に人生を謳歌してる。私がその歳になったとき、そんな世界が広がっていたらいいなと思うんです。素敵な大人のお手本を間近でみることができ、刺激をもらえるのが最高ですね」
──海外から日本を見つめて気づいたことはありますか。
「改めて、日本の文化が素敵だと思いますね。食彩がこんなにも細やかで美しく、人々のホスピタリティも行き届いている。豊かな四季があるから、旬の物を一番いい状態で調理してお客様に出すというのは、日本ならでは。個人的には美容も、日本が世界で一番だと思っています。もちろん、お隣の国の韓国の技術もすごいけれど、高い技術や美容機器だけでなく、香りや施術後のお茶まで含めて、日本ならではの気遣いがあって、やっぱり心地いいんですよね」
美容は仕事のようにスケジュール管理
──ONとOFFをどのように切り替えているか教えてください。
「美容に関しては、仕事のようにスケジュールに入れています。この時間にヘッドスパを入れて、ここで散歩、ここでマッサージに行くというように。仕事がタイトで疲れそうだと思ったら、先回りしてケアの予定を入れています。ホームケアは、ひたすらシンプル。絶対にメイクを落として寝るし、保湿パックもコツコツとやっています。お仕事に関しては、スケジュール管理に時間とすごくエネルギーを注いでいます。一日10タスクくらいこなすので、スケジュール表に予定がばばばばっと並んでいてすごいことになっています(笑)。タスクは後回しにするとどんどん溜まっていっちゃう。プロジェクトが多すぎて全速力で走ってるからこそ、たまにスペインへ行かないと頭がいっぱいになっちゃうんです」
──エネルギッシュな活動の原動力はどこにあるんですか?
「自分より年上の方々とお話しすると、やらなかったことを後悔してる人がとても多いと感じたんです。10年くらい前に『死ぬときに絶対に後悔したくない』と思い、『面倒なことや怖いことも全部やる』と決めたんですよね。40歳を過ぎたくらいから、みんな落ち着いてきて『コロナが落ち着いたらやろうね』とか『また今度ね』とかやりたいことを後回しにしていると、やらなかったことだけが増えていくと思ったんです。私が憧れている建築家の安藤忠雄さんや写真家の操上和美さんは、年齢関係なくバキバキに仕事してるわけですよ。たとえば、朝6時半に起きて、6時33分には外に出て、1時間歩いたらそのまま海外との仕事を始める。今も変わらず、そうしたスタイルを続けていらっしゃいます。そんなレジェンドたちにパワーをいただいてる感じです」
──目標や達成したいゴールは何ですか?
「JAPAN NIGHTを成功させたいですね。自分がやりたいという気持ちよりも、いろんな人が与えてくださった縁であり、自分に与えられた役割だと思っています。これまでの経験がつながって巡ってきたチャンスでもあるので、ちゃんと役目を果たしたいなと思っています。JAPAN NIGHTの場では、実際に映画の深い話を伺うことができたり、ヨーロッパなど海外で活躍してる日本のプロデューサーにいろんな教えをいただいたり、学ぶことだらけなんです。私自身も映像のプロデュースに関わっているので、ゆくゆくは国内&海外の映画祭にノミネートされ、受賞されるような作品を生み出したい。そして、世界中の人たちに、日本の文化や私自身が日本で得た“普遍的な想い”を伝えていけたらと思います。そんな作品を生涯つくり続けることができたら、こんなに幸せなことないだろうと思う。これからも、挑戦を続けていきたいですね」
待つ窮屈から解放されるために、自ら挑戦することにした
──俳優業をされているMEGUMIさんが、プロデューサー業も手がけるようになって、お仕事に対する感覚に変化はありましたか?
「ありましたね。10年前に壁にぶつかったときやパンデミックが起きたタイミングに『タレントや俳優業は待つことが仕事』と言われたのが本当に苦しかったんです。それに、自分が売れていないと誰も話を聞いてくれない。SNSがここまで普及した時代でみんなが自由に発信し、YouTuberの方たちが自らの表現で活躍の場を広げている中で、『なんで私たちはいつまでも待ってるの? 』と。能動的な性格だからその感覚が合わなくて『この窮屈さから早く解き放たれたい』と思い、自らプロデュース業をやろうと決めました」
──自分で仕事を作っていくなかで、心が折れそうになることはありますか。
「ありますよ。誰もやっていないことに挑戦すると、自分の中でも不安や迷いが生まれたり、周囲の反応に戸惑ったりすることもあります。ただ、近しい人たちはちゃんと理解してくれてるし、自分がいいと思ってやっていることなので、そこで諦めてしまったら、きっとこの“ぐちゃぐちゃした気持ち”を抱えたままになってしまうと思うんです。でも逆に、これをうまく乗り越えたら、ひとつひとつ自信が積み重なって、新しい景色が見えるはず。今まで生きてきて、何かを達成する前はいつも大きな壁が現れるというのは、何度も経験してきました。私の場合は、ですけど」
──日本に対して、「もっとこうなったらいいのに」 と思うことは?
「例えば海外の映画祭を目指して努力されている方が増えてきていて、その動きがこれからさらに加速していったら、日本の映画界にとっても大きな希望になると感じています。もちろん大変な挑戦だから、実際に現地へ行ってみて、業界で関係性を作って、と時間かけるって、本当にエネルギーがいることなんです。韓国では、国をあげて映画文化を盛り上げているのがとても印象的で、そうした姿勢にも刺激を受けています。日本でも、挑戦していく人がこれからもっと増えていったら嬉しいですね」
自分で自分の感情の手綱を引く
──オフのときはどのように休んでいるのでしょう。
「料理をすると休まるんです。仕事が早く終わって帰宅したら、家で丁寧に料理します。凝ったものじゃなくて、最近は本鰹節を一本削って、お味噌汁を作る。風味が全く違うんですよね。ほんの数十分の話なのに、丁寧に料理して食事をするとすごく幸福度が上がる。あとはお休みができたら、スペインへ行ってお散歩してちょっとお酒飲んで、またちょっと歩いて。この建物可愛いな〜、とか考えながら、思いの向くままに歩いたりしますね。普段はスケジュールをがっちり決めて動いているので。睡眠も大事。寝たいときは寝るし、それだけで本当にリフレッシュできますよね」
──スペインでも料理とかされたりするんですか。
「します。やっぱり素材がいいんですよね。オリーブオイルと塩で海老をグリル焼きにしたのは、すごくおいしかったですね。現地に住んでいる日本人の方たちに日本食を振る舞うホームパーティーもしました。誕生日会とか飲み会、パーティを主催するのが大好き。日本でも友人たちと楽しんでいますよ」
──MEGUMIさんはいつ見ても、誰に対してもフラットで、心が落ち着いてるように見えます。何か意識していることはありますか?
「確かに、あまり怒らないですね。昔はもっと感情的でしたが、年齢を重ねたこともあり、だからこそ、自分で自分の感情の手綱を引かなきゃいけないなと思っていますよ。映像を作っていると、本当にいろんな問題が起こるんです。毎日なんでこんなにトラブルが起きるのよ、って感じなので、少し麻痺しているのもあるかもしれない。あとは運動をしたり、おいしいものを友達と食べたりすると、次の日にはだいたい忘れるので(笑)。ずっと嫌な気持ちのままでいるとクセになるし、ネガティブな感情のループのままでは何も変わらない。身体も重くなっちゃうし。場合によっては、臨床診療師やメンタルケアの人に相談したりもします。話すと楽になるからオンライン診療で頼ることもあります。プロに相談すると、ちゃんと心の問題が解決されるのがすごいと思っています」
──今、気になっていることや楽しみにしていることがあれば教えてください。
「アジアの歌姫たちが気になっています。ちゃんみなさんがプロデュースしたグループのHANAは、あんなに自信のなさそうだった女の子たちが、変化を遂げてデビューしたのはすごいと思いますね。音楽フェスティバルのコーチェラではXGがトリを務めたり、BLACKPINKのジェニの活躍にも目が離せないです。アジア発の女戦士みたいな人たちが世の中を席巻してる姿を見て、すごくパワーをもらいます。彼女たちがバーンとかっこいい姿を見せてくれると元気をもらえる。自信を取り戻せるというか。すごいエネルギーをいただいていますね」
Photos:Kisimari Hair & Makeup:Masanori Enomoto Styling:Kumi Saito Interview & Text:Aika Kawada Edit:Mariko Kimbara
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